スニーカー通勤の姿が野暮ったくなっていませんか?(写真: jessie/ PIXTA)

ビジネスシューズの選択肢としてスニーカーが定着してきたのに伴い、残念な着こなしも増えています。なかでも、軽装でスニーカー通勤をしたときに野暮ったくなる人が少なくありません。

スーツジャケットを脱いだだけのワイシャツ姿が「手抜きビズ」と言われるように、ジャケットに馴染んでいた通勤用スニーカーが、「ワイシャツ姿になった途端、違和感がある」という経験はありませんか。

そこで今回は「夏のスニーカー通勤における最適解」について、のべ5134人のビジネスマンの買い物に同行してきた服のコンサルタントがお伝えします。

残念なスニーカー通勤姿が、夏に増える理由

着用アイテムが絞られる軽装では、他アイテム以上に「ドレス感」について考えたいところ。カジュアルを出自とするスニーカーは、ビジネスアイテムとの相性がよいとは言えないことが背景にあります。

ドレス感とは、フォーマル度合いを表すファッション用語として、雑誌などでよく見かける言葉です。たとえばジャケットの着こなしは、ノージャケットに比べて「ドレス感が高い」と言えます。だからこそ足元をスニーカーで崩したとしても、ビジネスシーンに耐えうるフォーマル具合を維持しやすいのです。

ところがノージャケットの場合、全身のドレス感が低下しているため、スニーカー合わせでは「カジュアル味が強い」のです。つまり残念なスニーカー通勤姿は、軽装によるドレス感の低下を見逃したときに起きています。

実際のところ、ポロシャツにチノパンといった夏のオフィスカジュアルのスニーカー合わせでは、もはや私服と代わり映えしません。そこで軽装のスニーカー通勤こそ、2つのアプローチを検討してみます。

「ドレス感あるスニーカー」「通勤スニーカーに合うサマーパンツ」です。

「彩度」と「質感」を吟味した通勤用スニーカー

そもそもビジネスファッションの配色は、紺・黒・グレーを基調とした低彩度色や無彩色が中心ですから、彩りが強いスニーカーは悪目立ちしやすいもの。とはいえ彩度という基準は、一般的に馴染みがある指標ではないため、スニーカーの色選びを間違えてしまう方もいます。

そこで通勤用スニーカーの配色を考えるときは、「カジュアルフレンチのレストランに履いていけるか」という視点に立ってみてください。スマートカジュアルというドレスコードに対応可能なスニーカーは、ビジネスシーンのドレス感に耐えうるため、結果的に白・黒・グレーが混ざった低彩度のスニーカーに行き着くはずです。


ドレス感ある質感の通勤用スニーカー(写真:筆者撮影)

また質感について、メッシュ素材のランニング系スニーカーは、カジュアル味が強いです。昨今のブームにより、トレーニングウェアに合わせることを想定したスポーティーなフォルムやメッシュ素材のスニーカーも増えています。ところが、この質感はドレス感が低下したノージャケット姿に合わせづらいのです。

軽装に合わせるビジネススニーカーの質感は、革靴同様スムースレザーのアッパーソールを選びましょう。

ここまで通勤用のスニーカーに目を向けてきましたが、たとえドレス感あるスニーカーを選んでいたとしても、合わせるビジネスパンツ次第では野暮ったく見えてしまいます。だからこそ「パンツの素材感」に目を向けたいのです。

結論から言えば、ドレス感ある通勤用スニーカーには、サマースラックスがよく合います。ノージャケットであっても、キチンとした印象に仕上がることは想像しやすいでしょう。このときサマースラックスといっても、天然繊維100%のみならず「アクティブスーツ」と呼ばれる機能素材もおすすめです。


スラックスとスニーカーの明るさを近づけた足元コーデ(写真:筆者撮影)

最近定着してきたアクティブスーツは、ストレッチや接触冷感など、機能がついた生地感のセットアップスーツですが、同生地のサマースラックスを紳士服量販店でよく見かけます。天然繊維のサマーウール生地に比べ、若干カジュアルに寄りますが、チノパンほどカジュアルではないため通勤用スニーカーに馴染むのです。

ちなみにスラックスとスニーカーの色選びについては、「明度」を意識してみてください。たとえば、スラックスとスニーカーのトーンを合わせるだけで、足元のラインにつながりが生まれます。白色のスニーカーソールならば、そのスッキリ感にくわえ、爽やかな印象です。

スニーカーに合わせた「丈感」を意識しよう

スニーカー通勤のドレス感を高める方法を紹介してきましたが、それでも野暮ったく見えることがあります。それはスラックスの丈感で失敗したときに生じるもの。スニーカーは革靴以上にボリューミーなので、「最適なスラックスの丈感が変わる」ことを見落としたとき、パンツのあまった弛みが、野暮ったく見えるのです。

この状況を避けるため、紳士服量販店によっては、ワンタッチでパンツ丈を調整できるスナップボタン付きスラックスまで販売しています。スニーカーに合うビジネスパンツの丈は、「生地が完全に覆いかぶさらず、少し触れる程度」と覚えてください。

スニーカー以上、革靴未満のビジネスシューズ


スニーカー以上、革靴未満のビジネスシューズ(写真:筆者撮影)

スニーカー通勤の浸透を狙うため、スポーツ庁が実施した「FUN+WALK PROJECT」からおよそ5年が経ちました。通勤用スニーカーのデザインも徐々に変化しています。なかでも「スニーカーの履き心地」と「革靴ライクな見た目」を両立したものが増えていたのです。

この手のビジネスシューズは、これまで野暮ったいと思われてきたウォーキングシューズと呼ばれるカテゴリーに位置していましたが、スニーカー通勤の浸透によって、スタイリッシュな木型のものが増えています。

今後スニーカーのデザインは、休日用と通勤用で、これまで以上に別物に変わっていくことでしょう。だからこそオン・オフ兼用という発想自体が難しくなるはず。「スニーカー」という従来のデザインを鵜吞みにせず、ドレス感を意識した通勤用スニーカーで、全身のバランスを整えてみてください。

(森井 良行 : ビジネスマンのためのスタイリスト)