恒大汽車の初の市販モデル「恒馳5」は、売れ行きが目標を大きく下回っている(写真は同社ウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカー、恒大汽車(正式社名は恒大新能源汽車集団)の上場株式の取引が、7月28日、香港証券取引所で16カ月ぶりに再開された。同社は深刻な経営危機に陥っている不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の上場子会社で、2022年3月から同取引所での取引が停止されていた。

取引再開当日の同社株の終値は1.24香港ドル(約22円25銭)、時価総額は約134億5000万香港ドル(約2414億円)となった。恒大汽車の時価総額は2021年2月のピーク時には7800億香港ドル(約13兆9979億円)を超えており、その約98%が“蒸発”した勘定だ。

修正済み決算報告書を提出

親会社の恒大集団やグループ内の他の上場子会社は、現時点でもまだ取引停止が続いている。恒大汽車は、グループ内で取引再開にこぎ着けた最初の銘柄となった。

香港証券取引所のガイドラインによれば、恒大汽車が株式の取引を再開するには3つの条件があった。第1に、会計処理上の問題点をすべて修正した決算報告書を提出すること。第2に、会社の事業継続能力や相応の価値がある資産の保有を証明すること。第3に、株主や投資家が企業価値を評価できるよう、すべての重要情報を開示することだ。

恒大汽車はこれらの3条件を満たしたと主張し、提出を延期していた2021年通期、2022年中間期、2022年通期の修正決算報告書を(取引再開の2日前の)7月26日に開示していた。

修正後の決算報告書によれば、恒大汽車が2017年に自動車事業に参入して以降の累計損失は989億元(約1兆9344億円)に上る。

2022年末時点の同社の総負債は1838億7200万元(約3兆5964億円)、同時点の総資産は1152億2100万元(約2兆2536億円)であり、すでに債務超過に陥っている。


恒大汽車の工場は、資金ショートで操業継続が危ぶまれている(写真は同社ウェブサイトより)

それだけではない。恒大汽車の監査法人は、修正後の決算報告書に対して内容の適正性を証明できない「意見不表明」の判断を示した。このことは、同社の財務の実態が依然として不透明であることを示唆している。

資金調達計画は「絵に描いた餅」

今後の事業継続能力について恒大汽車は、「わが社は現在も450人以上の研究開発エンジニアを雇用し、天津市に年間生産能力5万台の工場を保有している。したがって、わが社は自動車事業を継続できる条件を備えている」と説明する。


本記事は「財新」の提供記事です

さらに同社は、増資と借り入れを通じて約5億ドル(約700億円)を調達し、恒大汽車の初の市販モデル「恒馳(ヘンチー)5」の生産・販売と会社の運転資金に充てることを計画。それにより、EV生産のための資金繰りや従業員の賃金未払いなどの問題の軽減を目指している。

だが、資金調達を実現できる見通しは立っておらず、計画は「絵に描いた餅」に終わるかもしれない。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は7月28日

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