日本語環境で導入されたiOS 17の新機能の1つである手書き入力(筆者撮影)

一足先に、最新のOSを試すことができるのが「パブリックベータ版」だ。アップルは、最新OSの正式版配信に先立ち、ベータ版を展開。ユーザーやディベロッパーにテストやバグのレポートをしてもらうことで、品質を向上させている。パブリックベータ版は、広く一般に公開するバージョン。例年、新型iPhoneの発売に前後して配信が始まるiOSにも用意されている。7月13日には、「iOS 17 Public Beta」へのアップデートが可能になった。

パブリックベータ版で“少し先のiOS”を体験

これまでのパブリックベータ版は、適用するためにアップルのサイトで登録の手続きが必要で、端末にも構成プロファイルをインストールしなければならなかったが、現行バージョンのiOS 16では、その方法が簡略化されている。端末の設定メニューでパブリックベータを適用できるようにするだけで、すぐにダウンロードを始めることが可能になった。

ただし、あくまでベータ版のため、バグなども残っている。バックアップが必須なのはもちろんだが、業務に利用しているiPhoneなどにはインストールしないほうがいいだろう。

一方で、パブリックベータ版を使えば、“少し先のiOS”を体験することが可能だ。いち早く新機能を使ってみたい人には、いい機能だ。実際に利用してみることで、アップルが大々的にアピールしていた機能だけでなく、さまざまな改善が施されることも見えてくる。ここでは、そんな知られざるiOS 17の新機能をピックアップしていきたい。

グローバルで内容を統一していることもあり、アップルがiOSの新機能を紹介する際には、ローカルな機能が省略されがちだ。世界的に見て、比較的市場規模の大きい日本も例外ではない。iOS 17に採用されている「手書き入力」も、その1つといえるだろう。この新機能によって、ひらがなだけでなく、カタカナや漢字も変換を介さず、直接手書きで入力できるようになる。

手書き入力は、キーボードの1つとして扱われている。そのため、利用するにはキーボードの追加が必要になる。設定方法は次のとおり。まず、「設定」アプリを開き、「一般」を選択。次の画面では、「キーボード」をタップする。表示された画面でも、再び「キーボード」をタップ。「新しいキーボードを追加」をタップすると、「推奨キーボード」に「日本語」と「英語(日本)」が表示されているはずだ。

キーボード以上に直感的な手書き入力

ここで「日本語」を選ぶと、「ローマ字入力」と「手書き」を選択することができるので、「手書き」をタップする。これで、手書きキーボードがキーボード一覧に加わった。文字入力時に呼び出す際には、キーボード上の地球のキーをタップする。QWERTYキーや絵文字キーボードなどを設定したことがある人には、それと同じ手順と言えばわかりやすいだろう。


キーボードの1つとして、手書きを追加することが可能。いざというときにも便利な入力方法だ(筆者撮影)

手書きキーボードはスペースキーの上部が空白になっている。ここに文字を書き込んでいく。線を1本書いただけで候補が追加され、別の線を加えていくと、その候補がさらに絞り込まれていく。フリック入力などと同じく、予測変換が使えるというわけだ。そのため、手書きといっても、文字を丸々書く必要はない。入力したい候補が表示されたら、それをタップすればいいというわけだ。

手書き入力はキーボード以上に直感的なため、iPhoneなどのスマホに慣れていない親世代のユーザーにお勧めしやすい。また、読み方がわからない難しい漢字を入力したいときにも、役立つ入力方法といえるだろう。普段はキーボード入力をする人も、いざというときに活躍する入力として設定しておくことをお勧めしたい。

スマホとしてeSIMをいち早く採用し、2つの回線で同時に待ち受けるデュアルSIMを採用しているiPhoneだが、iOS 17では、回線の使い分けがこれまでよりしやすくなる。1つ目が、回線ごとに着信音を設定できる機能。これまでは、どちらの電話番号にかかってきても同じ音しか鳴らせず、瞬時に判断するのが難しかった。iOS 17では、その鳴らし分けが可能になる。

1回線につき、1つの着信音を設定できる

設定方法は、以下のとおりだ。デュアルSIMにした状態のiPhoneで、「設定」アプリを開き、「サウンドと触覚」を選択する。ここまでは、これまでの着信音設定と変わらない。この画面で「着信音」をタップすると、回線の選択画面が現れる。1回線につき、1つの着信音を設定できるというわけだ。音で違いがわかるため、文字などを見るより直感的。どちらの回線にも電話がかかってくる人は、ぜひ着信音を分けておきたい。


回線ごとに、着信音を鳴らし分けられるようになった(筆者撮影)

ただし、設定できるのはあくまで電話の着信音のみ。電話番号を使ったコミュニケーション手段には、SMSやMMSもあるが、「メッセージ」には、iOS 16までと同様、1つの通知音しか設定できない。「新着留守番電話」も、現行バージョンのパブリックベータ版では、電話のように、回線ごとの鳴らし分けはできないようだ。

iPhone同士であればiMessageになるため、電話番号で分ける必要性は薄い一方で、Androidスマホやサービスのログイン時に認証のために送られてくるのはSMS。やはり、メッセージも回線ごとに通知音を鳴らし分けられたほうがいい。製品版でどのような仕様になるのか次第だが、今後の改善に期待したいところだ。

また、電話アプリでも、デュアルSIMの使い分けが容易になる。iOS 16までは、発着信履歴にどちらの回線からかかってきたかが表示されていなかったが、iOS 17では1件1件の履歴にそれが記載されている。電話番号ごとに、どちらの回線で発信するかを設定できるのも便利だ。設定には「前回使用」もあり、これを選んでおくと、1つ前に使った電話番号でそのまま発信できる。

電話だけでなく、SMS/MMSの発信にもこの設定が適用される。間違えて普段使っていない回線で電話をかけてしまったり、メッセージを送ってしまったりすることがないよう、相手ごとに回線を固定できるのはうれしい改善。SIMカードとeSIMや、eSIMを2回線入れ、デュアルSIM端末としてiPhoneを使っている人にとって、iOS 17は待ち遠しいアップデートになりそうだ。

iOS 17では、ネット閲覧のための基本ともいえるSafariにも、さまざまなアップデートが加わっている。例えば、アクセス履歴やCookieの管理などをシチュエーションごとに分ける「プロファイル」は、その1つだ。これによって、仕事とプライベートのブラウジングで利用する情報を、分離させることができる。また、タブをグループ化できる「タブグループ」のデザインも変わり、切り替えがしやすくなった。

プライバシー機能として見逃せないのが、「プライベートブラウズ」のロック機能だ。プライベートブラウズとは、追跡を防止した状態でサイトにアクセスするための機能。閲覧したページの情報や検索履歴、自動入力した情報などをブラウザ内に残さず利用できる。例えば、X(旧Twitter)をログアウトしたまま表示したいときなどに、プライベートブラウズでアクセスするといった使い方が可能。趣味で見ているサイトなどの痕跡を残したくないときにも活躍する。

ただ、これまでのプライベートブラウズは、タブを切り替えるだけで開くことができた。友達にサイトを見せるため、一時的にiPhoneを渡しているようなときに、ふとした拍子でモードが切り替わり、プライベートブラウズでチェックしていたサイトが表示されてしまうといった心配があった。ブラウザ内に履歴は残らないものの、起動中のタブまではガードしてくれなかったというわけだ。

Face IDやTouch IDで保護


プライベートブラウズそのものをロックすることができる。Face IDで簡単に解除できるため、利便性も損なわれない(筆者撮影)

iOS 17では、このプライベートブラウズを、Face IDやTouch IDで保護することができる。この設定は標準で有効になっているため、上記のように、友達や家族にiPhoneで表示しているサイトを見せるようなシーンでも安心だ。Safariを起動した際には、画面を直視していることが多いため、Face IDならほぼ自動的にロックが外れる。これによって、使い勝手が落ちてしまう心配もない。

一方で、人にiPhoneを渡して使わせるケースがなく、ロックは不要というのであれば、設定でこれを解除することも可能だ。「設定」アプリで「Safari」を開き、「プライベートブラウズをロック解除するにはFace IDが必要」をオフにすればいい。iOS 17には、アップル自身が紹介しているものや、ここで挙げたもの以外にも、さまざまな新機能が採用されている。それをいち早くチェックしたい人は、バックアップを取ったうえで、パブリックベータ版を試してみよう。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)