快適な乗り心地と運転支援、荷室の多用途性 究極のファミリー向けミニバン、日産・新型「セレナ」

写真拡大 (全12枚)

日産自動車が内容の濃いミニバン、新型「セレナ」を、2023年4月20日に発売しました。

燃費と走行に優れるe-POWERや、ハンズオフ運転支援システム“プロパイロット2.0”搭載モデルも設定され、なんかもう、究極のファミリー向けミニバンというかんじです。

乗ってみての印象も、先代よりかなり洗練されました。乗り心地の快適性、静粛性などが向上するとともに、操縦性もあがり、「ドライバーも楽しめるクルマ」(開発者)というコンセプトに納得です。

 

■驚くほど静かになったe-POWERのエンジン音

▲バンパーサイドのエアスクープは直進安定性に寄与という

▲大きなテールゲートは、ガラス部分だけを開くことも可能な2ウェイ方式

私が乗ったのは、もっともボリュウムゾーンという「ハイウェイスターV」と、装備豊富な新設定の「LUXION(ルキシオン)」。ともに、シリーズハイブリッド「e-POWER」搭載モデルです。

e-POWERは、日産が手がけるシリーズハイブリッドシステムの呼称。エンジン搭載ですが、あくまでモーター駆動用のバッテリーへの充電のためだけに使われます。

なのでe-POWER車では駆動はモーター。今回、価格的なこともあるのでしょうか、2リッターガソリンエンジン車も用意されましたが、日産の推しはe-POWER。

従来の1.2リッターに代わり、今回は新開発の1.4リッターエンジンが使われます。さきにデビューした原稿X-TRAILのe-POWERと同様の「VCターボ」エンジンが当初期待されましたが、セレナは、圧縮比可変のVCターボでなく従来ながらのエンジン搭載です。

▲アグレッシブさを抑えて広い層へのアピールを狙ったフロントマスク(写真=日産自動車)

▲側面からみるとけっこうスポーティ

なーんだ、と言うのは、しかしながら、ちょっと早い。私も乗るまではそう思ってましたが、実際は、日産の開発者が説明してくれたとおり、静かでかつ力不足を感じさせません。

e-POWERでどういうときにエンジンが回るかというと、高速道路をえんえんと走っていくようなとき。駆動用バッテリーを使いきると、エンジンが始動して充電を始めます。

そのときのエンジン音が、従来は(はっきりいって)かなり耳につくものでした。もっとはっきりいうと、がさつでうるさい。新型セレナでは、驚くほど静かになっています。

聞けば、シャシーは基本的に従来のものを使いつつ、足まわりやステアリングシステムなどにも大きく手を入れたとのこと。結果、クルマの動きは終始フラットです。

▲多機能なモニターを備えたハイウェイスターVのコクピット(ドアポケットも大きくティッシュを収納可能)

■このクルマの真価は後部座席にあり

▲ハイウェイスターV(8人乗り)の2列めシートは3人がけ

「ファミリーユースが多いので、クルマ酔いを防ぐのも重要と、研究を重ね、アクセルオンやブレーキのときも乗員の頭が動かないように、徹底的にチューニングしました」

セレナなどのセグメントの車両を担当する日産自動車の安徳光郎常務執行役員は、試乗会場で、そう説明してくれました。

なので、安徳氏は「このクルマなら後部座席で真価を味わっていただきたいと思います」と付け加えた。

1列目も広々感があるし、視界はいいし、モノ入れも豊富だしとよく考えられていますが、2列目以降はまた新しいアイディアを採用しています。

たとえば、上記ルキシオン以外は2列め3人がけの8人乗り。この2列めシートでは「マルチセンターシート」がリデザインされているのが特徴です。

マルチセンターシートって、2列めではセンターシートになっている一方、シートバックを折り畳んで、さらに前にスライドさせると、1列めのアームレストとして機能します。

マルチセンターシートを前にスライドさせてしまうと、3列めへのアクセスがウォークスルーでできます。3列めもちゃんと使わせようというアイディアと感心。

▲ハイウェイスターVの2列めシートの中央席はフォルドダウンして前にスライドさせると1列めのアームレストに

▲中央がマルチセンターシート

 

■進化したデジタル技術とハンズオフ運転支援システム

デジタル技術も、新型セレナの見どころです。とくに注目すべきは「先読み放電制御」。カーナビ連動型のバッテリー制御技術で、ドライバーはナチュラルなブレーキフィールを得られます。

どういうことかというと、ハイブリッド車に乗っているひとはご承知かもしれませんが、駆動用バッテリーがフル充電だと、回生システムのせいでブレーキの効きに影響が出るものです。

日産の技術陣はそれを避けるため、案内ルートのなかでバッテリーの充放電に適した道をあらかじめ見つけるよう設定しています。

下りにかかるときバッテリーが適度に減っているように手前で放電するのです。そして、下りながら徐々にバッテリーの充電を行います。

私も箱根の峠道で試してみましたが、バッテリーの充放電をイメージして乗っているとおもしろい。技術って日々進化しているんだなあと、改めて感心しました。

▲プロパイロットパーキングは白線がなくても自動駐車が可能

同一車線内ハンズオフ走行ができる“プロパイロット2.0”も、しっかり働いてくれました。搭載グレードは「e-POWERルキシオン」のみ(そもそもルキシオンにはe-POWERの設定のみ)。

走行速度設定はもちろん、先行車を一定の間隔を空けながら追従し、白線を読みながら車線の中央を維持し、カーブもきれいに曲がります。車線変更も自動でやってくれます。

ウィンカーを出すと、近くに車両がいないとクルマが判断すると(かなり慎重です)、すっとドライバーが行きたい車線に移ります。

足まわりとステアリングシステムとタイヤの設定と、苦労がいろいろあったと聞きましたが、はたして、快適に使える仕上がりです。「行楽帰りなどに評価されるはずです」とは開発者の言葉です。

▲白線のない場所でも5個所を自動駐車(ボタンひとつで作動)のためにメモリー可能

 

■使い方さまざま 荷室の多用途性

▲3列めシートは脚部を折り畳み、上に跳ね上げベルトで固定

荷室の多用途性の高さも、セレナのセリングポイント。3列めシートは、折り畳んではね上げてベルトで固定でき、同時に2列めシートを前方にスライドさせれば、荷室容量は大きく使えます。

固定された3列めシートが意外にかさばるとか、ワンタッチで跳ね上げができないのが不便とかいう意見もあるようです。

純粋に競合車と比較すれば、そういうことも気づくでしょうが、実生活でそこまで不便をかんじるかどうか。杞憂かもしれません。

床に3列めシートを収納しないかわりに、そこはけっこう大きなモノ入れになっています。これは一部の競合に対するメリットということもできます。

なにはともあれ、シートのたたみ方と収納は、各社の開発者の知恵の見せどころともいえ、たいへん興味ぶかいポイントです。

全長4695mmと、セレナより少しコンパクトなトヨタ・ヴォクシー/ノアは、ちょっとアルファード的に、2列めシートに脚やすめのオットマンをつけられるグレードがあったり、3列めシートにワンタッチホールド機構が付くなど特徴を持っています。

上記のワンタッチホールド機構は、「からくり」と呼ばれています。ドアを開けるとワイヤを利用してサイドステップが出てくる「からくり」が選べるのも、ヴォクシー/ノアの特徴。

このあたりはセレナにも頑張ってほしいところです。

ノアの価格はハイブリッドが305万円から(ヴォクシーは344万円から)。ガソリン車が267万円から(同309万円から)。7人乗りと8人乗りとが用意されています。

セレナの価格は、「e-POWERハイウェイスターV」が368万6100円と「e-POWERルキシオン」が479万8200円。価格を重視するなら、e-POWERならベースモデルの「e-POWER X」が319万8800円から。2リッターガソリン車なら「X」が276万8700円からです。

【Specifications】
Nissan Serena e-Power Highway Star V
全長×全幅×全高:4765x1715x1870mm
ホイールベース:2870mm
車重:1810kg
エンジン:シリーズハイブリッド(1433cc3気筒ガソリンエンジン+電気モーター)
駆動:前輪駆動
最高出力:72kW(エンジン)+120kW(モーター)
最大トルク:123Nm(エンジン)+315Nm(モーター)
燃費:19.3km@l(WLTC)
価格:368万6100円

>> 日産 セレナ

<文・写真/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

【関連記事】
◆スマホ連携でカーナビにもなるディスプレイオーディオ7選【プロが選んだ本当に良いカー用品ベストバイ】
◆フェアレディZに180SXも!1/64スケールの日産ミニカーがファミマで買えるぞ!
◆凍結湖で実力を体験! 開発者が胸を張る日産「アリア B9 e-4ORCE」の走行安定性をチェック