ライフスタイルの変化や家に求めることが変わるタイミングで、「住み替え」を検討する人は少なくありません。住み替えには「マンションからマンション」「マンションから戸建て」「戸建てから戸建て」といくつかパターンがあり、さらに戸建てのなかにも中古戸建て・新築建売住宅・注文住宅と複数の選択肢があります。

注文住宅への住み替えは、売却のタイミングが難しい

ほかの住み替えパターンとは異なり、注文住宅への住み替えは、持ち家を売却するタイミングが非常に難しいと言われています。一般的に、注文住宅の契約から引き渡しまでにかかる期間はどんなに早くても半年。特に建築士事務所などへの設計依頼から始める場合、1~2年かかることもあります。

間取り計画は、後悔のないようじっくり時間をかけて進めたいところ

資金に余裕がない場合は先に持ち家の売却を行い、新居が完成するまでは賃貸物件で一時的に暮らすことになるケースが多いもの。仮住まいへの引っ越しと新居への引っ越し、2回も荷づくりをせねばならず、手間とお金がかかってしまいます。

筆者も建売戸建てから注文住宅への住み替えを経験。でも「引っ越し2回はどうしてもイヤ」という強い思いがあり、仮住まいしなくてもすむダンドリを考えて実行しました。結果、大成功! 売却→新居の引き渡し&入居→持ち家の引き渡しの順で進め、引っ越しは1回で乗り切りました。今回はそのダンドリと成功のポイントについて詳しく紹介します。

2019年~2022年:停滞期

持ち家の立地と間取りに不便さを感じていたため、3年ほど前から住み替えを検討していました。ただ「この家が本当に売れるのだろうか」という不安が大きかったのも事実。検討し始めた当初は「土地の購入は、今の家が売れる目処がついてから」という、いわゆる「売り先行」のスタンスでした。

そのうち「いいかも」と思う土地が見つかり、査定をお願いしていた不動産会社に持ち家の売却を依頼。

持ち家の査定は、前もって何社かに依頼。価格や評価に大きな差があったので本当に驚きました。結局、高く評価してくれた会社を選びました

でも当時はちょうどコロナ禍に突入したばかりで外出すらはばかられる状況。内見の申し込みはわずかに1件で、いいなと思っていた土地のほうが先に売れてしまい売却をいったん撤回せざるを得なくなりました。

この経験を経て、「土地購入を先に行わなければ希望を叶えることは難しい」と判断。「買い先行」にスイッチしています。気に入った土地が見つかるまでは、今残っている住宅ローン返済をできるだけ進めていこうと夫と話し合いました。ちなみにわが家は、マンションや建売住宅への住み替えという選択肢はありませんでした。家族が使いやすい間取りをゼロから考えたい、という思いが強かったからです。

2022年2月:新居用の土地を購入、持ち家の売り出しスタート

売却を検討し始めてから、約3年でようやく希望の土地が売りに出されているのを発見。すぐに購入の意思を伝えました。

いい土地に出合ったら、あとはスピード勝負。持ち家の売却相談もすぐに行いました

それと同じタイミングで、購入した土地の不動産会社に持ち家の売却を相談。売却不動産の引き渡しは、居住中の場合一般的には売買契約から約3ヶ月後です。今すぐ売りに出して新しい家が完成する前に引き渡すか、新しい家の引き渡し時期に合わせるため少し待ってから売りに出すか。どちらかの選択しかできないと思っていましたが、不動産会社の担当者は「引き渡し時期を相談にしておき、それでも買いたい方が現れないかまず様子を見ましょう」と「同時決済」を提案してくれました。

<ポイント1>既存の住宅ローンを完済してから土地を購入
この時点で、持ち家の住宅ローンは完済。住宅ローンの負担がなくなることで、「買い先行」でも土地購入のための新たなローンを組むことができた。ダブルローンになる心配もなく、新居のために使えるお金を確保できたことも大きい。

<ポイント2>「難しい」と決めつけず、まずは希望の条件で売りに出した
売却の価格や引き渡し時期は後から変更可能。通例にとらわれず、まずは最も希望する条件で売りに出したことが功を奏した。

2022年3月:売却が成立

新しく購入した土地は契約を進め、住宅の施工先探しをスタート。引き渡しまでは1年ほど、翌年の春(2月か3月)になりそうだという見通しも立ってきました。そこで、持ち家の内見希望者や問い合わせいただいた方には、余裕を持って「翌年3月末の引き渡しを希望」と伝えてもらうことに。

「もっと早く引き渡してほしい」「1年待つ代わりに値引きしてほしい」と言われることがあれば、100万円程度の値引きには即応じてください、と筆者はあらかじめ不動産会社に話していました。仮住まいに引っ越すとなると、引っ越し費用と家賃の支払いで100万円は軽く飛んでいきます。だったら、その手間を値引きで相殺して「同時決済」にするほうがいいと考えたのです。

持ち家のキッチン。内見予約が入るたびに、念入りな掃除と片づけを行いました(筆者撮影)

内見は約3週間で6件。そのうちの1人が「買いたい」と購入の意思を示してくれました。結局、当初の価格から80万円の値引きをして売却成立。売り出しから1ヶ月も経たずに売却することができました。

<ポイント3>引き渡し希望を年度末に設定。引っ越しが多くなる時期に合わせた
新しい家の引き渡し予定は2月中旬だったが、工事の遅れや資材調達遅延の諸事情を考慮して念のため持ち家の引き渡し希望は3月末に。年度末ということもあり、転勤・入園・入学・進級に合わせた引っ越し需要にも期待した。

2022年~2023年2月:持ち家で居住しつつ、新居の打ち合わせ&建築

売買契約を交わした後、翌年の引き渡しまでは特にすることはなし。これまで通り持ち家に住み、新居の計画を進める日々です。

建築中の新居の様子。「今住んでいる家が売れるかな」という不安を抱くことなく、家づくりを楽しめました(筆者撮影)

ただし契約時に申告した家の状況を保つため、これまで以上に掃除や建具の手入れには気を配りました。給湯器や食洗機が急に壊れないか、床に傷がつかないかなど、ヒヤヒヤしながら過ごしたのも事実です。

2023年3月:新居に入居後、売却した家を引き渡し

2月に入ると急に慌ただしい状況に。持ち家の物件調査(買主が【フラット35】を利用していたため)、固定資産税の金額確認、引き渡し前の現地確認などを行いました。

持ち家から荷物を引き上げた状態。10年以上住んでいて、それなりにものも増えていたため大変でした(筆者撮影)

新居の引き渡しは3月20日。それから1週間ほどかけて荷物を運び出し、持ち家の掃除などを行いました。前向きな引っ越しとはいえ、やはり骨が折れる作業なのは間違いありません。これを数ヶ月後にもう1回やるとなると、体力的にも精神的にもかなりこたえそうです。荷づくりや荷ほどきだけでなく、インターネット環境を整えたり、郵便物の転送手続きをしたりするなど煩雑な作業がたくさんあります。

住み替えの同時決済は、まず希望通りやってみる。実現したらラッキー

「同時決済」の住み替えを経験して思うのは、「いくつもの偶然が重なってたまたま実現した」ということ。1年先の引き渡しでもよいと言ってくれる買主が常にいるとは限りません。また注文住宅は間取りの打ち合わせに想定以上の時間がかかることも多いですし、建築資材の欠品や値上げで工事がストップしてしまう可能性もあります。それでもうまくいったのは、希望を声に出して伝えたからこそ。不動産会社や建築士、施工先の方々の多大なサポートがあったのも大きな要因です。

実現できるかどうかは、運次第。でもやってみなければ可能性はゼロです。これはあくまで筆者のケースですが、住み替えを検討している人はぜひ参考にしてみてください。

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