清水直行インタビュー 後編

ロッテのリーグ優勝に向けた投打のキーマン

(前編:佐々木朗希の暴投増加に思うキャッチャーの責任 シーズン後半戦に向けた課題>>)

 今シーズンのロッテはシーズン開幕前の下馬評は低かったが、オールスター前までに42勝32敗4分、首位のオリックスを3.5ゲーム差で追うリーグ2位につけている。ここからリーグ優勝へと突き進むための、後半戦の投打のキーマンを、ロッテの元エース・清水直行氏が語った。


6月24日の日本ハム戦でサヨナラ犠飛を放ち、祝福される安田

【復調に期待の先発、今後に期待の若手たちも】

――ロッテがリーグ2位につけている要因のひとつに、ピッチャー陣の頑張りがあると思います。後半戦に向け、ピッチャー陣のキーマンを挙げるとすれば?

清水直行(以下:清水) 佐々木朗希(7勝2敗)と種市篤暉(6勝4敗)は、僕の中で"別格"と位置づけています。やってもらわないと困る、計算できるピッチャーですから。なので、キーマンを挙げるとすれば、その周りを支える西野勇士、小島和哉、C.C.メルセデスなどになる。もしくは、ファームからもう1、2人くらい出てくるか、ということになりますが、「立て直してほしい」という意味で注目しているのは小島ですね。

 直近の試合(7月15日の楽天戦)で5失点するなど、ここ5試合で5失点以上の試合が4試合あり、どんどん防御率が悪くなっている。疲れもあると思いますが、復調してもらわないといけません。

――シーズン序盤が特にそうでしたが、ロッテは佐々木投手に勝ちがつくと乗っていく傾向がありますね。

清水 ロッテは佐々木が投げる試合は落とせません。それが、オリックスやソフトバンクと競り合っていくための"絶対条件"。同じような理由で種市が投げる試合も落としたくないですね。特にオリックスはピッチャー陣が強力で、リーグを連覇しているチームなので、シーズンの勝負どころや勝ち方を知っています。対抗していくためには、やはり2人の活躍が欠かせません。

――先ほどの話にありましたが、ファームからもう1、2人先発ピッチャー陣に加わってくることが理想ですか?

清水 西野が右肩の違和感で登板を1回飛ばしましたけど、佐々木、種市、小島、メルセデスと先発ピッチャー陣はなんとか形になってきています。ただ、優勝を狙うならば、あと1、2人ぐらいローテーションに入って試合を作れるピッチャーが必要です。

 それがドラ1ルーキーの右腕・菊地吏玖(りく)になるのか、(ルイス・)カスティーヨになるのか。いろいろ考えて準備していると思いますが、今はまだ見えてきません。あと、中継ぎのピッチャーになりますが、横山陸人は少しずつ形になってきたかなと思います。

――高卒4年目のサイドスロー右腕、横山投手は7月9日の日本ハム戦でプロ初セーブを挙げましたが、現段階の評価はいかがですか?

清水 期待はしていますが粗さがありますし、まだまだです。勝ちパターンのリリーフとして投げさせるのであれば、もう少しコントロールを磨かないと。ちょっと厳しい言い方になりますけど、一軍で7、8、9回のポジションを担うのであれば、ただ力強いボールを投げられればいいわけではない。ある程度、コントロールが定まった中で力強さを出していかないと。「えいや!」だけでは通用しません。今はそれでもいいと思いますが、あとは本人の意識次第ですね。

――リリーフ陣では、以前から清水さんはルイス・ペルドモ投手を高く評価していますね。ここまで34試合に登板し、防御率1.67、28ホールドと結果を残しています。

清水 ペルドモの安定感は驚異的です。代わりはいませんし、僅差の試合をモノにできて、ロッテが2位でいられるのは、8回を投げるペルドモの存在が大きい。ここは球団がドンピシャな補強をしましたね。

【安田に作ってほしい「戻るべき場所」】

―― 一方で、バッター陣のキーマンを挙げるとすれば?

清水 安田尚憲です。25打席ヒットが出なかったり苦しい時期もありましたが、(6月24日の日本ハム戦で)サヨナラの犠牲フライを打ったことで肩の荷が下りたのか、コンスタントにタイムリーも出るようになってきましたし、調子が上がってきました。

 打順としては5、6番に入ることが多く、ランナーが溜まった状態で回ってくるケースも必然的に増えるわけですから、そこで安田が打つかどうかは勝負をわけるひとつのポイントになると思います。吉井理人監督は、安田にヒットが出なかった時も二軍に落とさず代打で起用したり、なんだかんだと使い続けていました。最近はその期待に応えられていますね。

 今後、安田を何番で起用するのかはわかりませんが、5〜7番あたりで自分のバッティングをしてもらって、少ないチャンスをものにできればいいのかなと。一度スランプに陥ると長いタイプなので、不調の時期を短くして、上がってきた調子を落とさないことを重視してほしい。今は打点を挙げてくれたら十分です。

――具体的に、安田選手のバッティングはどのあたりがよくなったのでしょうか?

清水 最近はセンター方向へ意識が向いている感じがします。体を開くことなく打つことができていますし、速い球、遅い球にもある程度は対応できるようになってきています。少しずつ、自分が打ちやすい形になりつつあるのかなと。

 今までは、形が崩れたらどうしようもなかった。何をやったらいいのかわからなくなって、がむしゃらに「あれもこれもやって」となり、バッティングフォームもコロコロ変わっていましたから。今、取り組んでいる形をものにできたら、これから先に不振に陥った時も「戻るべき場所」のようなものができると思います。

――安田選手と同様、打点が期待されるのが、現在チームで打点トップ(36打点/リーグ8位)の山口航輝選手だと思います。

清水 ケガから復帰してからはホームランも出るようになりましたね。常にスイングが豪快なので、相手にとって怖さもあるでしょう。特に均衡した試合では、一発で試合を決められる選手が貴重ですし、ロッテでは数少ない長打の期待できるバッターですから。

 楽天戦(.259)や日本ハム戦(.268)の打率と比べて、オリックス戦(.167)とソフトバンク戦(.200)の打率が低いのは気になりますけどね。両チームの投手陣がいいので仕方がない部分もあるでしょうが、上位を争うチームとの対戦時にどれだけ打てるかもポイントになりそうです。

【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)

1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝府中から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。