コロナ禍を「サーキット走行会」はどう乗り越えたのか 感染対策がモータースポーツの草の根にも浸透
コロナ禍のサーキット通いの形
旧車ブームが続く中で“クラシックカーでモータースポーツを愉しむオーナー”が増えており、今年もサーキットを舞台とした走行会が各地で盛んに開催されている。
【画像】細川さんのトライアンフ 細部まで見る【第40回TBCC参戦マシンの勇姿】 全27枚
千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイを会場として年間4戦で実施されている「東京ベイサイド・クラシック・カップ・シリーズ(TBCC)」も、その1つだ。
取材に応じてくださった細川隆誠さんのトライアンフ。 高桑秀典
第40回目を迎えたTBCCもコロナ禍に負けることなく継続開催されてきたが、その裏には実行委員会の苦労があった。
というのも、非常事態宣言、他県への越境訪問の自粛要請、医療体制の状況などを総合的に判断、協議しながら運営し、感染者数が爆発的に増えたときには延期して代替日程で実施するなどしてきたからだ。
そして、感染症防止対策に重点を置いての開催となっていた時期には「一般観戦者の入場を不可」とし、「走行時以外はマスクを着用する」「他者との間隔を十分確保する」「体調が悪いときは参加しない」「室内に入るときは検温する」「受付時は窓越しで対応する」「ドライバーズミーティングはマスク着用+検温+換気」を行いつつ、密にならないようにドライバーとスタッフのみの参加とするなど、さまざまな対応措置を講じてきた。
一般観戦者の受け入れを再開したのは、2022年6月に開催された第37回からだ。
それでも参加者が集まった「TBCC」
TBCC競技長の田中伸一さんによると、感染症防止対策のため、今後も場内ではマスクの着用を徹底し、ドライバーズミーティングで参加者が着席する机の間隔を広くしたままにする、といった対応措置を継続していくそうだ(2023年春の取材時)。
高齢ドライバーの代表として昭和21年生まれの細川隆誠さんにもインタビューしてみたが、インフルエンザにもかかったことがないので、コロナ禍の中でもこれまで通り楽しんできたのだという。
参戦を続けられる理由に、ヒトとヒトとの繋がり・支え合いを挙げるオーナーが多い。 高桑秀典
「健康の秘訣は何も考えないこと。何事も気は持ちようなので、感染症も気の持ちようです。過去にイベントをやっていて、ひと休みしていたところもまた動き出しているので嬉しいですね。とはいえ、自分の場合は年齢が年齢なので、いつまでレースができるかな? と思っています」とも話してくれた。
クラス優勝を果たすなど、TBCCの名物参加者のひとりとなっている細川さんによると、以前はクラシックミニに乗っていて、袖ヶ浦フォレストレースウェイや筑波サーキット、そして、韮崎市にある小さなサーキットなどを走っていたのだという。
TBCCに参戦するようになったのは8〜9年ぐらい前のことで、同レースの統括から車両についてのイロハを教えてもらい、たまたま懇意にしているショップにロールバーと8スポークホイールがあったので、難なくレースカーが完成したそうだ。
「クラッシュして転覆すると危ないのでロールバーに斜めのバーを追加してもらい、トライアンフのなんちゃってレースカーができました」と笑顔で話してくれた細川さんは、これからもクラス優勝を目指して走り続ける。
自分に合う参加方式、支持を集める
TBCCは“往年の輸入車”と“懐かしい国産車”が参加しているレース形式走行会で、袖ヶ浦フォレストレースウェイを本気で走るサーキットイベントながら、ドライバーの「腕」とクルマの「性能」によるラップタイムにより絶妙なクラス分けが行われている。
安全にバトルを楽しめるように配慮された敷居の低いサーキットイベントなので、毎回数多くの参加者を集めており、“思い思いのスタンスとスピード”でレースを堪能できることもあり、細川さんのような70代のベテランドライバーもたくさん参加している。
難しい新型コロナとの闘いの中でもTBCCを引っ張ってきた田中伸一競技長。 高桑秀典
第40回TBCCは、第13回ファミリーサーキットデイの中での開催となり、クルマを操ることの楽しさをレース形式走行会の参戦ドライバーのみならず、ギャラリーも含めた参加者全員で再確認した。これまでと同じように戦前車を対象としたヴィンテージ・スポーツクラスやプレTBCC的なスポーツ走行クラスなども用意され、いずれも盛況だった。
レースリザルトは下記のとおり。
入門者向けのクラブマンズ・カップは1962年式レンハムGTの堀口選手が1位、その上位クラスとなるクリスタル・カップは1968年式フォード・アングリアの石川選手が1位、さらにその上位クラスとなるスーパークリスタル・カップは1972年式アルファロメオ・スパイダー・ヴェローチェの紅粉選手が1位、最上位クラスのハイパークリスタル・カップ・クラスは1963年式ロータス・コルチナSr-1 Mk-1の関口選手が1位だった。
次戦となる第41回TBCCは6月11日に開催される予定だ。
第14回ファミリーサーキットデイは来年の3月10日に実施されることになっている。EVが一般化し、クルマの様態が大きく変わっていく時代となったが、TBCCとファミリーサーキットデイは今後も数多くの自動車趣味人から支持されていくだろう。