ニューヨーク市警察(NYPD)は、TikTokで広がる自動車窃盗チャレンジが原因と考えられる自動車盗難の増加に対処するため、Appleの紛失防止タグ「AirTag」を無料で500個配布することを発表した。盗難車の追跡を可能にする方法の1つとして、窃盗犯が見つけにくいようにAirTagを車内に隠すことを提案している。

2015年から2019年にかけてヒュンデと起亜の複数のモデルが十分な盗難対策機能が搭載されていないまま販売され、USBケーブルと身近なツールを使用してエンジンを始動させることができた。昨年夏にその手法がTikTokに投稿され、「Kiaチャレンジ」と呼ばれる自動車窃盗チャレンジが広がり始めた。

ヒュンデと起亜は正規ディーラーでのソフトウェアアップデートを実施して対応したが、アップデートを行っていないオーナーも少なくない。ニューヨーク市では2023年に966台のヒュンデと起亜の車の盗難が発生しており、すでに2022年全体から819台増加している。これはKiaチャレンジが大きな原因と見られている。

AirTagは紛失防止タグであり、盗難対策用に設計されていないが、車内に隠されたAirTagが盗難車の発見に役立った事例が報告されている。ペアリングしているAirTagがユーザーから離れると通知が届くので車が盗まれたことに気づけ、AirTagの位置を確認することで車の現在地を知ることができる。また、AirTagにはストーカー行為のような悪用を防ぐために、ユーザーのものではないAirTagが一定時間近くにあることをスマートフォンに通知する機能が備わっている。これにより、窃盗犯がAirTagの存在に気づく可能性があるが、見つけにくく取り外しにくい場所に設置しておけば、窃盗犯は追跡を避けるために盗難車をあきらめざるを得なくなることから、窃盗の抑制にもつながる。

「犯罪対策に積極的にテクノロジーを活用していく」とエリック・アダムスNY市長(NYC Mayor's Office公式YouTubeから)

NYPDは、配布するAirTagsの位置情報を利用者の許可なく入手することはできない。盗難に遭った際、リアルタイムの追跡情報を捜査に使ってもらうためには、警察に被害を通報して捜査当局に追跡の許可を与える必要がある。CBSニュースによると、配布するAirTagは非営利団体Association for a Better New Yorkからの寄付によるもので、Castle Hill、Soundview、Parkchesterにおいて希望する住民に配布する予定だ。これらの地域ではヒュンデと起亜の車の盗難が548%も増加しているという。この取り組みが自動車窃盗チャレンジの被害の増加を抑制し、住民の安全確保につながることをNYPDは期待している。