「舌苔」の取り方・予防する方法はご存知ですか?医師が監修!
舌の表面に白っぽい汚れが付着する「舌苔」について解説します。舌苔は通常、健康の人の舌全体にも薄く付着しているものです。
しかし、口の中の衛生状態が悪かったり体調が悪かったりすると、白色や黄色の舌苔が厚くこびりつくこともあります。
基本的には一時的なもので、口の中の衛生状態が改善されたり体調が回復したりすることで元に戻ります。
ただし、厚くこびりついた舌苔をそのまま放置すれば口臭や誤嚥性肺炎の原因にもなるため注意が必要です。
今回は、舌苔の症状や原因・胃腸の病気との関係をはじめ、正しい取り方や予防方法についても確認しておきましょう。
舌苔
舌苔とはどのようなものでしょうか?
舌の表面に付着する白っぽい汚れのことを「舌苔(ぜったい)」といいます。舌苔は、口の中の粘膜が剥がれたもの・食べカス・唾液の成分・細菌・微生物などからなります。まず、舌苔には粘膜を保護する働きがあります。通常は健康な人でも舌全体に薄く舌苔が存在しています。しかし、口の中の衛生状態が悪い時・体調が悪い時・口の中が乾燥している時などは、普段よりも舌苔が付きやすくなるのが特徴です。舌苔がたくさん付着することで口臭が強くなったり味覚障害が引き起こされたりすることもあります。ただし、舌の粘膜はとてもデリケートです。舌苔を取り除くためにゴシゴシ磨いてしまうと粘膜を傷つけてしまう危険があります。また、舌の表面には味覚を感じとる細胞がたくさんあります。ケアをしすぎてしまうと、細胞がダメージを受けて味覚障害につながる恐れもあるため注意が必要です。症状を教えてください。
舌の表面に白や黄色の汚れが付いたものが「舌苔」です。通常、舌苔は唾液の自浄作用により、自然に浄化されます。そのため、舌全体にうっすらと白い舌苔が付いている分には、特に問題はありません。しかし、舌が真っ白になるほど厚みのある舌苔が付いている場合・黒ずんだ舌苔が付いている場合・黄色っぽい舌苔がついている場合には、体調不良が影響を及ぼしていると考えられます。また、それとは逆に全く舌苔が付いてない状態も注意が必要です。栄養不足や貧血が疑われるため、医療機関を受診したほうがよいでしょう。原因を教えてください。
食後の歯磨きを怠たり口の中の衛生状態が悪くなると舌苔が増えやすくなります。また、口呼吸により口の中が乾燥することも原因のひとつです。マスクをしているときに口呼吸になっている人は要注意です。その他には、ストレスや免疫力の低下などにより舌苔が増えることもあります。さらに、抗生剤の服用により舌苔が厚くなることもありますが、服用を中止したり体調が回復したりすれば元の状態に戻ることがほとんどです。誤嚥性肺炎の原因になると聞いたのですが…。
誤嚥性肺炎とは、嚥下機能(食べ物や飲み物を飲み込むための機能)が低下し、唾液や食べ物が気道に入ってしまうことにより引き起こされる病気です。一般的には、嚥下機能が低下した寝たきりの患者や高齢者で多くみられる疾患です。この場合、唾液や食物が気道内に入ってしまうことで肺炎を来します。しかし、嚥下機能が低下していない正常な人でも、少量ずつは食物や唾液は気道に流れ込んでいます。そんなときに、口腔ケアが長期にわたり行われていない場合や免疫力が下がっている場合には通常よりも大量に細菌が繁殖している事があるため、少量のたれ込みでも肺炎が起こってしまうため注意が必要です。嚥下機能が低下している人は口腔内の環境悪化により更に誤嚥性肺炎の重症度、頻度ともに上昇してしまいます。嚥下機能が低下している人はもちろん、嚥下機能が低下していない人の場合でも、誤嚥性肺炎を予防するためには口腔ケアが何よりも大切です。食後の歯磨きを丁寧に行うことが予防につながります。胃腸の病気が原因の場合もあると聞いたのですが…。
刺激の強い食品の過剰摂取は舌苔を増やします。特に、胃腸が疲れている時には黄色っぽい舌苔がみられます。具体的には、辛い食べ物・酸っぱい食べ物・にんにく・にら・コーヒー・お酒などが胃に負担がかかる食品ですので注意しましょう。また、暴飲暴食によっても胃腸に負担がかかります。それ以外にも、風邪で高熱が出ているときに黄色っぽい舌苔がみられることもあります。この場合には、口臭も強くなるのが一般的です。舌苔
舌苔がみられる場合、何科を受診すれば良いでしょうか?
まずは、お近くの歯科や口腔外科へ相談するのがおすすめです。口腔ケアに心配がある人は、適切な口腔ケアの方法を身につけることが舌苔の改善につながります。ただし、舌苔が増えた原因として胃腸症状や風邪症状などがみられる場合には内科へ受診したほうがよいでしょう。胃腸症状や風邪症状の改善とともに舌苔は改善していくので、根本的な部分の治療を行うことが舌苔を正常化させるために必要です。どのような検査で診断されますか?
舌の状態を目で見て危険な症状かどうか判断します。ただし、舌苔が付いているからといって病気とはいいきれません。なぜなら、健康な人でも口腔内の衛生状態が悪くなれば舌苔がつくことはよくあることだからです。また、細菌の繁殖により黒っぽい舌苔が付くこともあります。これは、抗生剤の長期服用や糖尿病・腎障害などが主な原因です。そのため、既往歴や治療歴などの問診も必要です。まれに黒色腫という腫瘍の場合があります。視診や問診の結果、他の病気が疑わしい場合には精密な検査が必要になることもあります。舌苔の取り方を教えてください。
歯ブラシや舌磨き専用の舌ブラシを使って汚れを優しく取り除きましょう。舌の表面はとても傷つきやすいため、力を入れすぎないことがポイントです。舌の奥から先端に向かってブラシで優しくかき出すように磨いていきます。舌全体が磨けるように、一か所につき2~3回程度繰り返しましょう。ゴシゴシと強く擦ることは舌を傷つける原因になります。もし舌苔がたくさん付着して取り切れなくても一度に取り除くのではなく、毎日少しずつ取り除いていくことが大切です。舌を磨くのは1日1回、起床時に行うのがよいでしょう。舌苔
なかなか取れない舌苔は無理に取らないほうが良いでしょうか?
舌苔を無理やり取り除くのはやめましょう。舌はとてもデリケートで傷つきやすい器官です。無理にゴシゴシ磨こうとすると、舌の粘膜や細胞が傷ついてしまいます。最悪の場合、味覚障害を引き起こしてしまうこともあります。舌の磨きすぎや力の入れすぎには注意しましょう。どうしても気になる場合には、専門機関へ相談しましょう。舌苔を予防する方法はありますか?
まずは口腔内を衛生的に保つことが大切です。食後の歯磨きはしっかり行うようにしましょう。また、口の乾燥により舌苔が増えることもあります。普段から口で呼吸する癖が付いている人は、鼻で呼吸するように心がけるようにしましょう。また、唾液の分泌量を増やすために舌を意識的に動かすことも効果的です。その他の予防法としては、ストレスを溜めないこと・暴飲暴食を避けること・十分に睡眠をとることも心がけるとよいでしょう。舌は身体の健康状態を示す役割を果たしてくれる器官です。「普段と違うな…」と感じる時には、無理をせず医療機関へ受診するようにしてください。最後に、読者へメッセージをお願いします。
舌はとても傷つきやすくデリケートな器官です。舌が真っ白に汚れているからといって、無理やり強く磨くことだけは避けましょう。もし舌がダメージを受ければ、味覚障害を起こしてしまう危険もあるため注意が必要です。また、舌は健康のバロメーターの役割も果たしてくれます。一日一回、朝の舌磨きで舌の状態をチェックする習慣をつけることもおすすめです。免疫力の低下・貧血・胃腸の不調など、自分の健康状態を知るため役立てましょう。編集部まとめ
今回は、舌に白っぽい汚れが付着する「舌苔」についてお話しました。舌苔は、口の中のはがれた粘膜や細菌・唾液の成分などからなっています。
歯磨きを怠ったり口の中が乾燥したりすると、舌の上に汚れが付きやすくなります。
ただし、ゴシゴシと強く磨くのは避けましょう。舌の健康を守るためには一日一回、優しく磨くことが大切です。
舌苔をそのままにしておくと強い口臭や味覚障害の原因にもなります。お口の中の清潔を保つよう心がけてみてください。
ごくまれに、他の病気が隠れていることもあります。あまりにも舌苔が分厚い場合や黒っぽい色をしている場合には、医療機関を受診するのがおすすめです。
参考文献
口臭がひどい(口腔外科相談室)