「血栓症」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

写真拡大 (全5枚)

血の塊が血管内を塞いでしまう血栓症は、発症部位によってさまざまな病気が引き起こされます。ときには命を脅かすことでも知られ、不安に感じている方も少なくないでしょう。

突然発症するため、予防に努めることが重要になります。そのためにも血栓症について基本的なことを知っておくことが大切です

この記事では、血栓症の種類・原因・症状・できやすい人の特徴・治療方法・予防方法まで詳しく解説いたします。ぜひ参考にしてください。

血栓症の種類と症状

血栓症とはどのような病気でしょうか?

血栓症とは、血の塊が血管内をふさいで血流が止まってしまう病気です。この血の塊のことを血栓と呼びます。血栓ができて血の流れが止まってしまうとさまざまな病気が引き起こされ、その部位によっては命にかかわることも珍しくありません。前触れがなく突然発症する・治療しても障害が残るケースもある・再発する場合も多いなどの特徴があります。
自力で発症を予測することは難しいものの、血液検査や生活習慣などからリスクの有無を多少は予測できる場合もあるでしょう。発症の前触れはないため、予防が何よりも大切な病気です。

血栓症には種類があると聞きましたが…。

血栓症は、動脈血栓症静脈血栓症の2種類に大きく分けられます。それぞれに引き起こされる代表的な病気・原因が異なります。動脈血栓症が引き起こす代表的な病気は、心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈血栓症です。
血流が速い部位で起こります。一方、静脈血栓症が引き起こす代表的な病気は、深部静脈血栓症・肺塞栓(エコノミークラス症候群)などです。動脈血栓症とは反対に、血流の遅い部位で起こります。

発症する原因を教えてください。

血管内に血の塊ができ、詰まってしまうと血栓症が発症します。血の塊、つまり血栓ができてしまう原因はさまざまで、動脈血栓症・静脈血栓症でそれぞれ異なります。動脈血栓症の主な原因は糖尿病・高血圧・脂質異常などによる動脈硬化症の他、不整脈・血管炎・弁膜症などです。
血液がドロドロになったり、血管壁に異常があったりすると血栓ができやすくなります。脱水症状による血栓症も多く認められる動脈血栓症の1つです。
一方、静脈血栓症の主な原因には長時間座っていることによる下肢の圧迫・ギプスでの固定・心疾患・妊娠・肥満などが挙げられます。血液や血管の状態に加え、血流の悪さも大きく関連しています。

どのような症状がみられますか?

発症する部位によって病名が変わりますが、どれも前触れとなる症状はありません。発症して初めてわかるため、発症部位によって現れる症状にも差があります。

脳梗塞:手足のしびれ・しゃべりにくさ

心筋梗塞:胸の痛み・呼吸困難

肺塞栓:胸の痛み・呼吸困難

深部静脈血栓症:片足の急激な腫れ・痛み

上記は一例ではありますが、このような症状が現れた場合、すでに発症している可能性が極めて高いです。ただちに医療機関を受診しましょう。

血栓ができやすい人の特徴を教えてください。

血栓ができやすい条件として、血液や血管の状態の悪さ・血流の悪さが重要な要素といえます。

75歳以上

家族が血栓症になった

心臓・肺・腎臓などに持病がある

生活習慣病を持っている

がん治療を受けている

喫煙をしている

ピルを服用している

運動量が少ない

座りっぱなしの時間が長い

飛行機・高速バスなどの長距離移動が多い

上記はあくまでも一例です。しかし、血液がドロドロになる・血管がボロボロになる・血流が滞りやすい…などの条件が揃いやすいため、血栓症のリスクが高いといえるでしょう。

血栓症検査と治療

受診を検討するべき初期症状を教えてください。

血栓症を発症している場合、初期症状の段階で脳梗塞・心筋梗塞を始めとした重篤な状態に向かっている可能性があります。

手足のしびれ

しゃべりにくさ

胸の痛み

呼吸困難

片足のしびれ・痛み・むくみ

激しい頭痛

めまい

失神

上記の症状がみられたら、一刻も早く医療機関を受診してください。特に血栓症になりやすいといわれている持病のある人・高齢の人・ピルの服用をしている人・がん治療を行っている人などは、自己判断せず放置しないことが命を守るために重要です。

どのような検査で診断されますか?

血栓を確認するため、造影CT検査超音波検査などの方法を部位によって使い分けて診断します。画像診断によって血栓の生じている箇所を確認することが可能です。特に信頼性が高いとされている検査はMRV(MR静脈造影)ですが、体への負担が大きいため他の検査方法が優先されるケースが多いです。
また、自覚症状から早期発見される場合も多い深部静脈血栓症では、血液検査によるDダイマーの測定での診断も有用とされています。Dダイマーとは、血栓に含まれるフィブリンという物質が分解された際に生成される物質です。Dダイマーを測定することで、体内に血栓が存在しているかどうかを確認することができます。

治療方法を教えてください。

血栓症の治療は、抗凝固薬によるものが基本的な方法です。抗凝固薬は血栓の生成を抑制する薬で、点滴・飲み薬があります。3~6ヶ月以上続けて投与するのが基本ではありますが、個々の状態に合わせて投与期間を調整することも多いです。なお、抗凝固薬を使用すると合併症として出血がみられることがあり、血が止まりにくいため命の危険を伴います。
65歳以上・糖尿病・腎不全・心臓発作や脳卒中を起こして日が浅いなどの要素がある場合、出血リスクが高いため注意が必要です。また、脳梗塞・心筋梗塞など病状が重篤なケースでは、出来てしまった血栓を積極的に溶かすために血栓溶解薬の点滴を投与します。

血栓症の再発と予防

再発するのでしょうか?

血栓症は再発するケースも少なくありません。持病や生活習慣病などで血液がドロドロ・血管がボロボロになりやすい人は、元々の病状を改善しなければ発症しやすいままだといえます。運動量が少ない人・飛行機や高速バスに乗る機会の多い人・座りっぱなしの仕事をしている人なども、血流の悪化を防ぐ習慣をつけなければ発症リスクは高いままです。
血栓症は一度の発症でも命を落とすケースもあります。助かったとしても、機能障害が残る場合も少なくありません。再発を繰り返すことで機能障害も進展してしまうため、注意が必要です。

血栓を放置するリスクを教えてください。

血栓は命を脅かすことも少なくありません。脳梗塞・心筋梗塞などの場合、少しでも早く医療機関で治療を受けることが助かる可能性を上げるためにとても重要です。下肢に症状が現れる深部静脈血栓症なら、放置しても命にかかわることはないように思えるかもしれません。しかし、放置することで滞った血流により皮ふが茶色に変色してしまったり、潰瘍となったりするケースがあります。
血管内から剥がれ落ちた血栓が体内を移動し、肺塞栓症・心筋梗塞・脳梗塞などに発展する可能性もあるため注意してください。疑われる症状が現れた場合、放置せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。

血栓症を予防する方法はありますか?

予防するためには、できやすくなる原因をできるだけ減らすことが重要です。血栓症の場合、血液や血管の状態が悪化すること・血流が滞ることを防ぎましょう。具体的には脱水状態にならないよう水分をしっかりとることや、体(特に下肢)をしっかりと動かして血流を良くすることがポイントです。
こまめな水分補給を心掛け、デスクワークや長距離移動中も足首など下肢を動かす・ときにはマッサージをしてみるなど対策を意識しましょう。持病や生活習慣病を持っている方は、病状の悪化により血管の状態も悪化する可能性があります。継続して治療を受け、健康的な生活習慣を心掛けることが血栓症の予防にもつながるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症につながることもある血栓症はとても恐ろしい病気です。しかし、予防のためにできることはあります。こまめな水分補給や適度な運動習慣など根気が必要ではありますが、1つ1つは小さなことの積み重ねです。
できることから少しずつ改善し、健康な未来のためにも予防に努めましょう。万が一発症してしまったときは、発症部位にかかわらず速やかに医療機関を受診してください。

編集部まとめ


血栓症について、種類・原因・症状・できやすい人の特徴・治療方法・予防方法などをご紹介しました。

もし発症したときは、放置してしまうと発症部位にかかわらずとても危険です。血栓症が疑われる症状がみられた際は速やかに医療機関を受診しましょう。

発症してしまうと恐ろしい病気ではありますが、血栓ができやすくなる原因を知ることで予防にも役立てることが可能です。

適切な水分補給・適度な運動など、日常的な小さな積み重ねで未来の健康を守りましょう。

参考文献

「血栓症」を知ろう(千葉県医師会)

血栓症