【体験談】手のむくみは「全身性強皮症」のサイン? 合併症や薬の副作用との闘い

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難病に指定されている「全身性強皮症」は、指のむくみ、関節痛、皮膚の硬化などの症状が現れます。闘病者の牧野さんは合併症で多発性筋炎も患ったため、立っているだけで体調が変化し、健常者の何倍も疲れやすくなったそうですが、外見からは病気を抱えているように見えないため、周囲からは「甘えだと思われてしまう」と言います。全身性強皮症を正しく理解してほしいと訴える彼女に、病気が診断された経緯と治療内容、周囲の人への思いなど話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。

体験者プロフィール:
牧野 美咲

富山県在住、1992年生まれ。娘とふたり暮らし。全身性強皮症と診断されたのは2020年4月。その3か月後に多発性筋炎も併発していることが判明。診断から約4か月後に入院。入院から2週間ほどでステロイド45mgから治療を開始。本来3か月ほどの入院が必要だが、家庭の事情により早めに退院し、その後は自宅療養に移行。現在はステロイド5mgと免疫抑制剤などを服薬しながら無理のない範囲で今まで通りの生活を送っている。月1回の通院では多発性筋炎のリハビリも行っている。

記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

1年掛かって全身性強皮症であることが判明

編集部

全身性強皮症と診断された経緯について教えてください。

牧野さん

両手の指関節、手の甲にむくみが生じ、張っているような症状があったため内科を受診しました。そこで、担当してくれた医師が膠原病に詳しく、「強皮症ではないか」と言われました。強皮症にも限局性と全身性があるため、すぐに地元の総合病院を紹介され詳しく調べることになりました。

編集部

地元の総合病院ではまず血液検査を受けたそうですね。

牧野さん

はい。しかし、最初は全身性強皮症の数値(抗U1RNP・抗セントロメア抗体など)が出ませんでした。その後、総合病院内の皮膚科を受診した際に、結果が出るまでに1年ほどかかる検査を受け、「抗U3RNP」の全身性強皮症であることが分かりました。この抗体は主に欧米に多く、日本では珍しい抗体と当時の主治医から伝えられました。

編集部

結果が出るまでに1年とはだいぶ時間がかかりましたね。その間に症状は悪化しなかったのでしょうか?

牧野さん

結果が出るまでの間の症状は、そこまで酷くはありませんでしたが、主に両手の指関節痛、胸あたりに不快感が少しだけありました。

編集部

病気が判明したときはどのような心境でしたか?

牧野さん

それまでは何の病気かまったく分からず曖昧な治療が多かったため、病名がはっきりして治療方法も明確に分かったので安心しました。

編集部

血液検査のほかに、どのような検査をされたのでしょうか?

牧野さん

レントゲン検査、CT、MRI、内視鏡検査(胃カメラ)をおこないました。また、他県の病院でも、地元の総合病院で行ったものと同じ検査を受けました。検査した結果、正常の血管の形は縦長で楕円の形をしているのですが、私は血管にこぶができていて、正常な形にはなっていないことがわかりました。縦長ではなく横広で、こぶが途中にできている感じです。その影響で、爪の付け根に爪上皮出血点という出血もありました。

多発性筋炎も発症

編集部

全身性強皮症は難病に指定されていますよね。具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?

牧野さん

私の場合は両手の指が異常に浮腫み、そのあとから関節痛、皮膚の硬化がありました。そのほか、寒くなると指が真っ白になるレイノー症状もありました。入院してから再度、胃カメラ検査をすると逆流性食道炎、胃潰瘍なども見つかりました。

編集部

本格的な皮膚硬化が現れたのはいつごろですか?

牧野さん

全身性強皮症と診断されて3カ月ほど経ってからです。合併症の多発性筋炎の症状が出るのと同時でした。皮膚がまったく伸びず、つかめない状態になりました。皮膚硬化が進むにつれて正座やしゃがむことができなくなりました。

編集部

発症後、お仕事や日々の生活はどうされましたか?

牧野さん

多発性筋炎の発症後は立っているのも辛かったため、仕事は座り仕事を中心にしてもらいました。皮膚硬化や筋炎症状が酷くなってからは、特に日常の生活を送るのに苦労しました。顔の皮膚も硬化していたため口が開きにくく食べるのが大変でした。筋炎は階段を登ったり腕や指力が入らなかったりして、ペットボトルの蓋を開けるのにも苦労しました。

編集部

医師からはどのように治療を進めていくと説明がありましたか?

牧野さん

「まずはステロイド45mgから治療開始していく」と言われました。この治療で、ほぼ皮膚硬化は緩和されていくと言われました。

編集部

ステロイド45mgからスタートして緩和がみられたのでしょうか?

牧野さん

投薬して2日ほどして効果が出てきました。まずは、皮膚硬化の緩和、次に筋炎の症状である両足の太腿、骨盤周りの筋肉の痛みが緩和していきました。ただ、薬の効果と同時に筋肉の低下、ムーンフェイス(満月様顔貌)、多汗などの副作用も同時にやってきました。

編集部

合併症である多発性筋炎の治療はどのよう進めていくと説明がありましたか?

牧野さん

こちらも同じくにステロイドを使っていました。CKという炎症反応の数値が、筋炎のみ発症している人に比べて低かったため、この治療で痛みの緩和があると言われました。もし、まったく効果がなかった場合は、ステロイドパルス点滴に変更するといった説明がありました。効果が出てきた時点で様子を見ながらリハビリをして、筋力を戻していくといった説明もありました。ただ、筋力低下が激しかったため、リハビリをしても筋力が戻るのには1年掛かるとも言われました。通常20代の筋力には遠く及ばず、おそらく90歳以上の数値だったそうです。立って歩いているのが不思議だと言われました。

当たり前ではない日常を大切に

編集部

病気に向き合う上での心の支えはなんでしょうか?

牧野さん

この病気に対して理解してくれる人が側にいてくれることが、心の支えになりました。家族や職場の人には病気のことを話してあるので、みんな理解してくれています。

編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

牧野さん

現在、皮膚硬化はほぼありません。多発性筋炎は筋力も戻ってきているので、歩いたり階段を登ったりするのには支障はありませんが、指の筋力の戻りが悪いので蓋を開ける場面で苦労します。あとは、逆流性食道炎も症状が酷かったためにお腹いっぱいに食べてしまうと逆流してしまうため、日頃から小分けに食べたり寝る前の飲食は避けたりしています。

編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

牧野さん

見た目は健常者と変わりはありませんが、人の何倍も疲れやすく、立っているだけで体調が急変したり、気分が悪くなったりすることもあります。それを甘えだとは思わないでほしいと思います。自己免疫疾患は、見た目から判断できないことが多いので、少しでも多くの人にこの病気のことをしていただけたらと思います。

編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

牧野さん

自己免疫疾患(膠原病)は多くの種類があるので、なかなか1つの病院や検査では特定されにくいものです。病状があまり出ていないからといって放置せず、できる限り多くの医師や検査を受けた方が、病気が早く判明することもあります。なので、いつもと違う症状があった場合は、できるだけ早めに受診していただくことをおすすめします。

編集部まとめ

周囲の人が病気のことを理解してくれていることが心の支えだと話す牧野さん。全身性強皮症は、外見からはわかりにくいため、周囲の人がきちんと病気を理解する必要性を感じました。牧野さんが受診したきっかけは指関節、手の甲にむくみでした。忙しい毎日を過ごしていると。気のせいだと思い込んでしまうことがあるかもしれませんが、少しでも違和感を感じたら早めに病院を受診するようにしましょう。

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