「三叉神経痛」を疑う4つの症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
突然顔に激しい痛みを感じ不安に思うことがあります。特にその痛みが繰り返し起こる場合は、それは三叉神経痛の可能性もあるでしょう。
三叉神経痛は顔面にある三叉神経が、何らかの要因で脳に異常な伝達を行ってしまうことで発症する病気です。
強い痛みをくり返すことも多く、たくさんの人がその痛みのために辛い思いをしているのです。
そこで今回は三叉神経痛について解説していきましょう。顔面の辛い痛みに悩んでいる人は受診の参考にしてください。
三叉神経痛の症状と原因
三叉神経痛とはどのような病気ですか?
三叉神経痛とは顔面の三叉神経の脳への伝達異常から、特に顔面の片側や口腔などに激しい痛みを生じる病気です。突然に顔面の片側に激しい痛みや疼痛を感じ、その痛みを感じる時間は短い場合もありますが繰り返すことが特徴です。はっきりとした原因のわからない三叉神経痛と病気などにより原因がはっきりしている三叉神経痛があります。通常三叉神経痛といわれる場合、原因がはっきりしない特発性三叉神経痛であることが多いです。
50代以降の年代に発症が多いといわれていますが、病気などが原因の三叉神経痛の場合は若い人の発症も多く確認されています。
三叉神経痛の原因を教えてください。
三叉神経痛は頭蓋骨内の血管に三叉神経が圧迫されることで起こることが多いです。圧迫によって神経のねじれや変形が起きることが主な原因です。その他に腫瘍など、三叉神経痛を起こす原因となる病気もあります。また髭剃り・口の端を触る・歯を磨くなど決まった動作により誘発されて痛みが起きることが多いです。
神経が血管に圧迫されることはその血管が動脈硬化などで硬くなっていることも原因の可能性の1つといえます。このように三叉神経痛の原因については、そのメカニズムとともにはっきりと解明できていない面が多いといえるでしょう。
どのような症状が出るのですか?
症状としては我慢できないほどの痛みが顔の片側を中心に出ます。特に次のような症状が三叉神経痛の特徴です。痛みのある時とそうでない時がはっきりしている
痛みは数秒または数分で治まる
疼くような強い痛み
顔面の違和感や過敏
始終痛みがあるわけではなく、痛みのある時とない時がはっきりしているのが三叉神経痛の大きな特徴です。
その痛みは数秒のことが多いのですが、数分数十分続くこともあり繰り返し起こることもあります。痛みの箇所はさまざまで、歯の痛みのように感じることもあればピリピリした感じもあるのも特徴です。また痛みだけでなく顔面に違和感を感じたり、過敏になったりすることもあり、常にストレスを感じる人もいます。
そのために日常生活に支障をきたしうつ状態に陥ってしまうこともあるのです。
三叉神経痛の診断と治療
何科に行けばいいですか?
歯痛と勘違いして歯科や口腔外科を受診する人もいますが、三叉神経痛の場合は神経からくる痛みなので、脳神経外科を受診すると良いでしょう。神経内科やペインクリニックも受診可能ですが、総合病院の歯科・口腔外科なら神経内科との連携により三叉神経痛の治療を受けられる場合もあります。特に総合病院で頭痛口腔顔面神経疾患外来がある場合は、総合的な治療も可能なため受診をおすすめします。
どのように診断されますか?
問診で痛みの状況を聞き、痛みのある場所や状態で三叉神経痛と診断される場合が多いです。例えば口元・眉の付け根・小鼻など神経が通る所を触ることで痛みを生じ、その痛みはピリピリと電気が走るような激しい痛みの場合などが診断の目安です。原因である三叉神経の圧迫や、腫瘍などがないかを確認するために頭部MRI検査などが行われます。また他の病気で痛みが出ていることも考えられるため、血液検査などが行われ診断される場合もあります。
治療方法を教えてください。
三叉神経痛と診断された場合、主に次のような治療方法によって治療が行われます。薬物療法
手術
神経ブロック治療
ガンマナイフ治療
薬物療法では抗てんかん薬のカルバマゼピンが有効とされていますが、抗うつ薬やプレガバリンなどが用いられることもあります。
ただし抗うつ薬は一部のものにのみ効果があるといわれています。薬物療法では長く服用することで副作用が出ることもあり使用する薬物が変更されることも多いのです。直接痛みの原因となる血管の圧迫を無くすために手術を行うこともあります。
神経ブロック治療では、神経を麻酔で麻痺させたり破壊したりする治療が行われます。神経ブロック治療は痛みの軽減は期待できますが、効果がいつまでも続かないことや、しびれが残るなどの症状が出ることもあるでしょう。ただ神経ブロックを何度かくりかえし行うことで、痛みがかなり軽減するという効果はあります。
ガンマナイフ治療は放射線を照射することで痛みを取る治療方法ですが、効果が出にくいこともあり他の治療が難しい時に行われることが多いです。
手術が必要なケースもあるのですか?
薬が身体に合わない人や神経ブロック治療でも効果が現れない場合には手術を行います。手術は神経を圧迫している血管を避けるために行われるのです。手術内容は全身麻酔で行われ神経を圧迫している血管を移動させます。5時間前後で終了し、入院が必要ですが、術後早くに痛みは無くなり手術により症状は解消されることが多いです。ただごくまれに痛みが軽減されないこともあり、術後の経過観察によっては再手術が必要となることもあります。
合併症なども考えられ100%安全というわけではありませんが、それでも原因を取り除くことでいち早い効果が現れるのが手術のメリットです。
三叉神経痛の予後や予防
三叉神経痛の予後について教えてください。
三叉神経痛では薬物療法・手術・神経ブロック・ガンマナイフなどの治療方法がありますが、予後には注意点もあります。薬物療法では長く服用することで副作用が出る薬があります。薬の服用で気になる症状が出た場合は早めに医師に相談しましょう。手術の場合比較的成功率も高く術後早期に痛みも無くなります。ただまれに再手術が必要となるので注意が必要です。手術の合併症としてはめまいや頭痛の他運動障害などが、まれに考えられます。
予後は比較的早く通常の生活に戻れますが、その後経過観察や長期間にわたって再発がないかなどの診察が必要となる場合もあります。予防の意味もあるので診察を受けるようにしてください。
三叉神経痛を予防する方法はあるのですか?
三叉神経痛を予防する方法というのはまだわかっていません。ただ顔の神経の通り道を強く触る・強く歯磨きを行う・歯を食いしばるなどをしないことは誘発を防ぎ、発症の予防につながることはあるでしょう。血管が硬くなることを防ぐためにバランスの良い食生活を送ることや適度な運動で予防できる可能性はあります。動脈硬化を防ぐための生活習慣が三叉神経痛の予防につながる可能性もあるのです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
三叉神経は顔面の知覚を脳に伝えるための神経です。その伝達が上手く行かないことで起こる痛みが三叉神経痛です。三叉神経痛は激しい痛みが特徴なので、辛い思いをしている人は多いでしょう。ただ三叉神経痛は適切な治療を行うことで痛みの軽減や解消が充分に期待できる病気でもあります。長年顔面の痛みで悩んでいる人は総合病院の頭痛口腔顔面神経疾患外来や脳神経外科を受診して医師の診断を仰いでください。
編集部まとめ
三叉神経痛は突然顔の片側にするどい痛みを感じ、その痛みを何度も繰り返すことが特徴の病気です。
そのために通常の日常生活にも支障をきたす場合があり、ストレスのためにうつ病などを発症する人もいる辛い病気といえるでしょう。
原因などメカニズムはいまだはっきりしていませんが、三叉神経を血管が圧迫することで伝達が上手くいかず発症するのではと考えられています。
ただ適切な治療を行うことで痛みを軽減し、心身ともに健康を取り戻すことは可能な病気でもあるのです。
痛みを放置することで心身に影響を与える場合も多く、少しでも早い治療が大切になります。
顔に強い痛みを感じたなら三叉神経痛を疑い脳神経外科・神経内科・総合病院の顔面神経疾患外来などを受診することをおすすめします。
参考文献
三叉神経痛(東邦大学医療センター)