ウクライナ人学生を「難民貴族」と切り捨てた日本語学校理事長に賛否…ナザレンコ氏は「差別以前の問題」と批判
記者会見するウクライナ避難学生のルニン・ウラディスラフさん 写真・共同通信
ウクライナ避難民の学生と、彼らを受け入れている前橋市の日本語学校「ニッポンアカデミー」が学費をめぐって対立している問題で、学生の1人であるルニン・ヴラディスラヴさんが2月27日、群馬県庁で会見を開いた。
学生らは、当初、無償とされていた期間中の学費支払いを求められており、ルニンさんは約束を果たすよう学校側に求めた。
報道によると、同校は2022年5月以降、身元保証人としてウクライナ人の学生38人を受け入れ、一定期間は学費が無料だと説明していたが、9月になって「学費を請求する」と通告してきたという。
ルニンさんの会見に先立って、24日、同学校の清水澄理事長が会見を開き、学生側と学費に関する契約はしていないとし、学費を無償とするのは「自立できるまでの期間」と伝えるつもりだったと主張。また、「家賃はタダ、税金もタダ、渡航費もタダ」の学生らを「難民貴族だ」と批判した。
理事長の発言に対し、ルニンさんは「その言葉は侮辱のために使われた」と述べた。また、学費を払わなければ、「アパートから追い出す」「スマホを取り上げる」と言われたことも認めた。
「ニッポンアカデミー側は、実際に3カ月は学費を無償にしており、アルバイトで自立できたなら、学費を徴収するという立場です。学生側は6カ月、人によっては1年程度は無料だと思っていたため、トラブルになっているのです。ただ、NHKによると、トラブルになっているのは16人のようで、残りの22人は納得していると思われます。
実は、ウクライナ避難民には、渡航費・生活費・住環境整備費の支援がおこなわれており、たとえば日本財団では渡航費の実費(上限30万円)に加え、生活費1名につき年100万円(1家族あたり上限300万円)、住環境整備費1戸につき50万円が与えられています。ただし、申請するのは身元保証人ですから、ニッポンアカデミーとの対立は学生にとって避けたいところでしょう。
一方、前橋市は2022年4月、個人で避難してきたウクライナ人に学費30万円の支援を表明しましたが、その後、上限10万円に切り下げています。学校側は、約束を守らない市への批判も強めています」(週刊誌記者)
一連の報道を受け、Twitterでは理事長に対して賛否両論の声が集まっている。否定的な意見としては、
《学校が保証人になっただけで何か勘違いしてないか?無料の住居は自治体が行っていることだしスマホは通信事業者。学校は1人につき10万円を国から貰っている。全く不合理な言いがかりだ!》
《ウクライナの難民を無償で受け入れておいて(メールには無償の記載、契約書等を交していない)急に金クレって何なの??》
などだ。一方、肯定的な意見としては、
《ウクライナ人学生側の考えは分かるけど、それは払うもん払って残った金でお好きにどうぞだと思うんだよね アレもコレも優遇は勘違いを生むだけかね》
などがある。
19歳から日本に住んでいるウクライナ人の政治評論家、ナザレンコ・アンドリー氏は、学校に批判的な立場で「差別や難民問題以前の話」と語る。
「マスコミはヘイトとかいろいろ言っていますが、私からしたらそれよりもずっと単純な話です。学長ははっきりと『半年は学費無料』と言って、学生はそれを聞いて入ってきたわけなので、その後、どんな理屈をつけようと約束がなかったことにはならないし、もし最初からその無料期間がもっと短かったら、学生たちは違う学校を選んだかもしれません。完全に学校側が悪いと私は考えています。
それは別にウクライナ人に限らず、日本人だって、たとえばある私立学校から『非課税の家庭の子供30人を半年間、学費無料で受け入れます』と勧誘されて入学し、3カ月後に『あなたバイトできそうだから、ちょっと25万円請求しますね』と言われれば、誰でも怒る。それはもう詐欺まがいの商法だと思います。
あと、彼らがアルバイトを始めたからといって、すぐに自立というのもおかしい。日本人の学生も同様、勉強をしながらアルバイトをすれば、月14万円とか、多くても17万円ぐらいしか稼げないと思うんです。
それなのに、学校側は25万も請求してきたわけなので、つまり学校のために2カ月は無料で働けって言っているに等しいですよ。学長の言う自立の定義は、無茶苦茶だと思いますね」
避難民への “優遇批判” も的外れだという。
「たしかに避難民に対してはいろいろな優遇がありますが、それは別に避難民が決めたものでは
なくて、日本政府が決めたものです。しかも、それを学校によこせっていうのもすごい話ですよね。
『難民貴族』については、明らかに理事長は自分の過ちを隠すために炎上するようなことを言って、みんなの関心を違う方向に反らそうとしているんだと思います。
仮にウクライナ人に対してそういう差別的な見方をしているのであれば、そもそもなぜ彼らを受け入れたのか不思議に思います。だからなおさら、立場の弱い人間を使って稼ごうとしてるんじゃないかという疑いが強まりますね」
報道によると、前橋市は、清水理事長の言い分を受け入れず、県と連携して引き続き学生支援をおこなっていく方針だという。また、学生らは先生たちは信頼しており、あくまで理事長とのあいだにだけ「摩擦」があるとしている。はたして、理事長はどのような結論を下すのか――。