昨年発表された日銀の金融政策緩和方針を受け、2023年1月に長期金利は大幅上昇しました。対して、【フラット35】の1月金利は小幅な上昇となりましたが、今月はどうなっているのでしょうか。2023年2月の【フラット35】金利動向を見ていきたいと思います。

2023年2月の【フラット35】金利

今月の全期間固定金利型住宅ローン ARUHI フラット35の金利は融資率9割以下・返済期間21~35年、機構団信加入で1.88%となり前月から0.20ポイント引き上げに。融資比率9割以下・返済期間15~20年の金利は1.72%と、こちらも0.20ポイント引き上げとなりました。融資比率9割以下・返済期間36~50年の金利は前月の2.40%から0.02ポイント引き上がり、2.42%となりました。

ARUHI 住宅ローンの実行金利一覧

建設費または購入価額(以下、物件価格)の1割~5割の頭金があれば、従来のARUHI フラット35よりさらに低金利で利用できる、ARUHI スーパーフラットの各種商品の金利は以下の通りです。

物件価格の5割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット5」(※団信込み。全疾病別途)は1.77%。

物件価格の4割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット6」(※団信込み)は1.78%。

物件価格の3.5割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット6.5」(※団信込み)は1.79%。

物件価格の3割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット7」(※団信込み)は1.79%。

物件価額の2.5割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット7.5」(※団信込み)は1.80%。

物件価格の2割以上の頭金があれば利用できる「ARUHI スーパーフラット8」(※団信込み)は1.80%。

物件価格の1.5割以上の頭金があり、年収に対する年間返済額「返済負担率」が20%以内であれば利用できる「ARUHI スーパーフラット8.5」(※団信込み)は1.87%となっています。

物件価格の1割以上の頭金があり、年収に対する年間返済額「返済負担率」が20%以内であれば利用できる「ARUHI スーパーフラット9」(※団信込み)は1.87%となっています。

最新の住宅ローン金利はこちら→【ARUHI フラット35】

まとめ

最後に今月の金利変動について、不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんにまとめていただきます。

2023年2月の【フラット35】金利は民間の1ヶ月遅れで大幅上昇

昨年12月に日銀が金融緩和政策を修正し、長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%に拡大すると、2023年1月から長期金利は急上昇しました。

1月17日・18日に開催された金融政策決定会合では、緩和政策の継続が決定されました。黒田総裁は金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨であり、金融緩和を続けるとしています。ここ最近、【フラット35】などの金利は長期金利とは乖離して上昇を続けており、長期金利が金利の指標として機能しなくなってきていました。日銀が長期金利の変動許容幅を0.5%にまで拡大させた背景には、これを正常化させようとする思惑があると見ています。

この正常化への動きが、市場には利上げ時期が近いと受け止められているようです。まず12月から1月にかけて、住宅ローンでは固定タイプの金利が上昇し、2023年1月から2月にかけては【フラット35】金利も0.20ポイントの上昇となりました。

 

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組みによると、住宅金融支援機構が機関投資家に機構債を販売して資金調達し住宅ローンを貸すという基本スキームとなっています。つまり機構債の表面利率はいわば資金の仕入値にあたり、【フラット35】の金利が売値にあたると考えてみれば理解しやすいと思います。

12月と1月を比較すると、長期金利は0.18ポイント上昇し、機構債の表面利率はそれ以上の0.26ポイント上昇しています。機構債が資金の仕入手段であることを鑑みれば最悪0.26ポイント上昇しても不思議ではなかったのですが、【フラット35】の金利上昇は0.03ポイントに抑えられました。これは住宅金融支援機構が政府に代わって公共的な事業を行うために設立された法人であり、国民の円滑な住宅金融を設立目的とするためです。急激な金利上昇局面では、利用者が困ってしまわないように住宅ローンの金利上昇幅を緩やかにして、吸収する対応を行うのです。

しかし1月から2月にかけては、長期金利は下がっており、機構債の表面利率も下がっているのに、【フラット35】の金利は0.20ポイントもの大きな上昇となっています。これは、これまでの住宅金融支援機構による金利の決定方針とは異なり、政策的な意図があるものと考えられます。2023年1月までは平均的な民間住宅ローンの35年固定金利の水準に対して【フラット35】の金利は少し低めだったのですが、今回0.20ポイント上昇したことによって、1月の民間住宅ローンの平均的な35年固定金利の水準と同じくらいとなりました。

ただし、2022年10月から【フラット35】の金利引き下げ制度が多く新設されており、多数となった【フラット35】金利引き下げ制度の併用を行いやすくなっています。最長10年にわたり最大0.5%の引き下げとなるので、0.2%の金利上昇を加味しても、当初10年(5年)の引き下げ効果のほうが大きい状態は続いています。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み
住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入しますので、機構債の表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があります。

フラット35の仕組み

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