胃カメラは「鼻から? 口から?」 医師が違いを解説 検査中の痛みやえずきは鎮静剤を使えば解決?

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胃カメラ検査における、「経口」と「経鼻」の違いや、検査中の痛みやえずきについてなどを、内科・消化器内科医の伴野繁雄先生(中目黒アトラスクリニック)にMedical DOC編集部が詳しく聞きました。

鼻からの胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、口からの胃カメラと管の太さが違うって本当?

編集部

「胃カメラ」の検査について教えてください。

伴野先生

「胃カメラ」というのは通称で、正式には「上部消化管内視鏡検査」という名前の検査になります。文字通り「上部消化管」を「内視鏡」で観察し、異常がないかを見るものです。

編集部

「上部消化管」とは具体的にどのあたりを言うのですか?

伴野先生

「胃カメラ」と呼ぶものの、この検査で観察する「上部消化管」は胃だけではなく、食道や十二指腸もさしています。医療用語としての「上部消化管」は胃、食道、十二指腸を指しますが、胃カメラは食道から十二指腸の一部までを観察します。

編集部

検査時間はどのくらいで、どんな病気がわかるのですか?

伴野先生

検査時間は5分程度で、食道炎や胃炎などの炎症症状、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの潰瘍のほか、ポリープやがんなどを見つけることができます。

編集部

「鼻から」と「口から」では、管の太さが違うのでしょうか?

伴野先生

はい、異なります。通常経口で使われる内視鏡は、直径9~10mm前後なのに対して、経鼻での内視鏡の直径は約6mmですので、「鼻から」の方が細いものを用います。

胃カメラを「鼻から」と「口から」入れる場合で検査精度に違いはある? 痛さ・楽な受け方はどっち?

編集部

「鼻から」と「口から」で、病気発見の精度が変わることはありますか?

伴野先生

経鼻での内視鏡は、コンパクト性に重きを置いているため、経口内視鏡に比べて若干画質が落ちると言われています。しかし、ここ数年での技術の進歩は著しく、最近の経鼻内視鏡は非常に高画質になってきています。あとは、咽頭・喉頭(のど)ついては、経鼻のほうが観察しやすいですね。

編集部

「鼻から」と「口から」、どちらが楽ですか?

伴野先生

内視鏡が細いので、基本的には経鼻の方が苦痛は少ないと言えるでしょう。しかし、鼻炎がある場合など、経口を好む患者さんもいらっしゃいますので、向き不向きがあるかもしれません。「歯磨きでえずいてしまいやすいかどうか」というのが、経口内視鏡の向き不向きを判断する目安として良いと思います。歯ブラシが奥の方に当たっただけでえずいてしまうという方は、口からよりも鼻からの方が向いているでしょう。

編集部

楽に検査が受けられるコツはありますか?

伴野先生

経口の場合は、鎮静剤を使う方法があります。検査の苦痛はほぼ感じませんが、検査後30分程度の安静にしなければいけない時間が必要です。

胃カメラを「鼻から・口から」入れる場合のメリットとデメリット、検査費用を医師が解説

編集部

経鼻内視鏡検査のメリット・デメリットは?

伴野先生

メリットは、先ほども述べた通り、苦痛が少ないことです。経口から内視鏡を挿入した場合、喉の奥に内視鏡が触れてしまうことで、咽頭反射(えずき・嘔吐感)が引き起こされます。これを回避できるのが経鼻内視鏡検査の大きなメリットです。また、検査中にも医師とのコミュニケーションがとれるのも安心と感じる人もいます。一方で、鼻の粘膜はどうしても傷つきやすくなるため、場合によっては鼻出血なども起こりますが、検査前に鼻の血管に「血管収縮剤」を塗布するので、出血してしまったとしても比較的すぐに止まります。

編集部

では、経口内視鏡検査のメリット・デメリットは?

伴野先生

こちらも先ほどの繰り返しになりますが、画質が良く、比較的異常を発見しやすいということです。デメリットは嘔吐反射の強い方の場合、苦痛を伴うこと、鎮静剤を用いた場合は検査後のリカバリーの時間が必要で、車での来院を控えていただく場合が多いことなどです。咽頭・喉頭ついては、経鼻のほうが観察しやすいので、「飲み込みにくい」など、のどの異常や違和感などで検査をする方には、こちらから経鼻での検査をお願いすることもあります。

編集部

検査費用はどのくらいですか? 経口と経鼻で費用は変わりますか?

伴野先生

明らかな症状があって、保険が適用される場合などは3割負担の方で5000円前後、経口内視鏡の際に鎮静剤を使うと、そこに400円程度加算されます。また、人間ドックや健診の場合は保険ではなく自己負担となりますので医療機関によって異なります。大体1~2万円程度が目安だと思いますが、詳しくは近くの医療機関にお問い合わせしてみてください。

編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。

伴野先生

病気の早期発見のためには、検査が必要不可欠です。早期に発見することができれば、開腹術、いわゆる「お腹を切る」手術ではなく、内視鏡で処置できる病気がたくさんあります。「検査が大事なのはわかっているけれど、やはり苦しそうで怖い」という意見もよく耳にしますが、痛みやえずきが心配な方は、ぜひ医師に相談してください。苦痛や恐怖感に対しては鎮静剤などさまざまな対処法があるので、「苦痛を我慢するのが当然」と思わないでください。医師としては、無理に我慢して検査し「もう2度と受けない」となってしまうのが一番怖いので、恐怖感や苦手意識をなくし、必要な時、すぐに検査を受けられるようにこちらもできる限りの対応をさせていただきます。

編集部まとめ

上部消化管内視鏡検査について、「口から」と「鼻から」の違いや、楽に検査が受けられるコツなどについて話を聞きました。「カメラ」という言葉から、それなりのサイズ感をイメージする人もいるかもしれませんが、特に経鼻の場合は直径約6mmと、とてもコンパクトなことに驚かされます。また、苦痛を軽減するための工夫もたくさんあるようなので、怖さを我慢せず、不安がある場合はまずは医師に相談して欲しいとのことでした。

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