認知症のリスクを90%も減らす「6つの健康的な生活習慣」とは?
高齢になると記憶力が低下してしまい、日常生活のさまざまな場面で支障が出てしまいます。中国の研究チームが、高齢者を10年にわたって追跡したデータから、「健康につながる6つの生活習慣」をできるだけ多く取り入れることで加齢に伴う記憶力の低下が遅くなり、認知症リスクを減らすことができると報告しました。
Association between healthy lifestyle and memory decline in older adults: 10 year, population based, prospective cohort study | The BMJ
Six lifestyle choices to slow memory decline named in 10-year study | Memory | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2023/jan/25/six-lifestyle-choices-to-slow-memory-decline-named-in-10-year-study
何かを忘れずに記憶しておくことは日常生活の基本的な機能ですが、加齢と共に記憶力は低下してしまい、生活の質に悪影響を及ぼすほか、認知症リスクの上昇にもつながります。そこで、中国・国立神経障害研究センターの研究チームは、中国に住んでいる60歳以上の成人2万9000人以上を追跡した「China Cognition and Aging Study(中国認知・加齢研究)」のデータを分析し、健康的なライフスタイルと記憶力低下の関連について調査しました。
中国認知・加齢研究では、2009年のベースライン時点で正常な認知能力を持っていた60歳以上の成人を対象として、2019年までの10年間にわたり記憶力の低下やライフスタイルについて、定期的な調査が行われました。また、研究開始時にはアルツハイマー病の危険因子であるAPOE遺伝子のチェックも実施されたとのこと。
研究チームは、「健康的な食事」「定期的な運動」「活発な社会的接触」「定期的な認知活動」「非喫煙者であること」「お酒を飲まないこと」という6つの健康的なライフスタイルに基づき、被験者がこのうちいくつを実践していたのかを評価しました。ライフスタイルの評価基準については以下の通り。
・健康的な食事:1日に果物・野菜・魚・肉・乳製品・塩・油・卵・穀物・豆類・ナッツ類・お茶のうち、7品目以上を摂取しているかどうか。
・定期的な運動:週に中程度の運動を150分以上か、激しい活動を75分以上しているかどうか。
・活発な社会的接触:会議やパーティーに出席したり、友人や親戚と会ったり、旅行したり、オンラインでチャットしたりといった社会的活動に週2回以上参加しているかどうか。
・定期的な認知活動:文章を書いたり、読書をしたり、トランプや麻雀(マージャン)、その他ゲームをしたりといった認知的活動に週2回以上従事しているかどうか。
・非喫煙者であること:生涯に100本以下のタバコしか吸ったことがないか、3年以上前に喫煙をやめているかどうか。
・お酒を飲まないこと:ほとんどお酒を飲まないか、飲んだとしても頻度が少ないかどうか。
上記の基準に基づき、研究チームは4〜6項目当てはまる被験者を「健康的に好ましいライフスタイル」、2〜3項目当てはまる被験者を「平均的なライフスタイル」、0〜1項目しか当てはまらない被験者を「健康的に好ましくないライフスタイル」に分類しました。そして、APOE遺伝子の検査結果に基づいてアルツハイマー病の危険因子の保持者かどうかも考慮し、記憶力の低下とこれらの健康的なライフスタイルの関連を分析しました。
分析の結果、それぞれの健康的なライフスタイルはいずれも、10年間における記憶力低下スピードが遅いことと関連していることが判明。特に「健康的な食事」が最も記憶力低下を遅らせる効果が強く、次に「定期的な認知活動」、そして「定期的な運動」が続きました。
全体として、4〜6項目を実践する「健康的に好ましいライフスタイル」を持っている被験者は、ほとんど実践していない「健康的に好ましくないライフスタイル」を持つ被験者と比較して、認知症または軽度認知障害を発症する可能性が90%も低くなりました。また、2〜3項目を実践する「平均的なライフスタイル」の被験者も、「健康的に好ましくないライフスタイル」の被験者と比較して認知症または軽度認知障害のリスクが30%低くなったと報告されています。
さらに、APOE遺伝子の検査でアルツハイマー病のリスクが高いとされた被験者も、健康的なライフスタイルを実践している数が多いほど記憶力の低下が緩やかだったとのことです。
イギリスのアルツハイマー病研究団体・Alzheimer's Research UKの政策責任者であるスーザン・ミッチェル博士は、「これは、長期間にわたって人々を追跡調査したよく実施された研究であり、健康的なライフスタイルが高齢者の記憶力と思考力のサポートに役立つという実質的な証拠を追加するものです」「認知症になる可能性を減らすため、私たちにできることがあると知っている人は非常に少ないのです」と述べました。