「ハウスダスト」が原因で発症する病気はご存知ですか?医師が監修!
ハウスダストはさまざまな病気の原因になるといわれています。ハウスダストはどの家庭にも存在しているのです。
では、ハウスダストとはどのようなものかを説明できますか?
ここではあらためてハウスダストとはどのようなものかを考えてみます。さらにハウスダストが原因となる病気・治療法・予防法などを紹介しましょう。
ハウスダストの影響と病気
そもそもハウスダストとは何ですか?
「ハウスダスト」という言葉をよく耳にしたことはありませんか?ハウスダストは簡単に言えば「家の中にある埃や塵のこと」です。日常的に室内で目にする埃の中には動物のフケ・アカ・ダニのほかにカビ・花粉などさまざまな物質が含まれています。このほか布団・衣服・クッションなどから出る繊維くずや気が付かない間に室内で細かく砕かれたプラスチックが含まれることもあるでしょう。
これらの複数の物質によって構成されているとても小さな埃や塵のことを専門的に表現した言葉が「ハウスダスト」なのです。
ハウスダストが発生する原因を教えてください。
ハウスダストは私たちが室内で生活する限り、必ず発生しています。人やペットが生きていくうえでフケ・アカ・抜け毛などが室内に落ちてしまっています。これらの物質に布団・衣類などから出る細かな繊維などが一緒になってハウスダストになるといえるでしょう。ハウスダストの中のアカ・フケなどと細かい繊維などの物質の割合はほとんど同じという研究結果があります。また、室内で発生する埃などのほかに、花粉などのように外界から持ち込まれることもあるでしょう。ハウスダストが発生する原因は、私たちの日常生活であるといえます。
ハウスダストが多い場所の特徴とはどんなものですか?
ハウスダストは室内のどこにでも発生する可能性があります。とくに家具と家具の間など狭く見えにくい場所・照明器具の上・観葉植物などの掃除がしにくい場所に発生しやすく溜まりやすいといえるでしょう。
ハウスダストが原因で起こる病気は何ですか?
ハウスダストが原因で起こる病気は、一般的にはアレルギー疾患です。おもな病名は、アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・アレルギー性喘息・アトピー性皮膚炎などが考えられるでしょう。
ハウスダストの影響を受けやすい人の特徴を教えてください。
ハウスダストは一年中、室内に存在し空気中に漂っています。そのため室内にいる人は誰でもハウスダストが原因のアレルギー疾患にかかる可能性があります。とくに床面に近いほどハウスダストの影響を受けやすいといえるでしょう。そのためハイハイする時期の赤ちゃんや身長の低い子どもはハウスダストの影響を受けやすいといえます。
また、現代ではハウスダストの影響を受けやすい人が多くなっています。理由のひとつが衛生的な問題であるという研究結果が報告されていることを知っていますか?
アレルギー疾患は体における免疫の暴走が原因といわれています。じつは、B細胞に抗体をつくることを命令するT細胞にはTh1細胞とTh2細胞があります。正常な免疫を持つためにはこのふたつの細胞のバランスがとても大切といえるでしょう。とくにTh2細胞が多くなりすぎるとアレルギー疾患を起こしやすいといわれています。
このふたつの細胞の割合はほぼ3歳までに決定されるといえるでしょう。そのため3歳くらいまでに過度に衛生的な環境に育った子どもはアレルギー疾患にかかりやすいといわれています。事実、子どもの頃にペットや多くの兄弟などと一緒に過ごした経験のある子どもは、大人になってからもアレルギー疾患を発症しにくいという疫学的な報告があります。
ハウスダストによる病気の診断と治療
ハウスダストが原因の病気はどの診療科に相談すべきですか?
一般的にアレルギー疾患の症状は、くしゃみ・鼻水・咳・鼻づまり・皮膚のかゆみや炎症・呼吸困難などがあります。いずれの症状も風邪の症状に似ているため、これらの症状がみられるときは最初にかかりつけの医師の診察を受けましょう。
処方された薬や治療で効果がみられないときやアレルギー専門の治療が必要と判断されたときは専門医を紹介してくれます。
基本的な治療方法を教えてください。
ハウスダストによるアレルギーの基本的な治療は、一般的なアレルギー治療と同様にそれぞれの症状に合わせた対処療法となるでしょう。治療法には、くしゃみや鼻水・咳などの症状を緩和するための「症状に対する治療」と皮膚の炎症などを抑えるための「炎症に対する治療」のふたつがあります。
症状を緩和するための治療ではくしゃみや鼻水・皮膚のかゆみなどには抗ヒスタミン薬が使用されるでしょう。また、咳などの症状を抑えるために気管支拡張剤などを使用します。
炎症に対する治療では、おもにステロイド(副腎皮質ホルモンを使用したもの)が処方されることが多いといえるでしょう。ただ長期間の使用では副作用が考えられるため、鼻や皮膚など使用する部位を制限できるように工夫された薬が使用されています。
季節によって行う治療を変えることがあると聞きましたが。
アレルギーには通年性アレルギーと季節性アレルギーがあります。ハウスダストによるアレルギーは、アレルゲンとなるハウスダストが一年中存在しているため季節に関係なく発症します。ハウスダストによるアレルギーは、通年性アレルギーなので季節によって治療法が大きく変化することはないといえるでしょう。
免疫療法とはどんな治療方法ですか?
それぞれの症状に応じた治療方法では効果があまりみられない場合や薬による治療で副作用がある場合には免疫療法が行われることがあります。免疫療法とは、ダニや花粉などのアレルゲンを少量ずつ体内に取り入れることでアレルギー反応を少なくする方法といえるでしょう。日本で行われている免疫療法(減感作療法)は、注射製剤と舌下製剤によるものです。根治が困難といわれるアレルギー疾患において唯一根治する可能性がある治療方法といえるでしょう。ただ、体内に少しずつアレルゲンを入れていくため治療期間は少なくとも3年から5年必要となります。
アレルゲンとなる物質を直接体内に取り入れるため、特に初回はアレルギー反応をきたす場合もあり、専門医による適切な治療が重要といえるでしょう。免疫治療(減感作療法)を受けるときは、根気よく医師の指示に従って治療を行うことが大切です。
ハウスダストの予防や対策
ハウスダストは完全に除去できるでしょうか?
ハウスダストは私たちが生活している以上毎日発生しているといえるでしょう。そのためハウスダストを完全に除去することはできないといえます。また、完全にハウスダストが除去されてしまうとハウスダストに対する免疫が失われてしまいアレルギーが発生する確率が高くなる可能性があるといえるでしょう。
住まいのハウスダストを減らす対策を教えてください。
ハウスダストは完全に除去することはできません。ただハウスダストを減らすことはできます。ハウスダストを減らすためには、まずこまめに掃除をすることが大切といえるでしょう。掃除の基本は「上から下」です。テレビの上やテーブル上にあるほこりを払い、その後掃除機などで床を掃除しましょう。掃除機は押すときより引くときに吸引力が強くなります。掃除機をかけるときは引くときにダストが吸引されるように注意しましょう。掃除は朝一番におこなうと効果的といわれています。
また空気清浄機は、完全にハウスダストを除去できなくても人の体内に吸入する物質を減少させてくれるでしょう。
寝具や衣類などの繊維製品もハウスダストが発生する原因となります。衣類やタオル類はこまめに洗濯し、寝具は天日干しや布団乾燥機で湿気が溜まらないようにしましょう。寝具を乾燥させた後に掃除機をかけるとダニなどの死骸を取り除くことができます。
またマンションなど最近の日本の家は昔と比較するととても気密性が高くなっているといえるでしょう。そのためハウスダストが発生しやすくなっているともいえます。
気密性の高い住宅では、除湿器や空気清浄機・エアコンを上手に使いましょう。エアコンは、フィルターの掃除を怠るとカビなどが増殖しやすくなってしまいます。エアコンのフィルターはこまめに掃除しましょう。
ハウスダストの影響を受けづらくする方法はありますか?
ハウスダストの影響を受けづらくする方法は、やはりハウスダストを極力吸い込まないようにすることです。そのためにはハウスダストができるだけ発生しないように工夫することが大切といえるでしょう。エアコンのフィルターをこまめに掃除する・家具は掃除しやすいように壁から少し離しておきます。床はフローリングでカーペットなどは置かない方がいいでしょう。
またペットの飼育や観葉植物を室内に置くことはおすすめできません。寝具や衣類はできるだけ水洗いが可能なものを使いましょう。
ハウスダストの影響を受けづらくするためにはハウスダストが発生しにくい室内環境を保つことが重要といえるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ハウスダストは日常生活の中から完全に除去することはできません。ただ日常生活の中でハウスダストが発生しないように気を配るだけでハウスダストを減少することができます。「塵も積もれば」という言葉の通り、毎日掃除をする家と1週間に1回しか掃除しない家とでは明らかにハウスダストの発生量が違うと考えられるでしょう。ハウスダストは日本の住居の気密性が高くなったことでとても発生しやすくなっています。ハウスダストによるアレルギー疾患にならないように適切な方法で掃除をする・埃を貯めないような家具の配置を考えるだけでもハウスダストは減少するでしょう。
室内環境を整えることはハウスダストによるアレルギー疾患の発症を抑制することができるひとつの方法です。とくにハウスダストが多い床面に近くハウスダストの影響を受けやすい赤ちゃんや小さい子どもがいる家庭では注意が必要といえます。
編集部まとめ
ハウスダストはどの家庭にも存在する埃や塵のことです。ハウスダストは家の中の目立たない場所にとくに多く見られます。
また日本の住居の気密性が向上したことによりハウスダストによるアレルギーで悩む人が増加してきたといえます。
しかし、ハウスダストは室内から完全に除去することはできません。
ハウスダストが発生しないように工夫することでその影響を少なくすることができるといえるでしょう。
毎日の生活の中で何気なく行ってきた掃除や洗濯などを見直すだけでハウスダストを減少させることができます。
参考文献
アレルギー対策 室内環境の整備(日本アレルギー学会・厚生労働省)