「疼痛」の痛みの特徴・原因はご存知ですか?医師が監修!

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疼痛とは怪我や病気で感じる痛みや辛さのことをいいます。言葉に表すことのできない痛みや感覚もあるでしょう。

そのために周りの人に痛みや辛さが伝わりにくく、より辛い思いをされる方も多いのです。
今回は特に神経障害性疼痛について解説していきます。治療法や痛みに対する対処法も紹介しています。

誰にもわかってもらえないと、痛みや辛さで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

疼痛の種類や主な原因

疼痛とはどんな痛みのことですか?

疼痛とは痛みやそれにともなう嫌な気持ちをいいます。
痛みの定義は広く国際疼痛学会では「実質的あるいは潜在的な組織損傷に起因する、派生する不快な感覚的および情動的経験」とされています。実質的に言葉で言い表せる痛み(ズキズキする・ヒリヒリする・チクチクするなど)だけでなく、不快に感じる症状も疼痛といえるのです。
例えば足が異常にだるい・腕がしびれるなど患者にとって不快な症状も疼痛と呼ばれます。

疼痛にはどんな種類がありますか?

疼痛には2つの種類があります。1つ目は急性疼痛(急性痛)で実際に怪我や病気によって起きる痛みです。急性疼痛は痛みを脳が感知することで患部を安静に保ち治癒を高める力を呼び起こすための警告反応の意味を持つ痛みでもあります。
2つ目の疼痛は慢性疼痛(慢性痛)といわれるもので、原因となる怪我や病気が完治した後も痛みのような不快感が残ってしまう場合の感覚をいいます。
さらに慢性疼痛には次のような種類があり、怪我や病気は治っているはずなのに新たな悩みとなってしまうのです。

一次性慢性疼痛

がん性慢性疼痛

外傷後慢性疼痛

慢性神経障害性疼痛

慢性内臓痛

このようにさまざまな慢性疼痛がありますが、分かりやすく大きく分けると次の3つの痛みに分類されます。

刺激の痛み

神経の痛み

心因性の痛み

そしてこの3つが慢性疼痛の原因となり痛みを感じると考えられます。

疼痛の原因はなんですか?

疼痛の原因としては外側から傷を負ったことが原因の侵害受容性疼痛・神経の異常が原因で感じる神経障害性疼痛・心因的原因を持つ疼痛とあります。
急性疼痛は怪我をしたことや病気などの一時的な痛みをいい、脳が正常に痛みを感知することで「痛い」という感覚が生まれるのです。
慢性疼痛は痛みの原因は取り除けているはずなのに、3ヶ月以上たっても痛みや不快な感じが続く場合をいいます。その原因は痛みの情報が大脳にある感情に関わっている部分にも伝わってしまうことにあります。
このような慢性疼痛を代表するものの1つが神経障害性疼痛です。次の項目では神経障害性疼痛について解説します。

神経障害性疼痛の特徴を教えてください。

慢性疼痛で重症といわれる症状に神経障害性疼痛があります。神経障害性疼痛の特徴は、触れただけで電気が走るようなしびれや痛みを感じることです。そして神経障害性疼痛が痛覚過敏の症状をきたすことも多いのです。
この痛みは神経の異常な活動から来るもので、実際には痛いと感じない場合にも痛みを感じてしまいます。原因は中枢神経や抹消神経が切断されたり圧迫されたりして起こる異常な状態です。それが長く続くために不安な気持ちに襲われてしまい、ますます痛みに敏感になってしまうのです。
このような神経障害性疼痛の代表的なものには、帯状疱疹後神経痛・糖尿病性神経障害・三叉神経痛などがあります。

疼痛の治療法

疼痛は放っておいてもよいですか?

疼痛といっても急性疼痛と慢性疼痛があるとお伝えしましたが、急性疼痛の場合はまず原因となる怪我や病気の治療が必要です。痛みによるサインで安静を保ち傷や病気を治すための免疫反応を呼び起こさせるなどの作用もあり、治療すれば短期間で改善される痛みです。
慢性疼痛の場合は傷が治っても長引く痛みのため、我慢してしまうことが多いのではないでしょうか。我慢することが大きなストレスとなってしまうことも少なくありません。ストレスを溜め続けると脳の機能が低下することがあり、かえって痛みを感じやすくなる場合もあるのです。
疼痛は我慢せずに受診して治療を受けることをおすすめします。

疼痛がある場合は何科を受診すべきですか?

疼痛の場合、その痛む箇所によって受診する科が違ってきます。骨や筋肉の痛みなら整形外科、頭痛が続く場合には脳神経外科や神経内科への受診が必要です。
神経障害性疼痛の場合、例えば帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害は皮膚科・神経内科・かかりつけ医への受診がよいでしょう。詳しい検査の結果、疾患が見つかれば治療のために適切な病院を紹介される場合もあります。
特定の怪我や病気は無いのに不快な痛みが長く続く場合には、大学病院や大規模病院の麻酔科ペインクリニック診療部門を受診することで客観的に痛みと向き合うことができる場合もあります。
痛みで不安な日々を過ごすのではなく、検査を行い適切な治療を行うことで痛みの軽減が期待できるのです。

神経障害性疼痛ではどのような検査を行いますか?

神経障害性疼痛を確定するためには、MRIやCTなどの画像検査で神経の伝導を確認します。その結果神経損傷や疾病があれば神経障害性疼痛の可能性が高くなります。
ただ直接どの部分の痛みを感じるのかなどの詳細については分かり難いため、スクリーニング質問票などでの評価をもとに診断されることが多いのです。

神経傷害性疼痛の治療法を知りたいです。

神経障害性疼痛と診断された場合には、次のような治療が行われます。

痛みを緩和するための治療

日常生活を通常に行うための治療

生活の質を改善するための治療

まず痛みを緩和するための治療では薬物による治療や神経ブロック注射などが施されます。また脊髄に微弱な電流を流すことで痛みを緩和させる脊髄刺激療法も有効とされています。
このような治療を行いながら徐々に痛みを忘れさせ、痛みが無いのだという状況を脳に覚えさせることも治療の目的の1つです。
神経障害性疼痛の場合の治療は、痛みを完全に取り除くことを目的するのではなくて痛みを緩和することで生活の質を改善することを重視します。そして少しずつ痛みを忘れて痛みから離れた日常生活を送ることができるようにサポートすることも治療の一環なのです。

疼痛の対処法

疼痛で市販の鎮痛薬を飲んでもいいですか?

強い痛みを感じるときには、少しでも早く痛みを緩和したい思いから市販の鎮痛薬を使用することもあるでしょう。結論をいうと市販の鎮痛剤を使用して悪いということはありません。
ただ疾病によっては市販の鎮痛剤が効きにくい場合もあり、副作用が考えられるものも少なくありません。医師の診断により処方される鎮痛剤を服用することで、より安心できることは確かです。
市販の鎮痛剤であっても薬剤師に相談した上で自分に合うものを選ぶことが大切です。また服用方法を理解した上で、容量用法を守り使用するようにしてください。

疼痛があるときの過ごし方を教えてください。

疼痛のあるときにはどうしても痛みのことだけに神経が集中してしまい、その結果どんどん痛みが増してしまいます。
できるだけ気持ちを痛みの他に向けることが大切なのです。好きなことに熱中しているときには痛みを忘れているということがあるでしょう。
疼痛があるときに楽しく過ごすことは難しいでしょうが、できるだけ興味のあることをしながら過ごすようにしてください。気持ちを明るく持つことで痛みが軽減することもあるのです。
痛みにばかり集中してしまうとそれが大きなストレスになってしまうので、前向きに少しでも痛みを忘れられる時間を作り、過ごすことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

さまざまな痛みに悩まされている人は多いものです。特に神経障害性疼痛は痛みの原因が見えない分、辛い思いをされることが多いでしょう。
原因を探り適切な治療を行うことで痛みを緩和させることは可能です。神経障害性疼痛であっても痛みを我慢するのではなく、徐々に脳をコントロールし痛みを取り除くことを目指しましょう。

編集部まとめ


疼痛には大きく分けて、急性疼痛と慢性疼痛の2つに分けられます。

急性疼痛は脳に伝わった痛みが怪我や病気のシグナルとして安静を促し、免疫反応を促進する効果のある痛みです。

慢性疼痛は怪我や病気が治癒した後にも続く痛みをいい、特に神経障害性疼痛は解明できない痛みも多く長く続くほどに心をむしばむこともあるのです。

痛みを我慢するのではなく、しっかりと痛みに向き合い自分の痛みに合った治療方法を探すことで必ず解決の糸口は見つかります。

前向きに好きなことを考えて身体を動かしながら日常生活を過ごすことも、痛みによるストレスを回避する1つの方法です。

参考文献

慢性疼痛診療ガイドライン

帯状疱疹関連痛を含む神経障害性痛(日本ペインクリニック学会)