「便秘」の原因・なりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!
老若男女問わず、日頃から便秘に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
便秘とは、食生活の乱れやストレスなど様々な原因によって便が長期間腸に貯留している状態のことをいいます。
特に女性に多い便秘ですが、食物繊維不足・ストレス・極端なダイエット・腸の病気など原因も多くあり、中には危険な病気も潜んでいるので便秘を放置するのは危険です。
この記事では、便秘の症状・原因・合併症・予防法・受診の目安などを紹介するので、便秘で困っている人は参考にしてください。
便秘の症状と原因
便秘とはどのような症状のことでしょうか?
便秘とは、本来体外に排出すべき便を十分な量かつ快適に排出できない状態をいいます。排便回数の減少・硬便・残便感などがあると便秘だといえます。毎日排便がなく1日空いただけで便秘と勘違いする人もいるかもしれませんが、2~3日に1回程度出ていれば便秘ではなく特に問題ありません。ですが、1週間以上排便がない場合や残便感が続いている場合には便秘が悪化する可能性があるので、排便習慣を見直さなければなりません。
それだけでなく、腹痛・嘔気・食欲減退・腹部膨満感などの症状がある場合、便秘が原因ではなく過敏性腸症候群や大腸癌など別の病気が関与して可能性もあります。
当てはまる症状があった場合には早めに医療機関を受診し必要に応じて検査・治療する必要があるでしょう。
便秘の原因を教えてください。
便秘になる原因には食生活の乱れ・過敏性腸症候群・腸閉塞・筋力低下・下剤など薬物の影響が挙げられます。その中でも便秘となる原因の多くを占めているのは食生活の乱れです。体内の水分が不足している状態だと便から水分を吸収して血液中の水分量を維持しているので便秘になります。また食物繊維には水分を便に蓄える役割があり、便の量を増やすことで排便を容易にしやすくしてくれるため、食物繊維不足も便秘の要因となります。
便秘が女性に多い理由として、筋力低下も大きな原因の1つといえるでしょう。便を押し出す力が弱いために便を上手く排出できず、排便できたとしても全部出しきれずに残便感を感じることもあるかもしれません。
さらに慢性的に便秘が続いている人で下剤を乱用していた場合、下剤がないと排便できないという悪循環が生まれてしまいます。
そのため下剤はあまり多用せず、主な原因である食生活の見直しから始めると便秘が改善されやすくなるでしょう。
便秘になりやすい人の特徴を教えてください。
便秘になりやすい人の特徴の1つは、不規則な生活を送っている人です。食生活が乱れやすくなるだけでなく、睡眠不足やストレスの蓄積により自律神経が乱れ便秘を引き起こしやすくなります。他にも日頃から抗ヒスタミン薬や抗うつ薬を内服している人、下剤・浣腸を定期的に使用している人も便秘になりやすいです。定期的に内服している薬の影響で便秘になっている人はかかりつけ医に相談しましょう。
また女性に便秘が多いのは冷え性があり、デスクワークや運動不足などで筋力が少なく踏ん張る力が足りないことなどが要因となっています。
便秘に悩んでいて運動習慣がない女性は、仕事の合間でも歩く時間を増やすなど定期的に運動する習慣を取り入れると、便秘が改善されるかもしれません。
便秘が続くとどうなるのでしょうか?
便秘が続いてしまうと、宿便の影響によって腸閉塞を引き起こす可能性があります。腸閉塞とは、腸内で食物・水分・ガスの通過障害が起きている状態のことをいいます。腸閉塞は腹痛・腹部膨満感・食欲不振などの症状が出現し、治療は絶食入院・手術が必要です。悪化すると腸が破裂し腹膜炎を合併する危険もあるので、便秘を放置せず一向に改善されない場合は医療機関で内服薬・浣腸の処方などで対処すると良いでしょう。
便秘の受診と合併症
便秘で受診を検討するタイミングを教えてください。
便秘が続いた場合、受診する1つの目安として腹部膨満・多量の嘔吐・血便・体重減少・高齢者の重度の便秘といった症状がある場合には、緊急性の高い病気が隠れている可能性があるので早めに医療機関へ受診しましょう。ただし体重減少や高齢者の便秘は、他に症状がない場合は経過観察し、他にも症状がある場合には医師へ相談してください。
緊急性の高い危険な症状はありますか?
便秘の症状の中には、消化器疾患が原因であることも少なくありません。発熱・激しい腹痛・嘔吐・嘔気などの症状がある場合緊急性の高い病気を患っている可能性があり、入院・手術が必要になるかもしれません。また血便が出た時、切れ痔であれば問題ありませんが大腸癌や炎症性の疾患も潜んでいる可能性があるので、出血量が多い・出血が連日続くなどの症状がある時には早めに医療機関を受診しましょう。
何科を受診すれば良いでしょうか?
便秘で受診する時は内科・消化器内科・消化器外科を選ぶのが最適です。緊急性が高い場合は、救急車を呼び救急外来を受診する必要があります。便秘の改善がみられず、内服薬・浣腸が必要な時は内科へ受診してください。腹痛・嘔気・嘔吐・発熱・血便などの症状もある場合には消化器疾患が原因となっている可能性もあるので、より専門的な消化器内科や消化器外科を受診しましょう。
動けないほどの腹痛や高熱がある場合には、躊躇せず救急車を呼んで早めに治療を受けてください。
便秘で起こる合併症を教えてください。
便秘が引き起こす合併症として、痔核・直腸脱・裂肛・虚血性大腸炎・宿便があります。排便時にいきむことで痔になり、直腸脱という直腸が肛門の外に出ることも稀にあります。また腸壁が損傷すると憩室炎を引き起こすこともあり、症状が進行すると憩室が破裂し腹膜炎になってしまう場合があるので便秘を放置するのは危険です。
合併症を引き起こさないためにも、便秘を放置せず早めに対処することが重要です。
便秘の予防
便秘を予防する方法を教えてください。
便秘を予防するためには、まず規則正しい生活を送ることが重要です。朝食など食事の時間・入浴時間・就寝時間をある程度固定することでリズムを崩すことなく、朝の排便習慣も作りやすくなるでしょう。朝忙しいからと排便時間を作らず、便意が来ても我慢してしまうと便反射が鈍くなり、便秘になりやすくなってしまいます。朝はなるべく便意がなくともトイレに行く時間を作るのも便秘予防に効果的です。
またストレスを溜めると自律神経が乱れ排便に影響を及ぼしてしまうので、なるべくストレスを溜め込みすぎないことも大事です。他にも水分を十分にとり、運動習慣をつけると良いでしょう。
便秘を改善するために良い食べ物はありますか?
便秘を解消するために効果的な食べ物として、まず食物繊維を多く含んだ食品が挙げられます。具体的には、豆類・芋類・緑黄色野菜・玄米・五穀米・海藻類・果物です。食物繊維は1日15g程度摂取することが推奨されています。水溶性食物繊維を多く摂取すると便の水分量を維持でき、便の量を増やすことで排便を促しやすくしてくれます。食物繊維だけでなく、味噌やヨーグルトなど乳酸菌が含まれている食事を朝食に取り入れるのも便秘解消に効果的です。
便秘をすぐに解消する方法はありますか?
便秘をすぐに解消したい場合は、下剤の使用や浣腸が効果的です。下剤にもいくつか種類がありそれぞれ作用が異なります。浸透圧性下剤というものが主に治療で使用されます。酸化マグネシウムという名前でご存じの人も多いでしょう。便を柔らかくして便の排出を手助けしますが、慢性腎臓病の人はマグネシウム中毒になる危険性が高いため、その際は上皮機能変容薬という新剤を使用します。
しかし下剤を多用しすぎると腸の運動機能が低下する可能性があるので、頓服や短期間の内服にするなど注意が必要です。
刺激性下剤は普段あまり治療に用いられませんが、造影剤を使用する画像検査の前処置に使用します。浣腸も下剤と同様に多用しすぎに注意してください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
「便秘がなかなか改善されないな」と悩んでいる人は、内科・消化器内科・消化器外科へ受診しましょう。便秘は自身である程度対処することも予防することもできますが、改善されないまま放置するのは腸閉塞などの合併症も引き起こしてしまい、更に体調が悪化してしまう可能性があるので注意が必要です。
便秘予防のためにも、日頃から規則正しい生活を送るように行動すると良いでしょう。
また「腸活」という言葉があるように、腸内環境を整えることは身体全体の健康にも直結することなので、ストレスを溜め込まない・栄養バランスの取れた食事をとる・運動習慣をつけることも意識してみてください。
編集部まとめ
便秘はガスや食物の通過障害のことをいい、便秘となる原因の大半が水分不足や食物繊維不足など食生活の乱れです。
自分が少し食事内容を変える意識を持ち、リズムを整えた生活を送ってストレスを溜め込まないようにするだけで徐々に便秘は改善されます。
しかし持病で内服薬を使用していることで便秘を引き起こしたり、慢性的に便秘が続いたりしている人も中にはいるでしょう。
便秘が続いているだけの場合は大きく身体に影響を及ぼすことはありませんが、腸閉塞や憩室炎などの合併症も発症すると、最悪の場合命の危険もあります。
便秘で悩んでいたり、「いつもと何か違う」と感じたりした時には早めに医療機関へ受診しましょう。
参考文献
便秘(MSDマニュアル)
便秘と食習慣(e-ヘルスネット)
腸閉塞(MSDマニュアル)