「血友病」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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血友病とは、怪我などによって出血した際に、血が止まらなくなる病気です。血が止まらないため、軽い傷でも大量の出血につながる可能性があります。

また、重症となる事故などの場合は、出血が止まらないために命にかかわるケースもあるでしょう。

そこで本記事では、血友病とはどのような病気かをご紹介します。発症する要因・治療方法・治療時に注意するべき点も解説するので参考にしてください。

血友病の特徴

血友病はどんな病気ですか?

血友病とは、通常行われるはずの止血が上手くいかない病気です。
人間の体には全12種類の血液凝固因子と呼ばれるものがあり、出血した際にこれらが作用することで血を固めてくれます。しかし、この血液凝固因子が不足していると、一度出血を起こすと血が止まりにくくなるのです。軽い怪我や打撲などでも、一度出血をすると止血までに時間がかかってしまいます。
また、血友病には血友病A血友病Bの2種類があります。血友病Aは、血液凝固第Ⅷ因子が少ないタイプで、血友病Bは血液凝固第Ⅸ因子が少ないタイプです。

血が止まらなくなるメカニズムを教えてください。

血液が止まらなくなるメカニズムには、血液凝固因子が大きく関係します。本来、出血後に血が固まるのは、血管・血小板・血液凝固作用が段階的に作用することで成り立っているのです。
まず出血が起きた直後には、血管が収縮して血液が流れ出るのを防ぎます。次に、血小板によって一時止血が行われます。血液中の血小板が集まり、傷口に付着することで血小板による栓が作られるのです。
しかし、これだけでは止血は十分ではありません。そこで、次に行われる止血が血液凝固因子などによる二次止血です。数種類の血液凝固因子が連動して、フィブリンと呼ばれるたんぱく質を作ります。
フィブリンは傷口に網を張って頑丈な止血栓を作ります。これらの一連の流れで止血が行われるのです。しかし、血友病では血が止まりにくくなります。その理由は血液凝固因子が不足あるいは欠乏しているためです。
血液凝固因子によって本来作られるはずのフィブリンが生成されないため、頑丈な止血栓が作られず血が止まらなくなります。

血友病の初期症状とはどんなものですか?

この病気の初期症状としては、さまざまな部位で起こる出血です。出血にも、傷などで眼に見える出血である体外出血と、眼に見えない部分で起こる体内出血の2種類があります。
血友病の場合、体内出血の方が多い傾向です。また、体内出血の中でも多いのが、次のような出血です。

関節内出血

筋肉内出血

関節内出血は、血友病の出血症状の中でも最も多い症状となります。通常関節は、骨と骨の間が靭帯や筋肉でつながっており、その内側を関節滑膜が覆っています。
関節滑膜の内側は関節腔と呼ばれる袋状の構造です。関節内出血は、関節腔での出血であることが多いです。
筋肉内出血は、筋肉を覆う筋膜・筋肉の間・筋肉の内部で出血します。出血が多いと血腫ができやすく、筋肉を圧迫するため痛みや腫れが伴うこともあります。

血友病が発症する原因を教えてください。

血友病の原因は、先天性のものと後天性の2種類です。
先天性の場合、X染色体に存在する遺伝子が異常を起こしており、その影響で血液凝固因子が生まれつき不足しています。血友病を発症している方のほとんどが、先天性の遺伝子異常によるものです。
一方の後天性の場合は、後天性血友病と呼ばれる病気です。後天性血友病の原因は、はっきりと解明されていません。発症した方の中には、持病のない方もいればがんを患っている方も存在し、明確な病気との関連や原因が判明していないのです。

血友病は遺伝するのですか?

この病気は、遺伝することがわかっています。後天性血友病の場合は、突然変異であることがわかっています。
しかし、先天性の場合は、血友病の保因者である母親を通して男性に遺伝することが明らかになっているのです。そのため、血友病を発症する方のほとんどが男性です。

血友病の診断と治療方法

血友病と診断する方法を教えてください。

診断の方法としては、まずは血液の測定時間によって血友病であるかを診断します。血液を固めて出血を止める時間が一般的な時間よりもかかるようであれば、血友病が疑われます。
次に、凝固因子がどのように働いているかを調べ、どの凝固因子が少ないかを確認して診断する流れです。第Ⅷ因子の不足が見られた場合には血友病Aであり、第Ⅸ因子の不足がある場合には血友病Bの診断となります。また、出生前に診断を行うことも可能です。
細いカテーテルや極細の注射を使用して母体にある絨毛細胞を採取し、この細胞に含まれる遺伝子を調べます。細胞の遺伝子は、胎児の遺伝子と同じであるため、血友病を患っているかが判断可能です。

何科の病院を受診するべきですか?

血友病の受診を行う際には、次のような診療科目を受けましょう。

血液内科

血友病科

内科

小児科

受診に適しているのは、血液内科血友病科です。血友病科は、大きな病院に専門的に設けてあることがあります。
しかし、近くに専門的に扱う医療機関がない可能性もあります。その場合は、一般的な内科で相談することも視野に入れましょう。
また、生まれつき血が止まりにくい子供の場合であれば、小児科に受診するのも良いでしょう。

検査の内容はどんなものですか?

血友病の検査の内容としては、次のようなものが代表的です。

血小板数の測定

プロトロンビン時間の測定

活性化部分トロンボプラスチン時間の測定

血小板数の測定は、一時止血能力を確認するために行います。次に、二次止血能力を確認するため、プロトロンビン時間活性化部分トロンボプラスチン時間を測定します。出血から止血にまでかかる時間を測定する内容です。
この2つのうち活性化部分トロンボプラスチン時間が正常よりも延長している場合に血友病が疑われるのです。その際、血液凝固因子がどの程度働いているかを調べるため、さらなる検査が行われます。
正常な場合の因子活性を100%とした場合、40%未満であれば血友病と診断されます。すなわち、血液凝固第Ⅷ因子活性が40%未満であれば血友病A、第Ⅸ因子活性が40%未満であれば血友病Bと診断されるのです。

血友病は投薬で治りますか?

この病気は、投薬により症状を改善させることはできますが、完治は難しいです。インヒビター保有血友病Aの方にヘブライムラ(エミシズマブ)が適応になっています。薬の役割は、不足している血液凝固因子を補充するためです。そのため、出血時に薬を投薬することで、早く止血する方法となります。
薬を使ったからといって、体質が変わるわけではないため完治するわけではないのです。また、場合によっては薬の抗体ができることがあります。抗体ができると、血液凝固因子を含んだ薬の効果を抑えてしまうため、投薬のみの治療では止血が困難となるケースもあるのです。

血友病を治療する場合の注意点

出血したときの緊急対応方法を教えてください。

出血時の緊急対応としては、次のような対応を行いましょう。

補充療法

出血部位のケア

まずは補充療法です。先述したような、血液凝固因子を含む薬を投薬します。出血後、できるだけ早く投薬することが大切です。このとき使用する薬の量は、あらかじめ医師と相談している量を使うようにしましょう。
体重・出血量・部位・使用する製剤によって投薬量は異なります。決して自己判断で投薬量を増やすなどしないようにしましょう。
投薬による対処の次は、出血部位のケアを行います。補助的なケアとなり、症状の緩和・再出血を防ぐための役割をもちます。部位ごとで対処方法は異なりますが、目に見える出血と目に見えない出血とで大きく分けられるため注意が必要です。目に見える出血の場合には、患部の圧迫などを行います。目に見えない出血の場合には、安静を保ったり患部を冷やしたりする対処が必要です。
また、皮下出血や頭蓋内出血といった、一部の出血症状の場合には主治医への連絡が必要となるケースもあります。補充療法のための、投薬量の調整が必要なためです。意識がない場合には、救急車を呼ぶ必要もあります。

通学・通勤や旅行をする際に支障はありますか?

通学・通勤・旅行などの際では、それぞれできちんと対処を行えば支障なく生活することが可能です。例えば通学や通勤といった日常生活の場合では、クッション性の高い靴などを選ぶなどの工夫をすると良いでしょう。
旅行の際には、事前に医師への相談を行い、出血がなくても事前に投薬することで対処できます。自分で投与することが必要ですが、きちんと行えば支障なく旅行も楽しめるでしょう。

血友病は男性の方がかかりやすいと聞きましたが?

この病気は男性の方がかかりやすいです。これは、遺伝子の中でもX染色体に異常があることで発症するためです。女性の場合は、X染色体が2つ存在します。
そのため、一方のX染色体に異常があっても、一方がきちんと機能していれば血友病を発症しません。しかし、男性の場合はX染色体が1つしかないためかかりやすいのです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

血友病は、一度出血するとなかなか血が止まらない病気です。通常であれば、軽いけがでも出血が止まらないため大変リスクがあります。そのため、出血時の対処方法や投薬料などをあらかじめ把握しておくことは非常に大切です。
緊急時に備えて、正しく対処が行えるように準備しておきましょう。そのためには、治療だけでなく相談も含めて、定期的に医療機関を受診して専門医と綿密に打ち合わせしておくことが大切です。

編集部まとめ


血友病とは、出血が止まりにくい病気です。男性に多い病気ですが、女性でも発症する可能性があります。

薬によりある程度は対処が可能ですが、あくまでも対症療法や予備的な治療法となるため、投薬量の把握や対処方法などの事前準備が大切です。

万が一に備えて、専門の医療機関を受診し、計画的に治療を進めましょう。

参考文献

血友病ハンドブック(東京大学医科学研究所附属病院)