大腸がん・胃がんになりやすい人の特徴を医師が解説 年齢や生活習慣・飲酒、肥満などの影響は?
部位別で見ると、大腸がんや胃がんは罹患数、死亡数ともに上位に位置するがんです。一体、大腸がんや胃がんになりやすい人には、共通の特徴があるのでしょうか? 年齢、肥満、生活習慣など、がんと関係が深い要素とともに、浜野胃腸科外科副院長の浜野先生に教えていただきました。
死亡者数が多い大腸がんや胃がんとはどんな病気?消化器がんになりやすい人の年齢・生活習慣などの特徴は?
編集部
大腸がんや胃がんとは、簡単にいうとどんな病気ですか?
浜野先生
大腸がんと胃がんは、食道がんなどとともに「消化管がん」に分類されるがんです。消化管の粘膜細胞が、なんらかの原因でがん化することにより起こります。やがて周囲に染み出したり、体のほかの部位に転移したり、正常細胞の栄養を搾取したりして体を衰弱させ、進行すると死に至ります。
編集部
どのくらいの年齢の人ががんになりやすいのですか?
浜野先生
胃がん、大腸がんともに40代くらいから増え始め、50~60代でさらに患者数が増加し、高齢になるほど罹患率が高くなります。胃がんも大腸がんも罹患率は基本的に男性の方が高く、胃がんは大体2:1の比率で男性に多いとされています。しかし、死亡率は大腸がん、胃がんともに女性の方が多く、非常に危険性の高いがんといえます。特に大腸がんは、すべてのがん種のなかで死亡数が2番目に多い疾患となっています。
編集部
胃がんや大腸がんになりやすい人に、共通する特徴はあるのですか?
浜野先生
ピロリ菌感染が、胃がんの原因になっていることがほとんどです。そのほか、胃がんだけに限りませんが、喫煙ががん発症の原因になっていることも少なくありません。
編集部
一方、大腸がんはどんな人がなりやすいのですか?
浜野先生
肉食中心の食生活や運動不足、肥満、喫煙などが大腸がんの危険因子です。また、腫瘍性ポリープが少しずつ大きくなり、やがて大腸がんに移行していくというケースも多く見られます。そのほか、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群など、遺伝子異常が原因となっている大腸がんもあります。
編集部
ポリープががんになることもあるのですね。
浜野先生
良性ポリープが何年もかけてゆっくり大腸がんに変化していくことは、決して珍しいことではありません。欧米では以前からその事実が証明されており、「内視鏡によるポリープの摘出術が大腸がんの発症リスクを低下させる」ということが、研究により明らかになっています。
大腸がん・胃がんは初期症状が現れないって本当? 血便、便秘、痔がある人は注意と聞くけど… 知っておきたい消化器がんの症状・前兆
編集部
胃がんや大腸がんは初期症状がなく、「気づいたときにはすでに進行していた」という話も聞きます。
浜野先生
確かに、胃がんや大腸がんには明らかな初期症状がないので、見逃されやすいという傾向があります。逆に、何らかの症状が出ているということは、すでにがんが進行している可能性が高くなります。
編集部
できるだけ早く、がんに気づくためにはどんな症状に注意したら良いでしょうか?
浜野先生
まず胃がんでは、胃の痛み、不快感、吐き気、胸やけ、食欲不振などが起こります。ただし、これらの症状は、逆流性食道炎や胃潰瘍の場合にも見られるため、見逃されやすいのです。
編集部
確かに、どれもよくある症状です。
浜野先生
胃がんの症状のなかで特に注意してほしいのが、貧血、黒色便です。それから、食事がつかえる、体重が減るという症状も要注意ですね。
編集部
次に、大腸がんについてはどんなことに気をつけたら良いでしょうか?
浜野先生
血便、下血、体重が減る、お腹が張る、腹痛などが、大腸がんの代表的な症状です。それから、以前は便の調子が良かった人が、便が細い、残便感がある、下痢と便秘を繰り返すようになったら注意してください。
編集部
痔がある人は要注意と聞きますが、本当ですか?
浜野先生
たとえば血便が出たときなど、「痔かと思っていたら、実は大腸がんだった」ということも少なくありません。そのため、自己判断で痔だと思い込まず、正しい診断が必要になります。
大腸がん・胃がんを予防、早期発見するならどんな検査が必要? 飲酒や食事の改善は有効?
編集部
大腸がんや胃がんを早期発見するには、どんな検査が必要でしょうか?
浜野先生
どちらも内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)で組織の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認することが必要です。がんが見つかったら血液検査や、CT、MRIなどの画像検査を行い、がんの進行具合や広がり、深さを調べます。
編集部
胃がんや大腸がんを予防するには、日頃からどんなことに気をつければ良いでしょうか?
浜野先生
まず胃がんの場合、ピロリ菌に感染している場合は除菌することが、がんの予防に効果的であることがわかっています。
編集部
ピロリ菌は一度除菌したら、もう気にしなくても良いのでしょうか。
浜野先生
基本的に1回除菌が成功すれば、再感染することはほとんどありません。そのため、1回除菌した人は、再度検査を受けなくても良いでしょう。ただし除菌に成功しても、ピロリ菌がいなかった人に比べて胃がんのリスクは高い状態が続きますから、必ず定期的に胃がん検診を受けるようにしましょう。
編集部
一方、大腸がんの予防についてはいかがでしょうか。
浜野先生
大切なことは、肉など動物性脂肪を減らし、食物繊維の多い野菜をしっかりとることです。また、さまざまな研究により、肥満と大腸がんには密接な関係があることがわかっています。肥満の人は減量に努めること、あわせて運動習慣を身につけることも、大腸がんの予防に役立つでしょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
浜野先生
大腸がんで気をつけてほしいのは、遺伝することもあるという点です。そのため、両親が若くして大腸がんで亡くなったという人は、定期的に大腸がん検診を受けるようにしてください。一方、胃がんではピロリ菌に注意が必要です。ピロリ菌は子どもの頃に感染すると言われているので、成人してから検査をして、ピロリ菌が見つからなかった人は、もうこの先も感染することはないと考えて良いでしょう。しかし、ピロリ菌が見つかった人は、胃がんを予防するために必ず除菌すること、そして除菌後も定期的に胃がん検診を受けることが大切です。また、ピロリ菌以外の理由で胃がんになる確率もあるため、定期的な検診は必要になってきます。
編集部
いずれにせよ「検診」が大切になりそうですね。
浜野先生
そうですね。また、日本は欧米に比べてがん検診の受診率が低く、特に女性の受診率は非常に低い状態が続いています。男性は会社で検診を受けますが、女性の場合はついなおざりになりがちです。しかし、がんは早期発見が大切で、特に胃がんや大腸がんは消化管がんの中でも早期発見すれば、命が助かりやすいがんです。ぜひ、自分の命を守るために、定期的にがん検診を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
胃がん、大腸がんともに早期発見が大切ながんです。早期のうちに、確実にがんを見つけるには、内視鏡検査が必要になります。「毎年誕生日にがん検診をする」など、検診を生活習慣に取り込む工夫をしてみましょう。
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