「外骨症」を発症する原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
外骨症とは、顎の骨が大きく膨らんで盛り上がり瘤(こぶ)のようになってしまう症状をいいます。
突然できるものではなく少しずつ大きくなっていきますが、口の中にできるため舌にあたってしまい気になるものです。
今回は口の中に発生する外骨症についてどのような病気なのか解説していきましょう。
外骨症の特徴・治療方法・できてしまったとき気を付けるべきことなどを紹介します。口の中の外骨症が気になっている人は、参考にしてください。
外骨症とは?
外骨症とはどのような病気?
外骨症は、口の中の顎の骨組織が過剰形成して盛り上がり、瘤のようなものができてしまう状態です。悪性のものではなく特にこの突起そのものが身体に影響を与えるということもありません。ただ、歯並びが悪くなることや歯磨きがし難くなり虫歯や歯周病のリスクが高くなる点には注意が必要です。上顎にできたものを口蓋隆起、下顎にできたものを下顎隆起と呼びます。下顎の洞底部にできることもあり、また歯茎に沿ってできるものもあり、この場合は歯槽隆起と呼び区別しています。
外骨症が発生する原因は?
外骨症が発生する原因については詳しくは解明されていないのが実情です。歯ぎしりをする人や歯並びの悪い人に起きやすい症状なので、力を掛け過ぎることで発症しやすいのではといわれています。いつも歯を食いしばるなど、口腔内に力をかけ続けることの多い人は、少し自分の状況を確認しながら力を抜くことも必要です。歯ぎしりを予防するためのマウスピースなどもあるので歯科医に相談してみましょう。また遺伝的なものも関係しているので両親などに外骨症がある人は発症しやすいと考えられます。
外骨症にかかるとどのような生活上の支障がありますか。
外骨症そのものが生活上に支障をきたすことは少ないのですが、骨の隆起に触れる舌に痛みを感じるという例があります。また歯磨きがし難くなり虫歯や歯周病のリスクが高まるため注意が必要です。歯列矯正や義歯装着が難しくなる場合には外科的処置が必要になります。外科的処置とは骨隆起を除去する手術ですが、さほど大きくないものなら局所麻酔で約20分ほどの手術のため、外来での手術も可能です。その他の生活上の支障としては、隆起部分の粘膜は薄くなっているために傷つきやすく、その傷は潰瘍になりやすいという点が挙げられます。潰瘍が酷くなる場合や、骨の隆起が目に見えて大きくなったという場合は早めに医師に相談してください。
外骨症と腫瘍の違いを教えてください。
外骨症は口腔内の骨組織の盛り上がりをいいますが、外骨腫は上腕骨や大腿骨に発症しやすい隆起です。いずれも良性のもので特にリスクを高める場合を除いては処置は不要ですが、痛みなどがあり必要なら外科的除去も可能です。口腔内の突起は外骨症と呼ばれ、非腫瘍性疾患とされて腫瘍と区別されています。外骨症の場合は骨のような硬さが特徴の1つです。触ってみて骨状ではなく柔らかい場合や表面に潰瘍ができている場合には歯科医の診断を仰いでください。
外骨症の診断と治療
外骨症の診断の基準は?
外骨症は視診で診断される場合が多いです。あきらかに隆起がみとめられることで外骨症と診断されます。その場合でも画像診断を行い診断が決定されます。外骨症は突然に大きな瘤になるのではなく、少しずつ大きくなるのも特徴の1つです。痛みもなく特に問題が無い場合はそのまま様子見となることも多いのが外骨症なのです。ただし、隆起したしこりが急激に大きくなったり、潰瘍のように柔らかくなったりした場合には違う病気が潜んでいることも考えて早急に受診してください。
治療の方法は?
日常生活に支障がない場合は、経過観察で特に治療の必要はありません。ただ粘膜が薄くなっているため、食べ物があたり潰瘍になった場合など、痛みをともなうことがあるので塗り薬が処方されます。義歯装着に難がある場合や矯正の妨げになる場合など、必要に応じて外科的処置が行われます。隆起が小さい場合は局所麻酔で除去することも可能です。外骨症では治療が不要なことが多いのですが、外骨症が原因となってその隆起部分に義歯があたることで痛みがひどくストレスになる場合もあります。また、歯ブラシが薄くなった粘膜を傷つけてしまい口内炎が治りにくいなどの症状に対しては、痛みをやわらげる治療が行われます。
外骨症を放置するとどうなりますか?
外骨症そのものは放置しても特に問題のない疾病です。ただ覆っている粘膜が他の粘膜より薄くなっているため、歯ブラシで傷つきやすくなり口内炎ができやすくなる場合があります。また、まれに外骨症によって顔の形が変形するほど隆起が大きくなってしまった例もあるので、受診して様子をみるようにしましょう。矯正や義歯装着が難しくなる場合には、隆起を切除する必要もあります。心配のない疾病だとしてもやはり放置せずに数か月に1度はメンテナンスを兼ねて受診すると安心です。
外骨症を根治するにはどうすればよいですか?
残念ながらできてしまった隆起が小さくなり消滅することはありません。根治には外科的手術で除去する方法しかないのですが、除去してもまた隆起を繰り返す可能性は皆無ではありません。特に日常生活に支障なく過ごせる場合は除去せずにそのまま様子をみます。骨隆起が大きくなり、歯磨きが難しくなったり義歯がはめにくくなったりしたときには、除去するとよいでしょう。外骨症そのものは様子見であっても、その間はメンテナンスを兼ねて口腔内のチェックを行うことが大切です。
どうしても必要と思われる場合は手術で除去となりますが、手術は局所麻酔で行われることが多く、短時間で終了するのでさほど怖れることはありません。
外骨症で気を付けること
外骨症を予防する方法はありますか。
外骨症を予防する方法としては、歯ぎしりなどによる過度な力を加えないということが挙げられます。もっとも外骨症の原因そのものもはっきりとしていないため、必ず予防できるというものではありません。また隆起ができてしまった場合には口の中のケアがし難くなることもあり、虫歯や歯周病にかかりやすくなる場合もあります。定期的なクリーニングなどで口腔内の状態をチェックすることも大切です。そして必要ならば除去手術を受けて、いつも口腔内をよい状態に保つように気を付けてください。
日頃から注意していれば、小さな異常をいち早く見つけることが可能になります。外骨症に限らず、さまざまな病気や症状を見逃さないことも予防につながります。
外骨症の症状があらわれやすい年代はありますか?
外骨症の症状は子どもから大人まで年齢に関係なく発症しますが、特に症状が出やすいのは40歳以上の人といわれています。子どもではあまり多くの症例がありません。また高齢になると歯周病などにより義歯を装着することも多くなります。このとき外骨症を発症している場合、装着におけるストレスが骨の隆起を大きくしてしまう場合もあるのです。
高齢で外骨症が見られるなら、早めに受診して口腔内の状態を診察してもらうことが必要です。そして状況に応じて隆起を除去するなど、医師の判断を仰いでください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
口腔内に瘤のようなものができて、もしかしたら悪性のものではと心配する人が多いでしょうが、これは外骨症といい悪性のものではないので安心してください。瘤状の隆起が大きくなることで歯磨きがし難く、むし歯や歯周病のリスクが高くなるようなら、外科的手術を行い除去することも可能です。手術は約20分ほどで終わるものなので、怖れず医師に相談してください。
編集部まとめ
外骨症とは口腔内にできる瘤状の隆起をいいます。
腫瘍ではないかと心配する人も多いのですが、これは悪性のものではなく骨隆起なので心配はいりません。
ただ一旦できてしまった骨の隆起は小さくなったり消えたりということはないので、日常生活に支障をきたす場合は口腔外科で除去することも可能です。
もちろんそのままにしておいても問題はないので、口腔内の状態を確認しながら相談して除去するかどうかを決めるとよいでしょう。
参考文献
下顎頭部に発生した骨軟骨性外骨症の1症例(日本口腔外科学会雑誌)