「モートン病」の兆候となる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
日常生活の中で、足の指の付け根に痛みが生じることはないでしょうか。その症状は「モートン病」による可能性があります。
モートン病は、過度な運動や圧迫感のある靴の常用によって発症し、近年では発症者が増えてきています。発症初期にはテーピングなどで対処が可能ですが、症状が進行すると手術が必要なケースも。
本記事ではモートン病になりやすい人、兆候としてみられる症状やリスクや治療方法について詳しく解説します。
モートン病とは?
モートン病とはどんな病気ですか?
モートン病(モートン神経種)は、足の裏や足趾(そくし=足の指)の付け根に痛みを生じる疾患です。足趾の付け根から指先にかけて向かう神経が、足趾の付け根の部位で慢性的に圧迫されることで発症します。個人差はありますが、足の中指と薬指の間に発症することが最も多いです。
モートン病の兆候としてみられる症状を教えてください。
モートン病の兆候としてみられる症状は、足趾の付け根の痛み・しびれ・けいれんなどです。症状が進行すると、足趾の付け根の神経周囲が徐々に腫れて赤みを帯びていき、ピリピリと刺すような痛み、しびれやけいれんなどの症状が強く現れます。重症の場合には、歩けないほどの痛みが生じる場合があります。モートン病を発症する原因は何ですか?
モートン病の主な原因は、足趾の付け根に負担がかかる原因としては、ハイヒールなどのつま先が細い靴を常用することや外反母趾(がいはんぼし)などの骨の形態異常がありますし、ほかの発症原因としてはガングリオン(ゼリー状の内容物が詰まったこぶ)などの腫瘍が神経を圧迫することなどが挙げられます。モートン病になりやすい人の特徴はありますか?
ハイヒールなどつま先の細い靴を常用している方や長時間立ちっぱなしなことが多い方、つま先立ちの多い作業をされる方は、足趾付け根の神経が圧迫されやすくモートン病になりやすいです。モートン病の検査・診断と受診目安
どのような症状が出た場合受診したら良いのでしょうか?
「安静にしていても足の痛みやしびれが改善しない」「症状が強く、日常生活に支障をきたしている」場合には自身で対処することは難しいため、医師による治療が必要です。症状が進行すると場合によっては手術が必要となるケースもあるため、症状を我慢せず受診すると良いでしょう。モートン病はどのような検査をして診断されるのでしょう?
モートン病は、①足を圧迫することによる症状の確認・②超音波装置やMRIなどを用いた画像検査により診断されます。足を圧迫する検査は、足の両端を把持してドクターが親指と人差し指で圧迫を加え、痛みやしびれが誘発されるかどうかを確認します。この検査方法は「Mulderテスト」または「Squeezeテスト」と呼ばれます。この検査により痛みやしびれが生じた場合、モートン病が強く疑われます。
確定診断にはX線(レントゲン)検査や超音波装置、筋電図検査、画像検査が用いられ、発症部位が造影されることで診断することができます。
モートン病に似た病気などありましたら知りたいのですが…
モートン病に似た症状が現れる病気として次のような病気があります。中足骨疲労骨折
中足骨にヒビが入ることで、痛みと腫れが生じます。強い痛みや内出血、大きな腫れを伴うことは少ないですが、運動しているときや圧迫したときに痛みを感じることが多いです。
中足骨頭間滑液包炎
骨と腱または筋の摩擦を少なくする滑液包という液体の入った袋が炎症する病気です。過剰な運動などによって滑液包に過度な刺激が生じることで発症します。
Freiberg病
足の人差し指の付け根の骨(第2中足骨頭)が壊死する病気です。ダンスやランニングなどで繰り返し負荷がかかることが原因で生じます。
足根管症候群
かかとの近くの繊維性の管(足根管)を通り足の指先に向かう神経が、物理的に圧迫または損傷することでしびれや痛みを伴う症状です。
外傷後(足首の捻挫、果部骨折、踵骨骨折など)や足首の変形、ガングリオンなどによる神経の圧迫によって発症することがありますが、全く原因が特定できない症例もみられます。
糖尿病性神経障害
糖尿病の合併症の一つで、最も頻度が高い合併症です。末梢神経に障害が出て足の指先から足の裏を中心にしびれや痛みが生じます。
グロムス腫瘍
グロムス器官と呼ばれる血管にできる良性腫瘍です。発症原因は明らかになっておらず、強い痛みを伴うことが特徴です。治療法は手術により摘出する以外にはありません。
モートン病のリスクや治療方法について
モートン病を放置するとどんな影響がありますか?
モートン病は放置すると、症状が進行して痛みやしびれが強くなり、足全体にまで症状が広がるケースもあります。最悪の場合には歩けなくなってしまう場合もあるため、症状を放置せず早期に治療を受けることが大切です。モートン病の治療方法を教えてください。
症状が軽い場合には、自分で対処が可能です。1. 靴や歩き方に注意する・2. インソールを敷く・3. テーピングをする、などの方法で症状を緩和できます。靴や歩き方に注意する:つま先が圧迫されやすい靴(ハイヒールなど)の着用やつま先立ちを控えるように意識することで、足趾への負担を軽減しモートン病の症状を緩和することができます。
インソールを敷く:痛みのある部分に体重がかからず、足の横アーチと縦アーチ(足裏の縦方向の湾曲した盛り上がり)が安定するようなインソールを選ぶと効果的です。
テーピングをする:足をリラックスさせた状態で、2本のテープが足の甲でクロスするようにテーピングをします。ポイントは、足の裏の中指と薬指の間を押しながら、痛みが生じない程度に少し引っ張りテーピングをすることです。テーピングによって、足裏から足趾の負担を軽減させることができます。テーピングは伸びるタイプでも伸びないタイプでもどちらでも構いません。
病院で行われる治療は、保存的療法と手術療法の二つです。
保存的療法では上記1~3のように指導し、加えて薬の内服を行う場合があります。保存的療法でも数ヶ月症状に変化が現れない場合には、神経剥離や神経腫摘出、靱帯の切り離しなど手術療法が行われます。
モートン病は治療で完治するものですか?
治療による完治は現在のところ難しいですが、動注治療(動脈に直接薬剤を入れる治療)により限りなく完治に近い状態にさせることが可能です。モートン病により生じたモートン神経種は、一旦発症するとそれが自然に消えることはありません。また、手術により神経種を取り除くことが可能ですが、20~30%の人は再発してしまいます。しかし、痛みは改善したり消失したりすることがあります。
モートン病の治療中の過ごし方で注意すべきことがあれば知りたいです。
モートン病の治療中は、足趾にできるだけ負担をかけないようにすることが大切です。そのために、ハイヒールなどの常用を控え、つま先の広い靴など適切な靴を履くようにしたり、インソールを使用したりすると効果的です。最後に、読者へメッセージをお願いします。
モートン病は、かつては欧米に多い疾患と言われていました。しかし、日本の生活習慣の欧米化によって、国内におけるモートン病患者数が増えてきています。モートン病の原因は主に足趾部分への慢性的な負担ですので、モートン病を予防または治療するために同部分への負担を極力減らすことが重要です。
人によっては、職業柄などの理由でハイヒールなどのつま先が細い靴を常用しなければならない方もおられるかと思いますが、そのような方はデスクワークなどの際に靴を軽く脱ぐことで足を休ませることで、足趾への負担を軽減できます。そして、もし少しでも痛みやしびれが生じたら、適宜医師による診断を受けることが、重症化を抑える近道になります。
モートン病は治療により限りなく完治に近づけることができますが、100%治すことは未だに難しい病です。そのため、日頃から足に無理な負担をかけないなどの予防を心がけることも大切ですね。
編集部まとめ
本記事では、モートン病になりやすい人、兆候としてみられる症状やリスクや治療方法について詳しく解説しました。
モートン病は、過度な運動や圧迫感のある靴の常用によって発症し、最悪の場合には歩けなくなるほどの強い痛みを伴う可能性もあります。
日常的に運動運動をする方や、ハイヒールなど足に負担のかかりやすい靴を着用する方は、時々足を休ませてあげることが、モートン病の予防に効果的です。
また、症状が進行すると手術が必要となるケースもあるため、モートン病の疑いがあると感じた方は、症状を我慢せず専門医を受診するようにしてください。
参考文献
モートン病(日本整形外科学会)
9.足根管(そっこんかん)症候群(日本脊髄外科学会)