今季限りで現役引退した杉谷拳士氏【写真:荒川祐史】

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来年4月にスポーツビジネス関連の会社を設立する「野球界に恩返しをしていきたい」

 今季限りで現役引退した元日本ハムの杉谷拳士内野手がスポーツビジネス関連の会社を設立し、取締役社長に就任すると明らかにした。芸能事務所からオファーが殺到したものの独立を決断。4月の会社設立を目標に、第2の人生を本格的にスタートさせる。球界の人気者に思いを聞いた。

 前進会見から3週間。杉谷の活動は早朝6時台からとエネルギッシュに始まった。グレーのスーツに紺色のネクタイをしめ、新幹線に飛び乗る。大阪から東京へ大移動。現役時代にお世話になったスポンサー企業、関係者に挨拶回りだ。「おかげさまでスケジュールがいっぱいで。11、12月はお世話になった方々への感謝月間です。ステキな時間を過ごさせてもらっています」。次へ進むべき道も見えてきた。

「独立して自分の会社を立ち上げたいと思います。社長になります。4月初旬の立ち上げが目標です。スポーツビジネス、マーケティング、球団経営。まずは勉強から始めたいと思っています。野球界に恩返しをしていきたいなと思います」

 底抜けに明るいキャラクターと抜群のトーク力。グラウンドだけでなく、年末年始のお茶の間も楽しませてきた。現役引退したオフ、テレビ番組への出演オファーだけでなく、芸能事務所から無数の連絡が来たという。

「何社から? いや本当に分からないんです。どこからどこまでが勧誘なのか。まだ会えてないところもありますし、『会ってお話がしたいです』というところもたくさんあります」

 華やかな芸能界も決して嫌いではない。ただ、第2の人生は球界へ恩返ししたい気持ちが勝った。忘れられない光景がある。2017年オフ、オーストラリアン・ベースボールリーグ(ABL)のブリスベン・バンディッツに武者修行した時だ。杉谷はいつになく熱い口調で打ち明けた。

帝京高先輩、とんねるず・石橋貴明さんの“1位指名”を辞退

「右も左も分からない日本人が1人でグラウンドに。言葉も分からない状態でした。ただ、現地の日本人の方々が『日本人選手がいるらしいよ』『じゃあ野球を見に行こうか』と見に来てくれたんです。オーストラリアでは他競技が人気なんですが、『野球おもしろかったよ、ケニー(杉谷の愛称)』と。そこからどんどんコミュニティが広がって、最後は日本人でスタンドがいっぱいになったんです。それが僕の中ですごく嬉しくて」

「滞在期間中はいろんな方々に協力してもらいました。その手助けがあったからこそ、こうやって野球ができているんだなと。いつか恩返ししたいという思いが、そこで出てきました。スポーツがビジネスとしても成長していくために働きかけたり、環境を整えたり。スポーツを通して恩返しをしたい気持ちがあります」

 帝京高の大先輩で、YouTube上で「ドラフト1位」と公言したとんねるず・石橋貴明さんには、すでに指名を“辞退”。「野球、スポーツに恩返しできる環境を作り、地域の方々と連携をとりながら活動していきたい」と誓ったという。今後もテレビ番組に出演していくが、野球界とスポーツ界の発展を念頭に置く。2023年の明確な行動指針もできている。

「バラエティ番組にもたくさん出たいですし、さまざまなスポーツに携わる方と対談をさせていただきたいと思っています。何より1年間をかけて、いろんなスポーツを。アメリカだったら四大スポーツ。肌で感じて勉強したいと思ったので、その1年にしようと思います」

「日本の机で勉強する。確かにいろんなことができると思いますけど、やっぱり違うじゃないですか? アメリカの野球はデータ、戦術が変わってきている。果たしてドライブライン(大谷翔平ら多くのメジャーリーガーが通うシアトルの野球施設)が全てなのか。あらゆる引き出しを増やしていければと思います」

 北海道と東京の2か所を拠点とする。「東京の家はワンルーム。もう寝るだけの部屋って感じです。日本、世界中を飛び回ってやろうと思います」。野球、スポーツに携わる全ての人たちを笑顔にするために。新米社長として前へ前へと進んでいく。(小谷真弥 / Masaya Kotani)