ADHD当事者の生活を科学的エビデンスに基づいた方法で改善する「ADHD Evidence Project」
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は多動性や衝動性、不注意などを特徴とする発達障害の1つであり、うまく学校や会社に適応することができず苦しんでいる当事者もいます。そんなADHDを持つ当事者や周辺の人々に対し、科学的なエビデンスに基づいた情報を提供するウェブサイトが「ADHD Evidence Project」です。
ADHD Evidence Project
https://www.adhdevidence.org/
「スライド」のページにアクセスすると、ADHDの診断および治療の概要についてまとめたスライド「ADHD 2022」や、27カ国の研究者によって承認されたADHDについての声明をまとめた「国際コンセンサス声明(International Consensus Statement)」などをダウンロードすることが可能。
「ブログ」では、ADHDに関して発表されたさまざまな論文をFaraone氏が要約した記事を読むことができます。
また、ホームページには海外掲示板のRedditでFaraone氏が回答したADHDに関するQ&Aが表示されています。
記事作成時点でホームページに表示されていたADHDに関する質問とFaraone氏の回答は以下の通り。
Q.
ADHD当事者が自身の生活とADHDのコントロールを改善するため、何を変えるのが最も効果的でしょう?
A.
処方されたADHDの薬をしっかり服用するほか、認知行動療法の原則を学んで日常生活に適用することも大事です。また、ADHDはあくまで自分の一面にすぎないことを心にとどめ、自分の強みを見つけて生かしてください。
Q.
脳波計やコンピューターを使って脳波を調整するニューロフィードバックがADHDの改善に役立つという証拠はありますか?
A.
ランダム化比較試験の結果、ニューロフィードバックがADHD治療に有効でないことは明らかです。そのため、どのガイドラインでも推奨されていません。
Q.
過去にADHDの典型的な治療薬を乱用した経歴がある人に対し、推奨される治療法は何ですか?
A.
アトモキセチン・徐放性のクロニジン・グアンファシン・ビロキサジンなどの非刺激薬です。また、認知行動療法も投薬の補助として理想的です。
Q.
ADHDと境界性パーソナリティ障害(BPD)が混同されることはありますか?もしあるならば、両者の違いは何ですか?
A.
これら2つの障害は専門家なら十分見分けられますが、これら2つが同時に発生することもあるため、どちらか一方が診断されない可能性もあります。
Q.
子どもの頃から自分ではどうしようもない症状のせいで批判され、いじめられたことで内面化されたスティグマや障害者差別を癒やすための良い方法はありますか?
A.
スティグマといじめは多くのADHD当事者にとって非常に深刻な問題です。これらの治療には心理療法が役立つかもしれません。ADHDはあくまでも人に影響を及ぼす障害であり、その人自身を定義するものではないと心にとどめておくことが重要です。ADHDの人々はたとえ周囲の人々が見つけられなくても、自分自身で認識できる強みがあります。
Q.
カフェインの服用はADHDや高次実行機能とどのように相互作用しますか?
A.
これまでの研究によると、カフェインは注意力・用心深さ・反応時間などを改善するのに役立ちますが、これはADHDの不注意には有効ではなく、記憶や高次実行機能などに対する効果も明確ではありません。
Q.
ADHDを持つ従業員の上司が知っておくべきことはありますか?
A.
エビデンスに基づいた治療法を探し出し、それを順守するように奨励してください。Russ Barkley氏やRuss Ramsey氏の著書も参考になります。
Q.
糖質の少ない食事がADHDの症状を改善するというのは本当ですか?
A.
意外なことに、砂糖の消費はADHDの症状を悪化させないとデータで示されています。人工着色料を控えること以外の特殊な食事がADHDの症状を改善するという結果は示されていません。
Q.
新たに自分がADHDだったことを知った大人にとって、最も簡単な治療法はなんですか?
A.
ADHDの投薬治療経験がある医師にかかり、処方された治療法を順守してください。その治療法で問題が解決しない場合は、医師と協力して認知行動療法などを追加してください。
Q.
特定の食品がADHDを悪化させることはありますか?
A.
人工着色料は、ADHDを持つ一部の人々にとって問題があることが示されています。症状を悪化させるその他の食品は知られていません。