新海誠監督『すずめの戸締まり』完成に「日本で一番面白い映画かも」と自信
新海誠監督が25日、東京国際フォーラムで行われたアニメーション映画『すずめの戸締まり』の完成報告会見に来場し、いよいよ完成した本作に「日本で一番面白い映画かも」と自信を見せた。この日は声優を務めた原菜乃華、松村北斗(SixTONES)、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、音楽担当の野田洋次郎(RADWIMPS)、作曲家の陣内一真も出席した。
『君の名は。』『天気の子』の新海監督3年ぶりの最新作となる本作は、日本各地の廃虚を舞台に、“災いの元となる扉”を閉めるために旅をする少女・すずめの解放と成長を描いた冒険物語。九州の田舎に暮らす女子高校生・すずめが、扉を探す不思議な青年・宗像草太と出会い、災いをもたらす扉を閉めるために日本各地の廃虚へおもむくさまを描き出す。
前日の24日にスタッフ向けの初号試写が行われるなど、ギリギリまで制作が行われ、いよいよ完成したという本作。新海監督も「本当に最近までつくっていて。なんだかそのままつながった状態で完成会見になったような連続感の中にいて。ちょっと気を失った隙に時間がたってしまったという感じですね。この後(の完成披露試写会で)5,000人のお客さまに観てもらってはじめて終わったのかなという気持ちになるんだと思います」としみじみとした表情を浮かべる。
さらに本作の着想について質問がおよぶと、「『君の名は。』『天気の子』とつくって、全国へと興行でまわったことがきっかけになったと思います」とのことで、「人の少なくなった場所が全国的に増えたなという実感がこの何年かでありました。うちの田舎もそうですが、そういう場所でもかつてはにぎやかだったという記憶があって。僕は団塊ジュニアなので、家を建てるときは地鎮祭(じちんさい)をやったりした記憶があって。でもあの頃にぎやかだった街がこのままなくなったら人はどうなるんだろうと思うことが増えたんですね。そういうことをきっかけに、日本全国で人の消えてしまった場所を悼んでいくような職業のキャラクターができないかというのがきっかけ」と明かす。
劇中では、草太が姿を変えられ椅子になってしまうという描写があるが、その意図について「ちょうど緊急事態宣言が出された頃に東宝に企画書を提出して。その後の戦争もそうですが、災いというのは、僕たちを不自由なところに理不尽に閉じ込めるものだなという感覚があって。それが草太になった」と付け加えた。
また本作について「映画館に足を運んでもらえるような作品にしたい」と意気込んでいた新海監督だが、「ディズニーの影響を受けて始まった日本のキャラクターアニメーションの到達点というべきアニメになったんじゃないか。大きな画面で体験するにふさわしい映像になったんじゃないか」と自負。さらに「これは(野田)洋次郎さんと話したことですが、『君の名は。』の時に劇場にしか入れられないことを入れたいよねと。いろんなアクションシーンもありますし、本当に激しい劇伴から、深く静かなところまで。音の連なりを体験できるような、映画館でしか体験できないような映画にしたいと思いました」とコメントすると、「映画っていいよね、人が集まる場所っていいよねというような、コロナ禍でも積極的に家から出てもらえるようなもの。この映画がそんな理由のひとつになればいいなと、大それた望みを抱きながらつくったような気がします」と振り返った。
『君の名は。』から始まった野田とのコラボも、映画としては本作が3本目となる。「いつものパターンですが、脚本を書くと感想が聞きたくなって。すると最初に洋次郎さんに送ってしまうんです。すると数か月後に自動的に感想が戻ってくる」と笑いながら明かした新海監督。だが今回は“なにか新しい要素がほしいね”ということになり、陣内が参加することになったという。
本作の音楽については「けっこう役割分担をした」という野田は、「新海誠という鬼コーチの千本ノックを受けるような感じだったけど、同志がいるんだなと思うだけで心強く、うれしくて。陣内さんがつくった譜面を見て刺激を受けましたし、こういう解釈でつくるのかということがすごく学びがあって。それは喜びでした」と回顧する。
そしてあらためて本作について「観客の皆さんには、まずはエンタメを楽しんでください。もしかしたら日本で一番面白い映画かもしれないので……それはわからないですが。でも楽しんでいただければと思います」と冗談めかしながらも、新作に深い自信を見せる新海監督だった。(取材・文:壬生智裕)
映画『すずめの戸締まり』は11月11日より全国公開