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「独自ネタ」が10割、『ラヴィット!』の大変さ

――番組のエンディングで流れるスタッフロールで中野さんの名前を見ます。「構成」としてどんなふうに関わっているのですか。

この番組に関して言えば、「視聴者」ですね(笑)。そもそも放送作家は客観的なスタンスでいるべき仕事だと思っていますが、その極致のような関わり方です。番組を毎日引いたところで見て、意見や感想を言う「視聴者代表」だと思っています。

イラスト作成:Marketing Native編集部

番組に関わるきっかけは、僕も構成に入っている『ジョブチューン』という番組のプロデューサー(小林弘典さん)と総合演出(山口伸一郎さん)の2人が『ラヴィット!』を担当することになり、声がかかったことです。僕は『ラヴィット!』の前身の『グッとラック!』にも関わっていて、短い期間ながら朝の生の帯番組をやっていたので、その経験が役に立つならと思い、引き受けました。

『ラヴィット!』は朝の生番組でありながら、バラエティの要素も強く、他の朝の情報系生番組より大変だと思います。朝のワイドショーは、日々起きる事件事故やスキャンダルなど「発生ネタ」を扱うことが多く、各局共有のVTR素材を編集して、それをスタジオに落として、どんな展開にするのかを考えます。

そこに番組で取材したり制作したりした「独自(取材)ネタ」が加わるのですが、発生ネタと独自ネタの割合は7:3から8:2くらいでしょうか。その観点でいうと『ラヴィット!』はある意味、「独自ネタ」が10割になります。起きた事象の素材がある発生ネタに対して、独自ネタはゼロから作り上げる必要があるので、それを10割で、毎日回していくのは本当に大変なことだと思います。

――なぜこの枠が、ワイドショーではなく、お笑い芸人がMCのバラエティ番組になったのですか。

詳しくはわかりませんが、『グッとラック!』のときも「バラエティ要素を入れてほしい」と言われていたので、以前からそうした意向はあったのだと思います。『はなまるマーケット』(※註)の成功体験から来た発想だと思いますが、過去にも『はなまる』を狙った番組がいくつも立ち上がっては、今ひとつ結果が伴わず、発生ネタを扱うワイドショーに移行することを繰り返しています。だから、今回の『ラヴィット!』こそ完全にシフトチェンジすると決意して始まったのだと思います。

(※註)『はなまるマーケット』:
ワイドショー廃止に伴い、『モーニングEye』の後番組として始まった生活情報番組。岡江久美子さん・薬丸裕英さんがMC。1996年から2014年まで放送。

成功のポイントは、プロデューサーの覚悟とディレクターの熱意

――いろいろなメディアで『ラヴィット!』成功のポイントが分析されています。大体こんな感じかと――。

出演者がすべっても拾ってあげる安定感が川島明さんにある 川島さんは過去の情報番組のMCにありがちな家父長的アクの強さがなく、品がある コロナ禍の暗い時代背景にお笑いがマッチした 朝5時から同じようなニュースが各局で流れていて、『ラヴィット!』が始まる午前8時には飽きている視聴者が多かった Twitterとの連動がウケている 生放送のゆるい雰囲気が『笑っていいとも!』に似ている 『水曜日のダウンタウン』とのコラボ企画がウケた

…中野さんはどうお考えですか。

当たっているのもあると思いますが、僕が考えるヒットの一番の理由は、プロデューサー陣の覚悟とADも含めたディレクター陣の熱意が圧倒的だからだと思います。

――プロデューサー陣の覚悟とは、具体的にどういうことでしょうか。

僕がプロデューサー陣の覚悟を感じたエピソードはいくつかあります。最初に感じたのは番組が立ち上がった頃、「暗いニュースは触らなくていいけど、明るいハッピーなニュースに関しては番組の冒頭で触れてもいいんじゃないか」と提案したときに、プロデューサーの辻(有一)君が「いや、日々のニュースには一切触らない方向でいきます」とはっきり言い切ったことです。その時に「本気でワイドショーとは一線を画した番組を作る覚悟なんだな」と理解して、自分のスタンスも決まったところがあります。

もう1つのエピソードは、SNSで番組が炎上したときのことです。このときプロデューサーが会議の席で「炎上しても気にしなくていい。それよりも面白いものを作るのが大事」と明言しました。今の時代、プロデューサーは立場上、ネットの炎上やクレームにはかなり慎重になっているのですが、『ラヴィット!』は必要以上に炎上を気にすることにプライオリティを置いていません。

プロデューサーにその覚悟があるとディレクター陣も腹が固まるというか、モチベーションは上がりますよね。今はやる前から「コンプライアンス的に引っ掛かるかもしれない」「クレームが来るかもしれない」という想定で、未然に防御するプロデューサーも多いですが、そういうことがボディブローのようにディレクターたちの士気を下げてしまいます。「炎上を気にせず、面白いものを」と言えるのは、まさしくプロデューサーの覚悟だと思いますね。責任は自分に掛かってくるわけです。そういうプロデューサーの覚悟の中で、現場のディレクター陣の熱意が上がってくるのだと思います。

その辺は、良き時代のバラエティ番組を思い出します。僕が昔、『電波少年』をやっていたときに、演出の土屋(敏男)さんが上司から「塀の上をギリギリ歩く分には何をやってもいいけど、向こう側には落ちるな」「塀の上ギリギリを歩く分には好きなことをやれ」と言われたと話していました。あの番組があったのは、そんな無茶を放任しつつ守ってくれていた直属の上司の覚悟があってこそだと感じます。その覚悟を感じるからこそ、実際に作る側の意識も変化し、番組が上向き始めるのだと思います。こういうことは具体的な企画ではないから精神論のように見えて理解されづらいのですが、実はとても大事で、れっきとした方法論だと考えています。

――『ラヴィット!』も最初は視聴率が良くなくて、いろいろ叩かれましたよね。当然、局内外から「やっぱりバラエティだからダメなのではないか!?」みたいな圧力があったと思うのですが…。

僕は放送作家なので直接言われていないからわからないですけど、プロデューサー陣は相当言われたでしょうね。そこで方針を曲げずに、今の路線を強固にしていったところにもやっぱり覚悟を感じます。大抵、数字のために安易に路線を変えていくものですが(笑)

「縁日」のようなにぎやかさと、川島明の「補完力」

――番組の特徴についてはどうお考えですか。

一番の特徴は川島さんを含めて出演者が楽しんでいることだと思います。こう言うと特徴っぽくないかもしれませんが、これも実はすごく大事。出演者が皆、エンディングで「本当に楽しかったです」と言っているのは、案外、社交辞令ではなく本心ではないかと感じています。出演者が皆、心から楽しそうにしているのが番組の魅力になっていて、ある意味、「縁日」のように「何かあの辺りで楽しそうなことをやっているな」と視聴者を引き寄せているのではないかと思います。朝8時からの時間帯で「縁日」をやっているのはTBSだけ。この時間帯は事件事故、スキャンダルなどの「情報を得る」ためにテレビをつけている人が多いと思いますが、『ラヴィット!』の場合は、一日の始まりに「明るい気分を得たい」と思って集まってきている気がします。番組がコロナ禍にスタートしたのも影響しているのか、朝から暗く、重いニュースばかり見たくない人は案外多くて、出演者が楽しそうにしている明るい番組を見たくなっているのかもしれません。

――朝から面白いことを言わないといけなくて、出演者は皆、必死なのかと思ったら、そうでもないんですね。

決していい加減にやっているわけではないと思いますけど、必死というよりは楽しんでいる感じですよね。視聴者の僕にはそう見えています(笑)。でも、なぜ出演者が楽しめているかというと、理由は2つあって、まず川島さんの力がとても大きい。もう1つは各曜日のディレクター陣やプロデューサーたちの出演者への気遣いが影響していると思います。

――川島さんの力とは?

例えば、出演者がすべったことを言っても、結果すべっていないように仕上げる。あの能力はすごいです。ツッコんで笑いにするのではなく、巧みに加工して笑いにする。こんな言葉はないですが、笑いの「補完力」。比喩も含めて瞬時にプラスひと言を足して笑いにする能力が異常に高いと思います。自身のSNSでも写真にハッシュダグをつけて笑いにしていますけど、そのMC版。ツッコミはある意味、相手の発言を否定するわけだから、発言するほうも慣れていないと怖くなるけど、川島さんの場合は出演者の発言を生かしながら笑いにするので、安心して発言できます。それがあの空気感につながっていると断言できますね。

もう1つはやはり演出陣やプロデューサーたちの出演者への気遣い。わかりやすい例を挙げると、出演者の誕生日やお祝い事は細かくフォローしてネタにしています。番組で自分の誕生日を祝われながらネタにしてもらえるのは、実はとても嬉しいんじゃないかと思います。

――それは異例なんですか。

収録が終わった後にカメラを止めてからお祝いすることはありますが、それを番組の中でやるのは異例でしょうね。もちろん、ただお祝いするだけでなく、それぞれの出演者がどんなプレゼントを購入してくるかというフリに使われているわけですが、どんなカタチであれ、主役になるわけですから。

あと細かい例を挙げると、ロケVTRに出てくれた芸人さんら出演者に「今回は何回目の出演」とテロップを出したり、全曜日にゲストとして出たら、「曜日のグランドスラム達成」とお祝いしたりしています。それは視聴者的には関係のない情報ですが、番組として「ちゃんとあなたのことを見ていますよ」という出演者へのメッセージになっています。出演した他番組のことや発信したSNSなんかも細かくネタにして拾ってもいます。それは出演者のことをしっかり追いかけていないとできないことです。そういうスタッフからの気遣いがじわじわと出演者からの信頼につながっている気がしますね。芸人さんは特にその辺りのことに敏感ですから。

出演者のことをしっかり見ていることに関連して言うと、生放送でリプレイするんです。きっと視聴者はその凄さに気づいていないと思うから強調しておきますけど、朝の生放送でスポーツ中継のように、スタジオで起きたことを瞬時にリプレイするなんて、普通はあり得ないことなんです。費用的にもかなりかかるみたいなので、そこもプロデューサーの覚悟ですね(笑)

――出演者とスタッフも仲が良さそうですね。

番組立ち上げ(2021年3月)から1年半が過ぎて、そんな細かい気遣いで信頼関係が生まれてきているんでしょうね。ただ、これが行き過ぎると、今度は内輪だけの盛り上がりになって、テレビ番組としてはバランスを崩しますよね。

――内輪ウケ批判、少しありますね…。

あるんですか?(笑)。でも視聴者が疎外感を覚えたら、ダメだと思いますね。視聴者代表として見ている僕が疎外感を感じたら、会議で「ちょっと内輪感が強いかな」とクレームをつけるようにしています。

「革命」としての位置づけは『いいとも』ではなく、その前身…

――「朝の生番組革命」とか「『笑っていいとも!』に似ている」という意見はどうですか。

革命というか、これまでは覚悟がなくてやらなかっただけだと思います。朝8時からバラエティをやるのは、やはり覚悟がないとできません。それが革命といえば革命なのかもしれないけど、僕は覚悟だと思いますね。

あと、『笑っていいとも!』に似ていると僕は思っていなかったです。

――本当ですか!?この取材にあたって何人か聞いてみたんですけど、『いいとも』に似ているという意見は結構聞きました。

芸人さんが主体となって日替わりでワイワイやる生放送という意味なら『ヒルナンデス!』もそうだし、バラエティ番組は大体そうなんじゃないかな。

それより「革命」の視点で言うと、どっちかといえば『笑ってる場合ですよ!』だと思いますよ。

――古いところに行きましたね(笑)。『いいとも』の前身番組じゃないですか。

『笑ってる場合ですよ!』が始まる前の平日正午から13時は、奥さま向けの情報番組が中心でした。その時代に芸人さんを中心に持ってきて、ガッツリお笑いをやったんです。

――メインのMCはB&Bさんでしたっけ。

B&Bさんが中心で、曜日でツービートさん、紳助・竜介さん、ザ・ぼんちさんらがいました。もともと「平日の昼にこんなお笑い番組が成立するのか!?」と言われて始まった経緯があるので、『笑ってる場合ですよ!』と『ラヴィット!』はかぶるんです。そういう意味では「朝の生番組革命」と言われても間違いじゃないかもしれませんね。

芸能人が生きた情報を持ってくる、強力な「クチコミ」効果

――なるほど。あとはオープニングトークも特徴として、よく挙げられます。時には1時間を超えることもあり、「もうオープニングトークじゃないだろ」と言われたりしています。この長さも人気の秘密なのでしょうか。

人気の秘密かどうかはわかりませんが、実は番組が始まって2週目で、総合演出から相談がありました。番組開始1週目はさすがに番組内容や各曜日の出演者の紹介もあるのでオープニングはトークから始まったのですが、2週目になったときに、「数字的にはVTRから入ったほうがいいのかもしれないけど、どう思いますか」と聞かれたんです。番組は時間帯を問わず、VTRから入ったほうが視聴率が上がるというのが定説。朝の情報番組もオープニングでダラダラとトークをすると数字が下がるから、大体VTR、もしくはアバンVTR(その日の番組内容のフラッシュ。「アバン」は「~の前に」を意味するフランス語)を流して、面白そうだと思わせてから、スタジオで軽くあいさつをして、すぐに1本目のVTRに入るのが基本です。

ただ、「MCが生きた番組でないと当たらない」というのが僕の持論なので、総合演出から相談を受けたときに、「川島さんがMCの番組だから、オープニングトークは必要だと思う」と伝え、2週目からもオープニングトークは続けることになりました。

とはいえ、そんなオープニングで毎日、出演者のエピソードトークだけになるのは正直きつい。面白エピソードがある人でも毎回持ってくるのは厳しいと思うんです。一方、「最近こういうペンを使っている」「この手土産が美味しかった」といった芸能人が提供する情報は見ていて興味があったので、そのことを視聴者代表として伝えました(笑)

その後、演出陣がどんどんオープニングを発展させて、モノの情報だけでなく、アーカイブ映像や芸人紹介など幅広くいい意味で雑多にいろんな情報が出てくるようになり、すごく楽しくなりました。番組がこの1年半で「情報番組」から「情報バラエティ」になって、さらに発展して「お笑い情報バラエティ」という新ジャンルに進化していった感じがします。

そんな空気感が出来上がってきた頃に、オープニングトークが40分を越えて、川島さんが「それでは本日もまいりましょう。『ラヴィット!』」というタイトルコールでスタジオがドッと笑ったことがありました。時間が押した長いオープニングをフリにして川島さんがタイトルコールをオチにしたんです。家で番組を見ながら『ラヴィット!』は、こういう川島さんの笑いへの変換力が大きな強みだと思いましたね。加えて、予定が狂っていく様子はテレビ的にドキュメント感があって面白い(笑)。いくら押しても出演者が持ってきた情報をぶった切らずにやり切るというプロデューサーや演出陣の割り切りも、できそうで意外とできないと思っています。

――オープニングトークは軽い立ち話をするイメージですが、違いますね。

オープニングトークが人気だとすると、出演者自身が生きた情報を持ってきていることも大きいと思います。生番組の多くは前日に打ち合わせをするのですが、『ラヴィット!』のオープニングトークは何週間も前に内容を決めて、手土産1つ取っても取材・許可取り・VTR撮影とすごく時間をかけています。その上で、出演者本人が自分がイイ!と思っているものを紹介しているからリアリティがあるんです。

近年よく「若い人はググらない」「ネットに出てくる情報は信用せず、代わりにInstagramなどSNSで調べる」と言われます。ネット検索で出てきた1次情報より誰かのクチコミというか、信頼できる人に勧められた情報を信用する傾向は僕も感じます。そういった意味では、『ラヴィット!』のオープニングトークは出演者のクチコミになっています。情報が新しい、古いは関係ない。古い情報も出てくるけど、有名人を通したクチコミだから価値を感じてもらえているのだと思います。

これまでの情報番組はとにかく新しい情報を出していかなければならないと勝手に思い込んでいましたが、そもそもこの時代、YouTubeなどを見ても、新しいも古いも関係なく情報が扱われていると感じていて、昔ほど「新しい」ことに価値はないと考えています。また、新しい情報は、視聴者が「スポンサーとつながっているんじゃないか」「ステマなのでは」と胡散臭さを感じてしまうことがあります。そういう胡散臭さの少ない情報が『ラヴィット!』のオープニングトークの魅力になっていると思います。

――勉強になります。

そういう点も含めて縁日みたいな雰囲気というか、情報の「蚤の市」のような、古いものも新しいものも出ているけど、お店が出している商品ではなくて、誰かがフリーマーケットに持ってきて出している、しかも出品者は有名人という、そんな感じがウケているのかもしれないですね。

出演者とスタッフが「自分ごと化」して放つエネルギー

――逆に「こういう企画は番組に合わない」と思うことはありますか。

理不尽な罰ゲームですね。ドッキリでも、誕生日ドッキリのようなハッピードッキリなら視聴者も番組との“共犯”意識を感じて、自分もいいことをしたような気持ちになれるけど、罰ゲームには関わりたくないと思います。今は人を陥れるような企画を嫌う風潮が強いし、朝のこの時間帯は特にそうではないでしょうか。以前そんな感じの企画があったときに、僕は視聴者として、「あの方向は見ていて気持ち良くない」と率直な感想を伝えました。

――他局が裏で『ラヴィット!』のような番組を始めたらどうします?勝ち続けられますか。

まず、そんな番組は始まらないと思いますよ。大変ですし、相当な覚悟が必要です。VTR素材を共有できる発生ネタをやっていたほうが無理はない。そのハードルを越えてまでやってくる局があるとは思えないですね。しかも生中継もあれば、事前ロケまでありますし。あの熱量でデイリーの生放送をやるわけですから、想像以上に大変だと思います。

――そんなに大変なんですか。

ディレクター陣だけじゃなくADさんたちもすごく大変だと思います。以前、スタジオの縁日のセットをADさんたちが作ったと聞いて感動しました。ADさんも働き方改革以降、ドライにやっている人も多い中、そんなに前向きに頑張っているんだって。

――ADにも働き方改革ですか。

そうなんです。今はテレビ局の働き方改革の一環として就労時間などがしっかりと守られています。そんな限られた時間の中で頑張っているんです。しかもこの番組でやってみたい企画をADさんたちも積極的に出して採用されたりしています。頭が下がりますよ。何度も言うようですが、生放送の帯番組は本当に大変ですから。現場に行かない放送作家の僕が力説しても説得力がないかもしれないですけど(笑)

――最後に、『ラヴィット!』もそうですが、なぜお笑い芸人が出る番組が多いのでしょうか。情報番組だけでなく、いろんな種類の番組で顔を見ますよね。

昔より芸人さんができることの幅が広がっているからだと思います。「芸人でありつつ料理がうまい」「芸人でありつつスポーツが得意」「芸人でありつつ雑学に詳しい」など、トークスキルがあって知識も幅広く、コミュニケーション能力が高くて、笑いを交えながらわかりやすく説明できるので、番組側も言葉は悪いですけど、使い勝手が良くて重宝します。昔は笑いだけの人が多かったですが、今は番組に応じて自分が求められている役割を認識して立ち居振る舞える人が多いですね。

その半面、「この番組に関しては自分の役割はこれ」と、ドライに関わる芸人さんもいるし、MCもいます。でもそれは出演者を生かしていないということに尽きます。MCも「自分はVTRを見て、軽く感想を言う役割」だと思うと、熱が入らなくなるのもやむを得ないと思います。僕の持論ですが、その人がMCである理由がきちんと存在していることが大切です。

そういう意味でも、『ラヴィット!』はロケ1つ取っても、「朝の番組でそこまでやるか」というくらい皆、前向きに取り組んでいます。よくビジネス書などで「自分ごと化」というワードを見かけますが、それもこの番組のキーになっている気がします。川島さんもスタッフも全員が「自分の番組」だと思っていて、『ラヴィット!』を「自分ごと」と捉えています。僕のようなキャリアで青臭いことを言うようですが、だから『ラヴィット!』のことが好きだし、出演するのが楽しいし、自分が出ているこの番組を大切にしたいという気持ちが熱量となって、視聴者に届いているように思います。

――本日はありがとうございました。

Profile
中野 俊成(なかの・としなり)
放送作家。
1965年生まれ。富山県出身。主にバラエティ番組を担当。高校卒業後に上京し、渡辺プロダクション主宰の放送作家オーディションに合格してテレビ業界へ。現在、『ラヴィット!』のほかに『ポツンと一軒家』『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』『プレバト!!』『ジョブチューン』『題名のない音楽会』『CDTVライブ!ライブ!』『大改造!!劇的ビフォーアフター』『芸能人格付けチェック』など担当。過去には『内村プロデュース』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』『進め!電波少年』『あらびき団』など人気番組を多数手掛ける。

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
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