窓辺の小石 第79回 「壁」の絵
Windowsを始め、多くのGUIを搭載したオペレーティングシステムには、画面の背景画像を指定できるようになっている。GUIでは、画面をデスクトップメタファーで“デスクトップ”と呼ぶのに、なぜか背景画像を“Wallpaper”あるいは「壁紙」と呼ぶ。最近では、デフォルトできれいな写真などが表示されるが、かつては、単色や8×8ドットのパターンのみが提供されていた時代もあった。ユーザーが好みの画像を使うことから、壁紙を見れば、その人の「趣味」がわかると言われることもある。
たとえば、Webページでは、かつて主流だったXGA(1024×768ドット)の画面サイズを想定してデザインするのがよいとされている。雑誌などの印刷物でも、横幅が1024ドット程度の元画像があれば、印刷してもそれなりに内容を判別できる。
またXGAならフルHD(1920×1080ドット)の画面でもそれなりの大きさで表示される。なので、こうした画面サイズに合わせて十字のマーク(これを印刷出版関連ではトンボという)を書き込んだ画像ファイルを壁紙にすれば、ウィンドウのサイズ合わせが簡単になる。
○トンボの入った壁紙を作る
ウィンドウサイズを指定できる壁紙を作るには、モニター解像度と同じ画像を作る。これを拡大縮小することなく、「中央に表示」させることで、正確にサイズを示すことができる。マルチモニターなどで複数の解像度のモニターを使っている場合には、最大解像度に合わせて作る。拡大縮小させなければ、モニターをはみ出した部分は無視される。
画像の作成は、ペイントソフトなどで行う。画面上で正確なドット位置にトンボを配置できるならなんでもよい。筆者は、GIMPを使っている。また、ビットマップへのエクスポート時に正確なドット数を指定できるなら、ドローイングアプリ(たとえばLibreOfficeのDrawなど)でもよい。
GIMPで1920×1080ドットの画像を作成し、これをWindowsの標準だった背景色(ネイビーブルー。RGB値で#0066B1)で塗りつぶす。フルHD以下の解像度には、(表01)のようなものがあり、これらの矩形の対角位置に十字のマーク(トンボ)を置き、右端と下端は、線のみにしておく。矩形のセンターを画像中央に合わせてもいいが、扱いやすいのは、1024×768ドットの矩形を画像のセンターにおき、あとの矩形は左上を重ねた配置だ。合わせる角が常に同じ位置になるため、基準点が見つけやすい(写真01)。
写真01: GIMPで作成した画像でトンボの部分のみを選択状態にしたところ。矩形範囲の左上を一致させておくほうがウィンドウが扱いやすい
なお、利用頻度の高い解像度に関しては、四隅ともトンボとする。筆者は、1024×768ドットの矩形を基本に左上角を合わせて、800x600、640x480ドットの位置をマークしている。
GIMPならば、矩形選択領域を固定サイズとして配置し、内側の四隅に角を示すように鍵形に線を引いておき、矩形選択を解除して十字形にする描画が簡単だ。
トンボは、わずかに明るい色、たとえば#006FB1あたりで、幅1ドット、縦横64〜128ドット程度にしておく。この色、サイズだと縮小すると目立たなくなるが、画面上では簡単に見つけられる。
LibreOfficeのDrawでは、ページサイズに「画面16:9」というのがあるので、これを選び、エクスポート時にドットでサイズを指定する。
画像ファイルはPNGにしておく、JPEGなど非可逆圧縮だと、圧縮率によってはトンボの周辺にノイズが出ることがある。4Kディスプレイを使っているならドット関係を維持したまま、画像サイズだけを4K(3840×2160ドット)に変換して保存する。GIMPなら、画像メニューのキャンバスサイズの変更を使う。オフセットの「中央」ボタンを使って、元画像を中央に配置する。このとき、周囲を同じネイビーブルーで描画するように背景色をネイビーブルーに設定しておく。
Windows 10/11なら、「設定→個人設定→背景」で作成した画像を選び、「中央に配置」を選択する。「中央に配置」は画像を拡大縮小することなく、そのまま画像の中央をモニターディスプレイの中央に来るように配置するものだ。
Chromebookでは、背景での右クリックで、「壁紙を設定」を選ぶか、「設定→カスタマイズ→壁紙」で壁紙アプリを起動する。画像選択時に「中央揃え」を選ぶと、拡大縮小せずに画像を表示できる。
今回のタイトルの元ネタは安部公房の「壁」(1951年)である。現在なら新潮文庫で手に入る。今頃、安部公房の本など読む人は少ないかもしれないが、今でも小説に限らずさまざまな作品に影を落としていることを感じることがある。