空想中毒は独立した精神障害かもしれないという研究結果
「テロリストに学校を占拠される」「忍者に追われる」といった空想を心に思い描くのはごく普通のことですが、世の中には「起きている時間の50%を空想に充てる」という人も実在します。これまで注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状の一種と扱われてきた空想中毒が実際には独立した精神障害かもしれないという研究結果を、イスラエルの研究チームが新たに報告しています。
Could immersive daydreaming underlie a deficit in attention? The prevalence and characteristics of maladaptive daydreaming in individuals with attention‐deficit/hyperactivity disorder - Theodor‐Katz - - Journal of Clinical Psychology - Wiley Online Library
Study suggests maladaptive daydreaming should be classified as a unique mental disorder, distinct from ADHD
https://www.psypost.org/2022/04/study-suggests-maladaptive-daydreaming-should-be-classified-as-a-unique-mental-disorder-distinct-from-adhd-63025
'Maladaptive Daydreaming' Could Be a Distinct Psychiatric Disorder, Scientists Claim
https://www.sciencealert.com/psychologists-propose-maladaptive-daydreaming-as-a-unique-psychiatric-disorder
空想は大半の人が日常的に行うという普遍的な行為ですが、「空想にふけってしまって日常生活に支障が出ている」という状況は普遍的なものではありません。日常に支障をきたすほど空想にふけってしまう状態には「Maladaptive Daydreaming(不適応空想)」という名称が与えられていますが、今のところ不適応空想は精神障害の一種だとは分類されておらず、ADHD患者が示す過集中の一種という扱われ方をしているとのこと。
新たにイスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のニリット・ソファー=デュレク氏らが発表した研究は、「不適応空想はADHDから独立した別個の精神障害である可能性がある」という内容。ソファー=デュレク氏らの研究チームはオンラインで集められたADHDを有する被験者98人に対して、自身が抱えるADHDの症状や不適応空想についてのアンケート調査を行いました。その結果、59人に不適応空想が疑われたため、この59人に対して別個に面談を受けるようにオファーを提示。44人が面談を受諾し、17人が不適応空想にあたると正式に判定されました。
面談を受けなかった被験者も考慮に入れると、今回の調査では「ADHDを抱える被験者のうち約20〜23%が不適応空想に当てはまる」という結果でした。他方、これまでの研究結果では「不適応空想に当てはまる人の77%がADHDと診断されている」という結果が得られていることから、研究チームは不適応空想とADHDは関連はあるものの別個であると判断して、「不適応空想はADHDの症状の一種というよりも、不適応空想という精神障害が別個に存在して、不適応空想になるとADHDの診断基準を満たしてしまうのでは」と考えたとのこと。
今回の研究結果について、ソファー=デュレク氏は「不適応空想が正式に精神障害だと認定された場合、不適応空想だと診断された人がADHDだというのは不適切な気がします。不適応空想になることはADHDの基準を満たすことにつながりますが、ADHDになることは不適切空想の基準を満たすことにはつながりません」と述べて、不適応空想とADHDが本質的に別個だという可能性があると語りました。