「自分を受け入れて、わがままになって」 女性経営者から頑張りすぎる女性へのメッセージ

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ジェンダーギャップが大きいとされる日本。意思決定ができる場にいる女性の割合もまだまだ低く、男性社会に合わせられる女性だけがキャリアを積んで生き抜くことができるというのがこれまでの社会だったといえる。

そんな中で女性が自分らしくイキイキと働き、キャリアを積んでいくには、何が必要なのか。その答えの一つとして「ヘルスリテラシー」を提唱するのが、女性向けのサービスを提供する株式会社ジョコネ。の代表で、『女性がイキイキと働き続けるためのヘルスリテラシー』(セルバ出版刊)を著した北奈央子さんだ。

今回は北さんに「ヘルスリテラシー」とは何か、女性特有の健康課題にどう個人、組織が向き合えばいいのかお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■過酷な仕事環境から病気に…。その後悔と気づき

――『女性がイキイキと働き続けるためのヘルスリテラシー』についてお話をうかがっていきます。まずはじめに、本書の執筆の動機から教えていただけますでしょうか。

北:私は会社を経営しながら大学院で女性のヘルスリテラシーについて研究をしているのですが、その中で女性である自分自身ですら体のことや心のことを知らなかったということに気づいて、驚いたんです。そして、同じように自分自身のことを知らない女性たちに、自分の体や心のことを知ってほしいと思って、執筆をさせていただきました。

――今おっしゃられた「ヘルスリテラシー」という言葉がキーワードになるかと思います。本書の中では「自分力」と定義されていますが、具体的にどのような力なのでしょうか。

北:「ヘルスリテラシー」は、私が研究をしている大学院の教授は「健康を決める力」としています。いろいろな使われ方をしていますが、一番大きな概念で言うと、健康になるための力なので、健康・医療の情報を入手するところから、何が書いてあるかを理解し、その情報が正しいかどうか、自分に必要かどうかを見極め、実際に行動に取り入れるまでを含みます。

ヘルスリテラシーの研究をしていて、まだまだ日本はジェンダーギャップが高い状況にあり、これにより女性特有の月経や更年期の不調といった健康課題も周囲に言いにくいとか、我慢してしまうところがあって、女性自身も症状を抑えて見ぬふりをしているところがあることに気づきました。

そんな頑張りすぎている女性に対して、自分を大切する力である「自分力」を高めていこうとメッセージを送りたい。ご自身を大事にしてくださいとこの本を通してお伝えしたいんですね。

――「自分を大切にしてほしい」というメッセージはとても印象的です。具体的にどういう風に行動をしてほしい、考え方を変えて欲しいと考えていますか?

北:研究の中でたくさんの女性にインタビューさせていただいたのですが、非常に印象的だったのが「良い女性でなくてはいけない」「良い奥さんにならないといけない」「子どもを産まないといけない」といった、社会から期待されている女性像になろうとして、苦しんでいる方が多かったということなんです。

でも、子どもを産むかどうかは選択肢の一つですし、女性だって料理ができなくてもいいし、おしとやかでなくてもいい。世間が要請する女性像ではなく、自分自身を受け入れて認めることが大事だと感じます。また、更年期の方ですと、若くなくなる自分を受け入れられないというおっしゃる方も多くて、やはり自分を受け入れて、わがままになってもいいのではないかと思うんです。

――「女性らしさ」を要請するような社会の空気はいまだに根強いわけですね。

北:そう思いますね。多様性と言われるようになってきましたが、とても根強く残っています。私の娘は今、3歳なのですが、いつの間にか女の子は可愛い、男の子は格好いい、ということがインプットされていて、驚くくらいジェンダー意識が頭に入っています。

私の娘は早くから保育園に入れているので、周囲の大人であったり、あとは祖母ともよく話すので、そういうところから少しずつインプットされているのかなと。また、子供服売り場に行っても、男の子は青、女の子はピンクが定番ということは変わっていなくて、そういう部分からも影響があるのではないかと思います。

――北さんご自身についてお聞きしたいのですが、もともと医療機器メーカーに勤務されていて、現在は研究をしながら、会社を経営するワーキングマザーでもあるということで、バイタリティ溢れるキャリアを歩まれています。特に医療機器メーカー時代はかなり働いていたそうですね。

北:そうなんです。心臓外科の担当が長くて、お医者さんも男性、現場の営業も男性、私はその営業と一緒に動くことが多い職種だったのですごく働いていました。月経がつらくても言い出しにくかったし、そもそもその会社自体に「発熱しても出社して働く」みたいな風潮が当時あったので、つらいから休ませてほしいということも言えませんでした。当時はどっぷりつかっていたのでそれを楽しんでしまっているようなところもありました。

また、私自身キャリア志向が強かったこともあって、子どもを産むとなるとキャリアにマイナスになるのではないかという思い込みもあって、子どもを持つかどうかを自分自身、そしてパートナーと向き合って考えられなかった部分もあります。

――過酷な環境ですね…。その中で転機はどのようにして訪れたのですか?

北:30代半ばになって、あるとき会社を休むくらい月経痛がすごくつらくなってしまって、ようやく婦人科に行きました。そうしたら子宮内膜症という病気が見つかったんです。今思えば、鎮痛剤を飲んで痛みを抑えずに、もっと早くちゃんと病院に行って診てもらっていたら、手術までしなくて済んだかもしれないし、毎月つらい思いをしなくて済んだのかもしれなかったですね。

――ブラック気質の会社に、一緒に働く人が男性ばかりという環境ですと、相談もできませんよね。

北:そうですね。その時は、症状が抑えられて仕事ができればいいと思っていたので…。ただ、当時のキャリア志向も含めて、結局は周囲からの評価を気にしたり、人から「すごい」と言われたいという思いが強かったのではないかとも思います。自分が本当にそうしたかったのかというと、今では自信を持って「そうしたかった」とは言えません。

――子宮内膜症という病気が分かって、健康に対する意識が変わったのでしょうか?

北:子どもを産むということをちゃんと考えて、月経痛をメンテナンスすることが大事だと思えていれば、仕事を優先せず、1回病院に行ったと思います。自分の人生を大事にできていなかったということに気づきましたね。

また、ヘルスリテラシーの勉強をするまでは、人が病気になるのは運だと思っていたんですよ。でも、実際はライフスタイルが半分影響するというデータもあって、結局自分の生活スタイルが決めているといっても過言ではないんですよね。それを知ってからはだいぶ意識が変わりました。

(後編に続く)

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