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 大阪は安くて美味しい大阪グルメとお笑いの街ですが、その2つを象徴するようなお店があります。それが、大阪・なんばにある『千とせ』。雑誌などで大阪グルメの特集が組まれると、必ずといっていいほど登場する有名店です。

『千とせ』の名物といえば、「肉吸い」。最近、関東でも少しずつ提供する店が増えているようですが、やはり名店は一味違う。とっても優しい味わいで、大阪食べ歩きの昼食にもピッタリなんです。

「千とせ名物肉吸い」と書かれた暖簾のあるお店の前に立つと、ダシのいい匂いが漂ってきます。本来はうどん屋なのですが、名物は肉うどんからうどんを抜いた「肉吸い」。この変わったネーミングは、肉入りの吸い物として食べるので“肉吸い”と名付けられたそうです。

 店舗があるのは、吉本新喜劇が上演している「なんばグランド花月」から歩いてすぐの場所。劇場近くということで、出番前の芸人さんたちによく利用されていました。そしてこの「肉吸い」は、ここに通っていた花紀京という吉本新喜劇で人気だった芸人がきっかけで何十年も誕生したそう。

 ある日、ひどい二日酔いの花紀京さんがお店を訪れ、重たい物は食べたくないと「肉うどん、うどん抜きで」と注文しました。これが「肉吸い」の誕生秘話。この食べ方が芸人仲間で広まってテレビなどで話すうち、すっかり『千とせ』の人気メニューとなって、今ではうどんよりも遥かに注文が多くなってしまったそうです。

玉子かけご飯と一緒に味わうのが通の食べ方!

肉吸い700円と小玉220円

 それでは『千とせ』の「肉吸い」を食べてみましょう。こちらでは肉吸いと一緒に、小玉(しょうたま)と呼ばれる玉子かけご飯を一緒に食べるのがポピュラー。

 二日酔いだった花紀京さんはともかくとして、「やっぱりお腹にたまる物も食べたい」と、せっかく抜いた炭水化物をまた注文するという矛盾を楽しむ組み合わせ。素直に肉うどんにしないあたりが、大阪人らしさの表れかもしれません。

 と思っていると、肉吸いと小玉が出てきました。ダシの香りと甘辛いお肉の香りで「いかにも美味しそうな肉うどん!」と一瞬思いますが、もちろん、うどんは入っていません。

 まずは、お肉とネギを一口、ダシをひとすすり。甘辛いお肉とダシの風味は、ソースや粉物とはちょっと違う大阪の昔ながらの優しくて美味しい味がします。

 肉吸いの中には半熟の卵が入っていて、栄養も満点。「二日酔いの時は肉吸いを食べる」という通説通り、一気にもたれた胃腸が回復しそうです。

 一緒に注文した小玉がこちら。テーブルの上に専用醤油があるので、卵かけご飯としてまずは一口。次に肉吸いの肉とネギを乗せて、牛丼風にしていただきましょう。肉吸いのダシも入った一杯をガガガーッと流し込んで食べると、また違った美味しさ!

「肉吸い」は、すっかり『千とせ』の看板メニューとなっていて大半の人が注文していますが、もちろん普通のうどんも美味しいですよ。

 とはいっても、美味しい食べ物が多い大阪。ほかの料理も食べ歩くなら、うどん抜きの肉吸いがちょうどいい量なのかも知れません。

(撮影・文◎けいたろう)

●SHOP DATA

千とせ本店

住:大阪府大阪市中央区難波千日前8-1
TEL:06-6633-6861
営:10:30~14:30 ※売り切れ次第終了
休:火曜
https://www.chitose-nikusui.com/chitose/

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。