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 こんにちは! 羊肉の消費者団体・羊齧協会の代表の菊池です。毎日暑くてじめじめした日が続くなか、今回は羊とスパイスの話題をお届けします。

 今回は久々のお取り寄せ。しかもカレーです。カレー好きとしてはそれだけでテンションが上がるうえ、そこにラム肉が入るとなれば、もう言葉はありません! 今回取り寄せたのは「DASHI CURRY TOKYO」のラムキーマです。

 この商品の前身は2018年にクラウドファウンティングでデビューした、レトルトの「だしカレー」。在イギリス日本大使館での公式レセプションに日本代表カレーとして採用されるなど、SNS上でもかなり話題になっていたので、以前から注目していたカレーでした。

『麺や庄の』や東京スパイス番長など、プロフェッショナルが集結して作られた「だしカレー」

 個人的にこのカレーに惹かれたのは、もともと何となくジャンルとしてあった「出汁+カレー」を再定義し、確固たるものにしている部分。これ、実はとても大切でして、世の中にあふれるほぼ全てのジャンルの食べ物や商品は、きちんとした定義づけがなされた後に発展するのです。

 そして今回ご紹介するカレーは、その定義づけにバシッと成功していると思います。出汁のプロ、スパイスのプロなどがコラボして作っただけあって、味はお墨付き。非常に美味しいカレーでした。

 しかし! この「だしカレー」、最高に旨いののはいいんですが、惜しむらくは(というか羊齧協会の代表としての立場としては)羊肉が入ったバージョンがないことを、常に残念に思っていました。そしてそのまま今年をもって終売に……。

 ところが今年に入って、終売した「だしカレー」に新しい仲間が誕生したとの情報をキャッチし、さっそく注文してみることに。また買おうと思った決め手は、今回はラインナップになんとラムキーマがあったこと。そう、とうとう羊肉が仲間入りしたのです。これは期待で胸がふくらみますね。

パワーアップして復活した「DASHI CURRY TOKYO」

「3種の和風キーマセット」4500円。ラインナップは「チキンキーマ」「ポークキーマ」「ラムキーマ」。1袋だと1600円

 今年7月に復活した「だしカレー」、かなりパワーアップしています。具体的には、第一弾はレトルトだったのが、今回はなんと注文が入ってからシェフが手作りし、急速冷凍してから配送する点。つまり以前に比べ、味も鮮度も段違いに良くなっているんです。ドキドキして待つこと数日、ようやく届きました。

手作りですが梱包もラベルもおしゃれ。同梱資料は作成中というほど発売したてのほやほや

 届いて開封した時点で我慢できずに、さっそく調理にかかります。といっても超簡単。届いたパックをそのまま5分湯煎するだけ。

 湯煎しながら、透明のパックなので、カレーが溶けていくのが見えるのですが、想像以上にシャバシャバ! 以前のだしカレーはドロッとしていたので、けっこう変わったイメージ。最初はご飯にかけず、別のお皿によそってまずは中身を確認。

本当に思った以上にシャバシャバ。スープカレーに近い感じです

 まず感じるのはスパイスの香り。しかし、すぐにダシの香りも追随してきます。ダシの香りがスパイスの香りに負けずに漂ってくるんです。カレーを食べようとしているのに、まるで実家で味噌汁が出てきたような安心感。

 ちなみにダシは、たっぷりの煮干しと昆布に、鰹節とサバ節を加えて仕立てたもの。それをスパイスの効いたカレーに加え、さらに特性の煮干しオイルで香りとコクを出しているそうです。ものすごいこだわりですよね。

 それにしても、最終的に日本人の心に響くのはこのダシの香りであり、ダシは日本人のDNAにしみついているんだな……ということを、なぜかカレーから改めて気づかされました。

オーストラリア産ラム肉をチョイスしたセンスが光る。

超粗挽き。この挽き具合がさらっとしただしカレーに合う

 シャバシャバのカレーの中には、超粗挽きの羊が! もう、本当に心から「わかってらっしゃる」と言いたい。粗挽きの羊肉は、噛みごたえのある食感と羊らしい味わいが美味しいのですが、その中でもほとんど小さな角切りに近いこの切り方が、シャバシャバのカレーにベストマッチ。さらりとしたカレーに、ちょうどいい粗挽き具合なのです。いや、本当にわかってらっしゃる。

 ちなみに、ラム肉はオーストラリア産を使用しているそうです。オージーラムは、ほかの国に比べて肥育期間が長いのが特徴。肥育期間が長いと、羊独特の美味しい味わいが出てくるため、スパイスとの相性が増すのです。そして、程よい噛み応えもあるので、まさにカレーにはうってつけの羊と言えるでしょう。

超硬めに炊いたお米との相性が抜群だったので、次回はバスマティなど長粒種のお米で試したい

 スパイスの刺激的な香り、ダシの暖かなコク、そして羊の旨み。これらが三位一体となり、今まで経験したことがあまりない、不思議な美味しさを感じます。ちょっと硬めに炊いたお米との相性が最高にイイ! 年甲斐もなく、途中でご飯をおかわりしてがっついてしまいました。

 結論としては、羊好きとして、そしてカレー好きとして、すんごい心にもお腹にもしっくりくるカレーでした。ちなみに、辛みは食べた後やや舌に残る程度。辛いものが苦手な人やお子さんでも十分楽しめると思います。

 コロナ禍を経て、日本では宅配サービスやお取り寄せが急速に注目されるようになりました。少し前まではパンデミックを乗り切るための一時しのぎ的なお取り寄せも多かった気がしますが、もはや今年に入って、お取り寄せグルメ単体で十分楽しめるハイレベルなものが増えています。

 このカレーはまさに、日本に根付きゆくハイレベルなお取り寄せ文化を体現する逸品だと思います。ぜひお試しを。

●DATA

DASHI CURRY TOKYO

https://dashicurrytokyo.com/

●著者プロフィール

菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で羊料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼して羊好きの消費者団体「羊齧協会」を結成。本業はイベントの開催・運営、アドバイザー業務など。四川フェスの運営団体・麻辣連盟の幹事長も兼務。監修書籍に「東京ラムストーリー」(実業之日本社)、「家庭で作るおいしい羊肉料理」(講談社)など