この間まで元気だったのに、突然やってくる体の不調。
整理収納コンサルタントとして活躍する、瀧本真奈美さんも50歳を目前にした2年前に、急に体の不調、体力、気力、行動力の低下が現れるようになったそう。

思うように動けなくなってきたときに困るのが、家事などの日常生活です。
「真っ先に今の自分の体に合わせた暮らしにしなければ」と考えたという瀧本さんがまず手をつけたのは、毎日使うキッチン。収納や仕組みをどのように変えたのか、教えてもらいました。


ものが少なくすっきりと片づいた瀧本さんのキッチン

取り出しやすくしまいやすいキッチンに変えたポイント



雑貨屋さんやカフェのような暮らしがしたいと、たくさんの大好きなものに囲まれた過去の暮らし。DIYをしたり棚を増やしたり、変えたりしながら、飾るように収納していた以前の画像を見ていると、なにより楽しそうなそのときの暮らしが思い出されます。

<BEFORE>


オープン棚で見せる収納にしていた頃のキッチン

ただ、2年ほど前に突然不調が訪れ、右腕が痛くて痛くて腕を挙げることも、重いものを持つことも、日常生活すらままならない日々に。なにもやる気が起きずに楽しいことも見つかりにくい時期でした。

今思えば、人生のステージが上がる節目の年だったのかもしれません。
今までの私とはなにかが絶対に違う! そう感じて、今の自分に合った暮らしに変えようと決心し、毎日立つキッチンの仕組みから見直すことにしました。

今回は、「ラクに暮らそう」そう決めたあとのキッチンの変化から、今のキッチンと、今思うことまでをまとめてみたいと思います。

●その1:掃除がしやすい、しまう収納へシフト




食器もしまい「見せない収納」に変更

食器や調理器具を並べたりつるしたり、飾るように見せる収納はとてもかわいらしく画像映えのする、楽しい雰囲気のキッチンになります。

<BEFORE>


並べたり、つるしたり「見せる収納」を楽しんでいた頃

ですが必ずある悩みがつきまといます。

それは「ホコリ」。

わが家は2人暮らし。毎日使う食器の量はせいぜい数枚。調理器具もさほど使わない。なのに、まったく動かさない食器や調理器具が表に並んでいたのです。

あまり使わない食器や調理器具に、毎日のようにたまるホコリを払い続けて掃除をしていたとき、ふと「あれ? なんの意味があってこの家事をしているんだろう?」と、疑問が一気に湧き上がりました。

当時は出張も多く、限られた家時間でなかなか家事をこなせない悩みもあったので、即座にカップボードを購入し、余計な家事を減らすために見せない収納へシフトしました。

●その2:徹底的にものを減らし、少数精鋭に



カップボードの引き出しに取り出しやすく収納するには、数を見直す必要がありました。なるべく同じものだけを重ねる収納、ゆとりがあって片づけ動作が大変にならない収納を意識。

例えばこの引き出しを掃除したい。そう思ったとき、どれだけの労力が必要だろうと考えました。「このくらいの量なら、今の私でもそうおっくうにならずによけて掃除ができる」「今の自分が無理なくこなせる家事に変えるのは、自分しかいない」と考えるようになりました。

食器だけではなく調理器具も、本当に使うものだけを残し、飾っていただけの雑貨も手放しました。

●その3:わかりやすい、さっと片づくを大切に




カトラリー類は引き出しの中でクリアケースの仕切りを使って出し入れをらくに

年齢が上がると、目や頭のなかも疲れやすくなります。できれば家にいるときには無駄な労力は使わないようにしよう。そう考え、いかにたくさんのものをもっているか、たくさんつめ込めるかという、もののもち方や収納をやめて、いかにわかりやすく無意識に使えて片づけられるかというもののもち方、収納に変化しました。

この変化は、その後の家事シェアにも大きく役立っています。
今では夫も高い頻度でキッチンに立ち、まるでコックピットにいるかのように必要なものを出し入れして手伝ってくれています。

●その4:扱いやすい軽さと、使いやすい高さを意識




調理台下の収納。使う頻度が低いものは、低い場所や高い場所に移動

ものを選ぶときは、軽いかどうかで選ぶようになりました。

重いものは使う際にさらに重量が加わり、体に負担がかかると考えるようになったのです。右腕は今は完全に元に戻りましたが、これは傷めたことで気づいたこと。

長年使いこんだ体に対して優しく。今はそう考えています。両手でよいしょ。と声が出るものは避け、片手ですっと扱える。そんなものに今もシフト中です。

また、収納に対しても同じ。普通に立った状態で手が届く位置がいちばん使いやすい高さ。そこから距離があればあるほど重力もかかり身体に負担もかかります。高い場所、低い場所にはよく使うものは収納していません。

●その5:今の自分に合わせて、臨機応変に仕組みや形を変える




コロナによって家時間が増え、さらに調整した、最新のキッチンです。

じつは徹底的にものを減らしたキッチンからは、飾り棚のインテリアなど、少しものが増えています。「ものなんてなくていい!」と、血眼になって不要なものを探していた私はまた、過去の自分となりました。

今は、楽しみを見つけにくい時代。家の中で楽しいを見つける必要があります。とは言え増えたものにまた苦しまないように、バランスを見ながら楽しみを見つけ出そうとしています。

振り返ると過去には、インテリアブロガーだから飾らなきゃ。整理収納のプロだからものを徹底的に見直さなきゃ。とどこか自分で決めた自分像に縛られていたのかもしれません。

「私はこんな人のはず。私はこうあるべき」
「家とはこうあるべき」

自分の体や心の大きな変化に加えコロナ禍を経験している今、思うのは、この考え方こそ、いちばんに手放すものだなということ。

今の自分にはなにが大切で、今の自分はどうしたいか。
過去にとらわれず今を大切にしながら、自分も暮らしも成長していけたらと思っています。

●教えてくれた人
【瀧本真奈美さん】



1970年生まれ、愛媛県在住。3LDKの戸建てに夫と2人暮らしで、5人の孫がいる。元看護師で、現在は整理収納コンサルタント、暮らしコーディネーターとしてブログ『暮らしごとレシピ
』や、SNSなどで発信。インスタグラムは@takimoto_manami
。著書に『自分に心地よい小さな暮らしごと
』(主婦の友社刊)など