主婦業のかたわらエッセイストとしても活動する若松美穂さんが、楽しく、豊かに暮らすためのさまざまな工夫をつづります。

東日本大震災を機に、実の母と同居を始めた若松さん。家族だからといって、最初からスムーズにいったわけではないと言います。
同居生活で感じたことを執筆していただきました。

母と私のドタバタ暮らし〜困ったことは金銭感覚の違い〜




母との暮らしで、困った…と思ったのは、家計費感覚の違いでした。
もちろん、親子ですから似ているところもあります。私自身、無駄遣いが好きではないように、母もあまり自分にお金をかけません。彼女が楽しそうに買い物をしている姿は記憶にないですし、職場の美容室内ではユニフォームで過ごしますから、普段のおしゃれは特段必要ない。

美容師として講師をするなど、人前に出る際の洋服やバッグは、買い物好きの祖母が購入したブランド物を、素直に身につけていました(母が自分のものを買いに出かけている時間はなかったので)。

それならいいじゃない? なにが困るの? と思われるかもしれません。
困ったことは、母が食材や生活雑貨など、一般的なものの価格を知らないことでした。当時65歳でそんな人います? という感じですが、私の目の前にいました(笑)。

私の実家は亡き父がお店の経理や家計の管理をしていたので、「○○が必要」と言うのが母の役目。お金を用意するのが父の役目でした。「私はお金を見ないで暮らしてきた」と本人が言うとおり、母は金額を知る必要も、お金の使い道を検討、配分をする必要もなかったのです。

美容室が水道代や光熱費、必要な材料の心配をしていたら商売になりません。繁盛もしていましたから、母としては施設投資、営業投資は当たり前。かかるものにはかけて発展させていく、その感覚があってこそ、お店が続いてきたのです。

ただ、サラリーマン家庭のわが家計はそうは行きません。やたらと、「あそこをこう変えたらいい」「新しい電化製品や家庭用品を買い変えたらいい」という母には、その都度、丁寧な説明が必要でした。

また、これまで買い物をしたことのない人が買い物をするチャンスを得たら、もう大変です。スーパーでは、高いも安いもわからず買い物カゴに入れます。TVショッピングは、見たことがないものばかり。「いいわね〜!」と感じまくり。買ったところで、収納場所を用意するのも使いこなすのもこちらの仕事になります。
とうとう私は“TVショッピング視聴禁止令”を出しました。いちいち適正価格を教え、買いたい欲を止めること、疲れましたよ。

なんだか最近、父の気持ちがわかるような気がするのです。店舗でかかるお金の説明をしようとしている父と、「説明されてもわからない」という母が言い合う姿を思い出すからです。
あの頃は、父が細かいのかしら…くらいに思っていました。でも今、家計管理をする私は、「丸投げではなくて、ともに考えて、理解してくれる人がほしかったんだよね。お父さん」と思ったりします。

【若松美穂(わかまつみほ)】



お金をかけずにセンスと工夫でおしゃれに暮らすカリスマ主婦読者として、生活情報誌『ESSE』や『サンキュ!』などで紹介され人気者に。2011年、心理カウンセラーの資格を取得。主婦業のかたわら、エッセイストとしての執筆活動のほか、講演、各メディアへの出演など多方面で活躍。夫と娘2人、母親の5人家族。埼玉県在住。公式サイト「“いま”と“みらい”のへや
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