【アジア最前線:中国】CSLに新王者が誕生…江蘇蘇寧がリーグ制覇できたワケ
スーパーリーグ史上8つ目の優勝クラブに
今シーズンの中国スーパーリーグの終盤戦は、ファンにかつてないほどの興趣をもたらした。これまでなら、終盤戦を迎える頃には優勝チームが決まっていることが多く、リーグ戦ならではの消化試合もたくさんあった。しかし今シーズンは、新型コロナウイルスの影響で大会方式が変更され、白熱のトーナメント戦の末に驚きの新王者が誕生している。
以前にこの連載で伝えたとおり、今シーズンはホーム&アウェイ方式を取りやめ、全16チームを2つのグループに分けて集中開催のミニリーグを実施。各々の上位4チームが、チャンピオンシップステージと呼ばれる決勝トーナメントに駒を進めた。当初、リーグ王者をトーナメント戦で決定する変更には、一部から批判的な意見が寄せられたものの、予想しにくいノックアウト方式と熱戦の数々は、近年で最高の視聴者数を獲得している。
蘇州市で集中開催された2試合制のチャンピオンシップステージでは、優勝候補の広州恒大、上海上港、北京国安が順当に4強へ進出した。残る一つは、重慶力帆を僅差で破った江蘇蘇寧だ。このときは、彼らが一番のアンダードッグだった。
準決勝では、広州がパウリーニョとタリスカのゴールで北京との強豪対決を制した。もう一つのセミファイナルは2試合ともに1−1となり、勝負は延長戦へ。江蘇はいら立つ上海の一瞬の隙を突き、途中出場のルオ・ジンが投入されてから6分後に強烈な一撃を決めて、これが決勝点となった。
決勝も2試合制で行われたが、第1戦は見るべきところの少ないスコアレスドローに終わり、シーズン最後の90分間にすべてが委ねられることになった。前半から激しいタックルの応酬となり、ハーフタイム直前には広州のチャオ・ヘが江蘇のアレックス・テイシェイラのシュートチャンスをファウルで阻み、レッドカードを提示される。これがターニングポイントとなり、ボックス際で得たフリーキックをエデルが直接ねじ込んで江蘇が先制した。
さらに、後半開始早々にテイシェイラがすさまじいミドルで追加点を決め、江蘇がリードを広げる。その後、広州の反撃を1点にとどめた江蘇がスーパーリーグ史上8つ目の優勝クラブとなった。
蘇寧電器グループに買収されて命運が好転
過去10シーズンで実に9度もリーグを制している広州を相手に、番狂わせを起こして優勝した江蘇とは、どんなクラブなのか。
かつては近隣の上海の影に隠れた存在だったが、2015年の暮れに南京に本拠を置く蘇寧電器グループ(インテルを所有するコングロマリット、蘇寧グループの一つ)に買収され、命運が好転した。巨額の資金を得たクラブはさっそく、2016シーズン前の移籍市場で派手に動き、ラミレスとテイシェイラの獲得で中国における移籍金の記録を2度更新している。
その2016シーズンにはリーグで2位につけたものの、以降は12位、5位、4位と続いていた。今シーズン、江蘇が初優勝できたのは、特異な形式を味方につけたからと言えそうだ。
実際、今シーズンの各試合の総勝ち点では広州がトップだった。だが、3年目のコスミン・オラロイ監督のもとで鍛えられた江蘇は、実利的なアプローチでいかなる相手も苦しませた。夏に加入した元ブラジル代表ミランダが堅牢な最終ラインを支え、元ガーナ代表ワカソ・ムバラクが中盤を引き締める。そして逆襲を締めくくるテイシェイラとエデルのアタッキングデュオが得点源となった。
現在51歳のルーマニア人指揮官は、現役時代に韓国の水原三星やジェフユナイテッド市原(現・千葉)でプレーし、引退後は中東のクラブやサウジアラビア代表の監督を歴任。複数のトロフィーも手にしているアジアでの成功者だ。
通常のシーズンだったら、江蘇の優勝はなかったかもしれない。だが、要所で強大な相手を下して初優勝を遂げた彼らは、大きな賞賛にふさわしいチームだ。
文=超明
翻訳=井川洋一
今シーズンの中国スーパーリーグの終盤戦は、ファンにかつてないほどの興趣をもたらした。これまでなら、終盤戦を迎える頃には優勝チームが決まっていることが多く、リーグ戦ならではの消化試合もたくさんあった。しかし今シーズンは、新型コロナウイルスの影響で大会方式が変更され、白熱のトーナメント戦の末に驚きの新王者が誕生している。
以前にこの連載で伝えたとおり、今シーズンはホーム&アウェイ方式を取りやめ、全16チームを2つのグループに分けて集中開催のミニリーグを実施。各々の上位4チームが、チャンピオンシップステージと呼ばれる決勝トーナメントに駒を進めた。当初、リーグ王者をトーナメント戦で決定する変更には、一部から批判的な意見が寄せられたものの、予想しにくいノックアウト方式と熱戦の数々は、近年で最高の視聴者数を獲得している。
準決勝では、広州がパウリーニョとタリスカのゴールで北京との強豪対決を制した。もう一つのセミファイナルは2試合ともに1−1となり、勝負は延長戦へ。江蘇はいら立つ上海の一瞬の隙を突き、途中出場のルオ・ジンが投入されてから6分後に強烈な一撃を決めて、これが決勝点となった。
決勝も2試合制で行われたが、第1戦は見るべきところの少ないスコアレスドローに終わり、シーズン最後の90分間にすべてが委ねられることになった。前半から激しいタックルの応酬となり、ハーフタイム直前には広州のチャオ・ヘが江蘇のアレックス・テイシェイラのシュートチャンスをファウルで阻み、レッドカードを提示される。これがターニングポイントとなり、ボックス際で得たフリーキックをエデルが直接ねじ込んで江蘇が先制した。
さらに、後半開始早々にテイシェイラがすさまじいミドルで追加点を決め、江蘇がリードを広げる。その後、広州の反撃を1点にとどめた江蘇がスーパーリーグ史上8つ目の優勝クラブとなった。
蘇寧電器グループに買収されて命運が好転
過去10シーズンで実に9度もリーグを制している広州を相手に、番狂わせを起こして優勝した江蘇とは、どんなクラブなのか。
かつては近隣の上海の影に隠れた存在だったが、2015年の暮れに南京に本拠を置く蘇寧電器グループ(インテルを所有するコングロマリット、蘇寧グループの一つ)に買収され、命運が好転した。巨額の資金を得たクラブはさっそく、2016シーズン前の移籍市場で派手に動き、ラミレスとテイシェイラの獲得で中国における移籍金の記録を2度更新している。
その2016シーズンにはリーグで2位につけたものの、以降は12位、5位、4位と続いていた。今シーズン、江蘇が初優勝できたのは、特異な形式を味方につけたからと言えそうだ。
実際、今シーズンの各試合の総勝ち点では広州がトップだった。だが、3年目のコスミン・オラロイ監督のもとで鍛えられた江蘇は、実利的なアプローチでいかなる相手も苦しませた。夏に加入した元ブラジル代表ミランダが堅牢な最終ラインを支え、元ガーナ代表ワカソ・ムバラクが中盤を引き締める。そして逆襲を締めくくるテイシェイラとエデルのアタッキングデュオが得点源となった。
現在51歳のルーマニア人指揮官は、現役時代に韓国の水原三星やジェフユナイテッド市原(現・千葉)でプレーし、引退後は中東のクラブやサウジアラビア代表の監督を歴任。複数のトロフィーも手にしているアジアでの成功者だ。
通常のシーズンだったら、江蘇の優勝はなかったかもしれない。だが、要所で強大な相手を下して初優勝を遂げた彼らは、大きな賞賛にふさわしいチームだ。
文=超明
翻訳=井川洋一