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ハロウィン パトカー風にクルマ仮装

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

今年は全国的におとなしいハロウィンとなったようだが、北海道札幌市の繁華街では、パトカーをめぐる、とんでもない騒動が起こった。

「北海道県警」の名前が入った、一見、道警のパトカーに見えるクルマが札幌市内の繁華街を走行しているシーンが動画共有サイトに投稿されたのである。

2020年10月31日にSNS上でシェアされた偽物のパトカー。

動画によると、パトカー風の車両から人が体を乗り出すようにして叫び声を上げながら繁華街を走行。それを追いかけていく警察官風の男性二人の様子も映っていた。

筆者もその動画を見てみたが、パトカー風に仮装されたクルマはトヨタ・クラウンS150系。1995年8月〜99年9月まで製造された古いモデルだが現在も現役のパトカーとして採用している地域もある。

しかしながら、動画のクラウンはパトカーとして採用されない「ハードトップ」の車型なのでそもそもニセモノなのである。

わかる人が見れば、ありえないパトカーなわけだが、クルマは白と黒に塗り分けられて、屋根には赤灯らしきものが乗っている。

ボディサイドには「北海道警察」の文字も記されていた。

ちなみに、動画の偽パトカーの「北海道警察」をホンモノの北海道警察のパトカーを見比べてみると、本物は「北海道」「警察」でわかれており、ニセモノは「北海」「道警察」でわかれている。

ニセモノには白抜きの「POLICE」の文字もない。

ここで気になるのは、一般の車両をパトカーのように改造することはどこまで許されるのか?

実際にオブジェとしてクラウンをベースにパトカー風の車両を作った「エムクラスガーデン三田」(兵庫県三田市)に聞いてみた。

〇〇警察の文字NG 赤灯にカバーを

「エムクラスガーデン三田」はFRPやレジンコンクリートで造形された動物や恐竜などのリアルディスプレイ商品の製作もおこなう。

パトカーのオブジェは、2020年4月頃に完成させたという。

「エムクラスガーデン三田」が作成したパトカーのオブジェ。    エムクラスガーデン三田

道路を走らせる目的ではなく、敷地内に警察官のオブジェと共に配置する目的で製作したそうだ。

「制作前には警察や役所に相談していましたが、前例がないということで何度か話し合いをさせていただきました」

「わたしが言われたのは『赤色灯と固有名詞「兵庫県警」「三田警察」と書くのだけはダメ』ということでした」

「それ以外は大丈夫みたいでしたね。なお、うちのパトカーにはフロントに赤灯も付けましたが、走らせないので全く問題ありません」

「ちなみに、公道を走る可能性がある場合のパトカー仮装の場合、赤色灯自体を屋根の上に置くことは問題ないそうです」

「公道を走る際にはその赤色灯部分にカバーなどを掛けないとダメだそうです」

また、ナンバーがついていないオブジェとして作られたパトカーの場合、公道を走る場合は仮ナンバー(自動車臨時運行許可)を申請する必要もある。

赤色灯の使用や点灯は道路運送車両法によって厳しく規制されており、映画やドラマの撮影に使う劇用車のパトカーも移動する場合は赤灯にカバーを掛けなくてはならない。

なお、同じパトカーでも「青色防犯パトロール車」(通称「青パト」)なら、自家用車として利用しているクルマを白黒に塗ってパトロールをおこなうことも可能だ。

一般の自動車に回転灯を装備することは法令で禁止されているが、青パトに限っては、警察署で証明申請手続をおこない、車検証の変更をおこなって青色回転灯を点灯させて自主防犯パトロールをおこなうこともできる。

具体的にどんな違反になるのか?

パトカーのようなクルマを警察とは関係ない個人が走らせた場合、どのような違反になるのだろうか?

北海道警察に聞いてみたところ、「道路運送車両法違反になるとは聞いていますが詳細はわかりません」との回答だった。

ちなみに、動画が配信されたことは、道警の記者クラブから問い合わせがあって知ったそう。市民からも中央署に通報が何件かあったとのことだ。

話を戻そう。

大前提として、緊急自動車として届出申請を行って認可されたもの以外の走行は認められていない。違反した場合は、道路運送車両法の届出義務違反となる模様。

全国の警察署で公開されている緊急自動車についての説明文には以下のような記述がある。

1
緊急自動車を所有できる対象や自動車の塗色等について制限がある。

2
緊急自動車を所有できる対象は、公共性、公益性の高い組織・業種に限定されている。(例:警備業者がパトカーを所有して緊急自動車として走行させること等はできない)

3
初めて導入する車両及び初めて申請する場合は事前に最寄りの警察署に相談のこと。

また、サイレン/赤色灯については、東京都の例を挙げておこう。

「緊急自動車の警光灯と紛らわしい灯火を点灯し、又はサイレン音若しくはこれと類似する音を発しないこと」(東京都道路交通規則 第8条第13号)

緊急自動車として認可を受けた車両以外がサイレンを鳴らすことは公安委員会遵守事項違反となる。

なお、赤色灯は認可を受けた救急車やパトカーであっても緊急走行時にのみ点灯が許されているので、当然仮装パトカーの点灯は厳禁だ。

加えて「道路運送車両の保安基準第42条」の「その他の灯火等の制限」において、赤色灯は緊急自動車以外設置が認められていない。備え付けるだけで保安基準違反になる。

さらに、車体の屋根に穴を開けたり、溶接したりして取り付けた場合は全高が変わるので構造変更の届出が必要となる。

前述したように、屋根に置くだけの赤色灯であっても、公道を走る場合は布などで赤色灯を完全にカバーする必要がある。