オリ山本由伸は金子弌大+斉藤和巳 元指揮官が見る凄さ「上手さと強さを感じる」
元オリックス監督の森脇浩司氏が投球術を絶賛
オリックスの山本由伸投手は現在、リーグトップの防御率2.26、132奪三振、8勝3敗と圧巻の成績を残している。自身初の2桁勝利も見えてきた右腕を元オリックス監督で、ソフトバンク、巨人、中日でもコーチを務めた野球評論家の森脇浩司氏は「持ち球はすべて一級品で、経験値が上がったことで試合の流れを考えた投球ができている」と評価。「当時の金子弌大、斉藤和巳を見ているようだ」とパを代表する2大エースの名を挙げている。
前回登板の6日・ロッテ戦では8回2安打9奪三振無失点の快投で8勝目を挙げた山本。昨年、最優秀防御率のタイトルを獲得し、今季も2年連続の同タイトル、そして自身初の2ケタ10勝を狙うプロ4年目の若き22歳エースを、森脇氏も高評価した。
「直球、フォーク、パワーカーブのほかに、さらに3、4種類の変化球がある。全てのボールが一級品で、カウントも取れるし、勝負球にもなる。今年はますます磨きがかかっているし、打者との駆け引きを重ねることで、経験値も上がっている」
森脇氏は6日のロッテ戦に注目。その経験値の高さを感じたのが4回だったという。1死からマーティンを四球で歩かせた後、続く安田に投げた初球だった。山本が見逃しストライクを奪ったのはパワーカーブ。安田は続く2球目の152キロ直球を打ち、遊撃への併殺打に倒れた。この打席で、安田が山本の直球をとらえきれなかった理由は、初球のパワーカーブにあったと森脇氏は紐解く。
「この場面で初球に投じたパワーカーブは効果抜群で、直球狙いでも打ち損じを生む。会心のストレートではなかったが、安田の遊ゴロも致し方ないところだと思う」
パ・リーグのエースと呼ばれた金子弌大、斉藤和巳と重ね合わせ「上手さと、強さを感じる」
この場面、オリックスが4回に3点目となる追加点を奪った直後の出来事だった。仮に安田が打ち、ロッテに得点が入っていれば、流れが一気にロッテに傾く可能性もあった大事な場面。森脇氏は「少し抜け球はあったが、要所で流れが変わらないように考えて投げていた。修正能力の高さを改めて感じた。ゲームの流れを感じながらピッチングすることも大事」と、山本の投球術の高さに目を細めた。
さらに、この日1軍に昇格した高部や茶谷には、多くの球種を使わなかったことも評価ポイントだったという。「初めて対戦する打者には、あえて色んな球種を使わず、球筋を見せなかった。遊び球を使うと球数が多くなってしまう。長いイニングを投げることを考えたピッチングだった」。9回こそ抑えのディクソンにマウンドを託したが、先発として十分な仕事ぶりだった。
森脇氏は言う。「見逃し、空振り、ファールでカウントを稼げる強み、打者がいいバッティングをするのが難しいカウントを作れる的確さが山本にはある。5回まで大量失点せずにリリーフにバトンを渡すのではなく、相手の投手よりも少ない失点で投げ切ることが求められるレベルの投手です」。
これで山本は登板4連勝で、今季8勝目。そして森脇氏の目には、今年の山本は、かつて指導者として接していた当時の金子弌大や斉藤和巳のようにさえ映っているという。
「着実に階段を上がっていて、末恐ろしい。13、14年の金子の上手さに、驚異的な勝率を誇った斉藤和巳の強さを感じる。守備能力も高く、走者に対してもタフで、どれだけの投手になるのか、楽しみで仕方ないですよ」
金子は13年にはリーグトップの10完投、200奪三振で15勝8敗の成績を挙げ、翌14年に16勝5敗、防御率1.98で最多勝と最優秀防御率の2つのタイトルを獲得。チームもソフトバンクと最後まで優勝を争った。斉藤和巳は03年に20勝3敗、防御率2.83の活躍で最多勝、最高勝率、最優秀防御率の3冠に輝き、リーグ優勝。06年にも18勝5敗、防御率1.75、205奪三振で、最多勝、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振の4冠に輝いた。金子は14年、斉藤は03、06年に沢村賞も獲得している。そんな金子や斉藤と比較しても遜色ないという森脇氏。そんな山本の今後の更なる成長が、オリックスの勝利にもつながっていく。(Full-Count編集部)