居酒屋の倒産、コロナ禍背景に急増 過去20年で最多更新が確実
8月までに130件発生、客足戻らなければさらに倒産増加の恐れ
新型コロナウイルスの影響で居酒屋の倒産が急増している。焼鳥店などを含む「居酒屋」の倒産が、今年1-8月までに130件発生した。8月時点で累計100件を超えたのは2000年以降で初めてで、前年同期比で3割多く推移している。このペースが続けば、20年の居酒屋の倒産は過去最多だった19年(161件)を大幅に上回り、過去20年で最多を更新することがほぼ確実となった。こうしたなか新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外食産業の中でも居酒屋は国や自治体の要請により休業や時短営業を余儀なくされ、売上の急減に直面している。経営体力や内部留保などに乏しい中小・零細居酒屋などでは極度の経営悪化が懸念され、先行き悲観から事業継続を諦めるケースがさらに増加する可能性が高い。
中小零細企業の倒産が中心、 地域では東京など大都市圏で多く発生
居酒屋の倒産を負債額別にみると、負債額5000万円未満が130件中105件を占め、全体の約8割が中小零細規模の事業者だった。都道府県別では東京都と大阪府が最も多く、それぞれ21件だった。このうち東京都は23区内の事業者が18件を占め、都内全体の8割超を占めた。居酒屋業態ではランチ営業などを行う店舗もあるものの、基本的には夜5時から明け方までの夜間営業が収益の主軸となる。そのため、時短要請などが行われた都市部では深夜帯に酒類の提供ができず、長期に渡る客足の減少や利益率低下に直面している。そのため資金力や経営体力に乏しい居酒屋が堪え切れず、淘汰が進んだとみられる。
居酒屋業態の売上は「壊滅的な状態」、 中小零細事業者中心に一層淘汰が進む恐れ
日本フードサービス協会が8月に発表した「外食産業市場動向調査」によれば、7月の外食市場は売上高ベースで前年比85.0%まで回復した。緊急事態宣言が発出された4月の売上は前年比60%台まで急減したが、各店舗で営業が徐々に再開しているほか、特にファストフードなどの業態で伸長したテイクアウト需要が牽引し、外食市場全体では厳しいながらも回復傾向にある。ただ、酒類の提供を行う業態では売上高が前年の半分にも満たない水準が続いている。「パブ・居酒屋業態」の7月の売上高は前年比47.2%。4月(前年比8.6%)と比較すると大きく改善したが、前年の水準にはほど遠い。在宅勤務などの広がりを背景に、住宅地が広がる郊外型店舗で売上が伸びている点は追い風だが、メイン市場となる繁華街では自治体からの休業要請に加え、会食を経由したクラスター発生など感染拡大もあり「7〜8月にかけて予約キャンセルもあり売上が減少した」(居酒屋)など厳しい。そのため、同協会では居酒屋業態について、売上が急減した3月以降「壊滅的な状況が続いている」と指摘する。
飲食業態でも他の業態と同様、雇用助成金や家賃支援給付金など政府の資金繰り支援パッケージが充実。早ければ9月から開始予定となる、飲食店を支援する「Go To イート」事業にも期待がかかる。
しかし、特に「夜の街」での外出・外食マインドはコロナ前に比べれば勢いに欠けるほか、「新しい生活様式」に対応したビジネスモデルへの再構築も同時に求められることになる。既に大手居酒屋チェーンなどでは、ソーシャルディスタンスの確保に向け店内の客席を減らすなど、感染防止に向けた空間づくりに万全を期している。
他方、こうしたビジネスモデルの転換は収益力の低下やコストアップなど悪影響も伴う。そのため、経営体力や内部留保に乏しい中小零細業者にとっては変化への対応は容易ではない。コロナ禍以前の収益力まで回復できるか不透明ななか、飲食業者からは「新しい生活様式とリモート出勤の定着で飲食店の淘汰が進む」と懸念する声もあり、居酒屋の今後の動向に注視が求められる。