乗用なのにビジネスカーに分類? 全車全店扱いで車種整理を進めるトヨタが「新旧カローラ」を併売するワケ
新車販売台数のデータは旧型を含めた数字
トヨタ・カローラが売れています。自販連の新車販売データを見ると、2020年に入ってから1月は8480台(登録車ランキング2位)、2月は9898台(同3位)、3月は1万6327台(同1位)、そして4月は6679台(同4位)といった具合です。
とはいえ、このランキングは通称名で分類しています。カローラという名前のモデルはセダン、ハッチバック(スポーツ)、ステーションワゴン(ツーリング)と3種類のボディ展開をしていますし、まして旧型のセダン(アクシオ)とステーションワゴン(フィールダー)も併売されています。売れているといっても単独車種というわけではない、という指摘があるのも事実です。
2020年5月よりトヨタは販売チャネルを再編して、どこでもトヨタ車が買えるようになっています。かつてのようにチャネルごとに専売モデルを用意するというビジネスモデルをやめたのです。それに伴って、ラインアップの整理も進めていく必要がある時期です。にも関わらず、カローラは新旧モデルが併売になっているのはなぜでしょうか。
そのヒントはトヨタのホームページにありました。新旧カローラは乗用車カテゴリーのページに掲載されています。さらにビジネスカーのタグをクリックすると、そこには旧型カローラの2モデル(アクシオ、フィールダー)が確認できます。いずれも5ナンバーで商用車でないのに、なぜビジネスカーに分類されているのでしょう。
ビジネスユースには5ナンバーが求められる
カローラがフルモデルチェンジによって、ついに3ナンバーとなってしまったことに対して、「旧型カローラを併売することで5ナンバーにこだわるユーザーに対応する」という話もありました。世間的には頑固な高齢ユーザーという印象かもしれませんが、トヨタが考えている“5ナンバーにこだわるユーザー”というのはフリートユーザー(大量購入するビジネスユーザー)であることを、ホームページでの分類は示しています。
おそらく一般ユーザーであれば取り回しにさほど差がなければ時間が経てば3ナンバーも受け入れるでしょうが、ビジネスユースでは明確に5ナンバー(小型車)にこだわるニーズがあるということです。自動車税や減価償却といった点で5ナンバー(小型車)と3ナンバー(普通車)の違いはもはやありませんが、ヒエラルキーにこだわる人は存在しますし、また多量の営業車を保管するとなると5ナンバーサイズでなければならないというニーズもあるのでしょう。
また、不動産業界では、お客様を物件に連れて行くときにはセダンを使うという慣例もあり、そうしたニーズでもカローラアクシオは定番のひとつだったりするのです。そのほか自動車学校の教習車も、5ナンバーセダンであることが求められるため、トヨタの教習車はカローラアクシオをベースにして作られています。その意味でもカローラアクシオの継続生産は必須といえます。
じつは新旧併売は初めてではありません。2009年5月にプリウスが3代目にフルモデルチェンジした際にもトヨタは同様の対応をしているのです。プリウスは省燃費カーとしてビジネスユースでも人気でした。そこで、3ナンバーボディとなった3代目で失うユーザーをカバーするために、2代目プリウスをプリウスEXとして継続販売したことのです。ちなみに、プリウスEXが販売を終了したのは2012年3月ですから、5ナンバーハイブリッドの後継モデルであるアクアがデビュー(2011年12月)するまで約3年間も売られたことになります。
そういう意味ではカローラアクシオの後継としてふさわしい5ナンバーセダンが登場するまでは旧型カローラの併売は続くといえるかもしれません。ビジネスユース対応が目的であれば、一般ユーザーが3ナンバーのカローラに慣れても、しばらく旧型カローラは販売されると考えられます。その期間はどれほどになるのかは想像もできませんが、プリウスEXの件を思えば3年程度は売られることでしょう。
もっとも、5ナンバーセダンのニューモデルが登場するというのも考えづらいのも事実。もしかすると、カローラアクシオは隠れた長寿モデルになってしまうかもしれません。