夏の甲子園が中止となった。春の選抜に次ぐ中止である。最終学年の高校3年生は言うまでもなく、すべての高校球児にとって残酷な決定と言うしかない。

 夏の甲子園は地域予選とセットだ。緊急事態宣言が段階的に解除されているとはいえ、全都道府県が地域予選の開催にこぎつけられるのか。予選をスタートすることができても、最後まで終えることができるのか。予選を行なうにあたっては競技場や球技場の消毒などが必要で、それはかなり大掛かりになる。

 都道府県予選が無事に終了し、出場校が出揃っても、新型コロナウイルス感染拡大の第二波、第三波に襲われたらどうするのか。夏の甲子園の開催時に、感染拡大が収束しているかどうかは誰にも分からない。

 都道府県をまたぐ移動には、ウイルス拡散のリスクが生じる。旅館の和室などに複数人が滞在することで、集団感染のリスクも高まる。万が一にも集団感染が発生した場合は、医療機関に負担を強いてしまうことになる。選手はもちろん運営に関わる関係者の安全を確保するためには、中止という選択肢しかなかったのかもしれない。

 サッカーを含めたその他のスポーツも、コロナ禍にのみこまれている。夏のインターハイは中止になった。Jリーグ入りや強豪大学への進学を目ざす高校3年生は、アピールの機会がまったくない状況に立たされている。

 Jクラブも大学も新入団選手は受け入れるので、進路の間口が著しく狭まることはないだろう。ただ、クラブや大学側の手元にあるスカウティングの情報は、少なくとも数か月にわたってアップデートされていない。

 高校生年代はちょっとしたきっかけで成長速度を上げる。1試合で何かをつかんで、一気に伸びる選手もいる。いままさに成長している選手がJクラブや大学にキャッチされないとしたら、本人だけでなくサッカー界として大きな損失だ。

 サッカーは冬の高校選手権の予選があるので、3年生がアピールをする機会がまだ残されている。ただ、高校選手権の予選を待たずに部活から離れ、大学の受験勉強に専念する3年生もいる。

 サッカーとの将来的な向き合い方もそれぞれだ。高校卒業後もサッカーを続ける選手ばかりでなく、卒業後は趣味で続けていく選手、サッカーから離れる選手もいる。将来有望な選手を救うという視点だけでなく、これまで頑張ってきたすべての部活生に成果を発揮できる機会が、高校サッカーに取り組んだ証となるような記憶が、提供されることを願いたい。高校3年生だけでなく中学3年生にも、思いを寄せていきたい。

 じゃあ何ができるのかとなると、具体的なアイディアがすぐに思い浮かばない。それが、何とも歯痒いのだが。