通勤ラッシュはあらゆる職種でリスク

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 ソウル大学の日本人研究者による「半地下の隔離生活」脱出記。3月に隣国での状況をレポートしてくれ、その後、帰国したが、日韓の差にガク然としたという。果たして、その内容とはーー

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ソウルの半地下のほうがまだマシ

 これまでの日本の感染症対策を見ると、法的強制力はなく、あくまで要請というお願いベースのものばかりです。

 多くの日本人はそれに従うでしょうが、わずかな逸脱者が、感染を拡大させるリスクがあるので、韓国の対策に見習うところはあります。

 3月にもお伝えしましたが、私はソウル大学で長年研究を続けていますが、新型コロナウイルスが蔓延してからすぐには帰国せず、半地下の部屋で隔離生活を送ることになりました。

 アカデミー賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』でも話題になった文字どおり半分が地下の安普請です。

 4月になり、異国でコロナに感染して生活するのは不安でしたので、LCCにもかかわらず片道5万円もするチケットで帰国しました。

 成田空港に到着後はまず、帰国者に義務づけられているPCR検査まで2〜6時間待つことがあると検疫官から聞かされたときからイヤな予感はしました。

 結局、検査はすぐに受けることができ、入国審査と荷物を受け取るまではスムーズだったのですが、ホテルへの案内までの待機場所が“地獄”でした。

 1メートルほどの間隔でソファが置いてある部屋でしたが換気は悪く、検査を終えた人たちがどんどん閉じ込められていく状態でした。検査で陰性が出ても、ここで感染するリスクもあるのではと、日当たりが悪く異臭が漂うこともあるソウルの半地下にいたほうがマシでしたね。

韓国の“飴と鞭”の政策

 その後、検査結果が出るまでの待機場所として空港近くのビジネスホテルに誘導されましたが、バスの中も混雑していました……。

 私は運よく、ひと晩で陰性結果が出たのでそのまま自宅に近い羽田空港までバスで送ってもらうことができました。

 そこから公共の交通機関を使わないで、つまり車で迎えに来てもらうか、周辺のホテルで2週間の待機ということになりましたが、強制でないことに驚きました。監視されているわけではないので、電車やバスで帰ることもできます。さらに、ホテルでの滞在はすべて自腹なので途中で切り上げる人もいるのではないでしょうか。

 その点、韓国の“飴と鞭”に基づいた政策は参考になります。感染の疑いがある者や入国者は全員が検査を受け、2週間の強制隔離を命じられますが、その間の滞在費などの補償がついてきます。

 特に入国者は、スマホに位置情報を把握されるアプリを強制的にインストールされます。しかし、それを置いて外出する人が続出して問題に。

 その結果、GPSバンドの着用を強制できるように準備中で、報奨金付きの密告制度を充実させて、対象者の監視を徹底的に行うつもりです。韓国は完全な自由主義国ではなく、北朝鮮とはあくまで休戦中という緊張感もあるので、日本との単純な比較はできませんが……。

 しばらく半地下に戻るつもりはありませんが、その間、映画のように洪水に襲われたり、追い出されたりしないように祈るしかありません。