“さくら”倍賞千恵子、50年の寅さんを振り返り感涙
女優の倍賞千恵子が26日、丸の内ピカデリーで行われた映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』の公開記念舞台あいさつに出席。渥美清さん演じる寅さんの妹・さくら役を50年務めた倍賞が、感極まって涙を浮かべながら公開を喜んだ。この日は、山田洋次監督をはじめ、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、池脇千鶴、美保純、佐藤蛾次郎、桜田ひより、北山雅康、笹野高史、夏木マリ、浅丘ルリ子も出席した。
本作は、国民的映画『男はつらいよ』シリーズ50作目となる新作。寅さんの甥である満男(吉岡)と初恋の人イズミ(後藤)の物語を軸に、新撮された登場人物たちの現在と、4Kデジタル修復されたシリーズの映像が交じり合い、新たな『男はつらいよ』の世界が描かれる。
山田監督が「意識したわけではないのですが、渥美さんが主役の映画になった」と発言するなど、大きな幹として『男はつらいよ』の中心にいる渥美さんへの思いを聞かれた登壇者たち。それぞれが熱い気持ちを吐露するなか、倍賞は「50年前から長い長い映画を撮っていたものが、やっとできあがり、明日封切られます。お兄ちゃん(寅さん)がいたら『頑張ったな』と声をかけてくれるのかなと思います」と渥美さんを思い、思わず感涙。
隣にいた息子・満男役の吉岡に「ねえ、秀……」と助けを求めると、吉岡は「お母さん、大丈夫ですよ」と肩を抱く。そんな吉岡の励ましに、言葉に詰まりながらも倍賞は「人として大切なことを、いろいろ学ぶことができた作品。この映画に出演できてよかった」と笑顔を見せた。
また、『男はつらいよ』シリーズで過去4回、マドンナのリリーを演じてきた浅丘は「山田監督からリリーさんという役をいただいてどんなにうれしかったか……。とても素敵な役で、これまでの作品で一番やりやすい役でした。50本目の作品に出演できて光栄です」と感極まった表情。寅さんを“兄貴”と慕う源公役の佐藤は「人生の酸いも甘いも、芝居でも何でも、すべて兄貴に教わりました」と渥美さんを偲び、客席の涙を誘った。
満員に埋まった会場を見渡した山田監督は「渥美さんを中心に、大勢の俳優さんに出演していただきました。ある意味で50年という時代が主役の映画です」と語ると「最後まで皆さんが楽しんでいただけるような映画であることを祈っています」と晴れやかな表情を見せた。(磯部正和)
映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』は12月27日より全国公開