30代で筋肉痛が遅れるのはやっぱりヤバい?

写真拡大 (全2枚)

連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』37限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。37限目のお題は「年を取ると筋肉痛が遅れる説」について。

 ◇ ◇ ◇

 Q.筋肉痛が出るのが遅くなったな〜と言うと「年だから仕方ないよ」と友人に言われ、悲しい気持ちになります。30代でこれって、やっぱりヤバいですかね……? 

 筋肉痛の仕組みを超簡単に説明すると、“筋肉がダメージを受けて、それが痛みとなって現れた状態”です。しかし、筋肉痛のメカニズムには、まだはっきりしていない部分があります。

 例えば、トレーニングによって筋肉がダメージを受けた状態(電子顕微鏡で見ると筋肉の内部構造が乱れた状態)であっても、実際に傷んだ部分が痛みを感じているのかどうかははっきりとわかっていません。一方で筋肉そのものが傷んでいなくても、神経が過敏になっていて痛みを感じているという研究結果もあります。ですがこの説も、実は筋肉の微小な損傷を特定できていないだけかもしれません。

 人体にはまだまだ解明されていないことが多く、筋生理学は今もって日進月歩です。

 基本的には筋肉を伸ばす動きをすると、筋肉痛が出やすいと言われています。ダンベルカールを行う際の上腕二頭筋で説明すると、ダンベルを下げていく動作がこれにあたります。しかし、全身に等しく“筋肉を伸ばす”刺激を与えても、筋肉痛が起こりにくいパーツは出てきます。その差は一体何か? 筋肉に対しての意識が散漫なのかもしれないし、体に対する認知が敏感ではなくなっている可能性もあります。その人の筋肉の質や耐性によっても変わるでしょうし、様々な可能性が考えられます。

 今わかっていることは、筋肉痛が起こるメカニズムは、冒頭の説明のように単純な話だけではないのでは? ということです。

“加齢のサイン”だったとしても一喜一憂する必要はない

 以上を踏まえて、本題の「年を取ると筋肉痛が遅く出る説」についてです。これは、世間ではよく言われる説ですが、専門家の立場から言うと、はっきりいって出どころが謎です(笑)。考えられるとしたら、加齢からくる体の反応の遅れにより、筋肉痛の出現するタイミングも遅くなる、ということでしょうか。

 でも、実際にトレーニングをしている方々からは「年を取ると筋肉痛って遅くなるよね」という会話は、絶対に出てこないんですよね。このような言説からすると、実は年齢ではなく、その人がどれだけ筋肉を使うことに慣れ親しんでいるかが影響しているのでは? と私は考えています。

 また、「加齢と筋肉痛の出現の遅れ」については、個人的にもよく聞かれますが、確認したところで何か意味があるんですかね? 「年を取ったサインだよ」と聞いたらガッカリするだけじゃないですか!

 そんなことに一喜一憂することはありません。私の経験やトレーニーたちの言説からすると、筋肉はちゃんと向き合えば何歳でも成長しますし、体に対する意識を高めることだってできます。むしろ体の反応が速くなるぐらいの気持ち、若返るぐらいの気持ちでトレーニングを頑張れ、と言いたい。実際のメカニズムにはわからない点もありますが、あまり深くは考えず、とにかくトレーニングを楽しんでほしいと思います。

 ちなみに、筋肉痛がなくても筋肉は成長しますが、「今よりもイイ体になろう!」と決めたのであれば、筋肉痛が起こるくらいのトレーニングをした方がいいです。僕らは非常に重たい重量をベンチプレスなどで上げますが、たまに腕立て伏せをすると、不思議なことに筋肉痛がきます。おそらく、ベンチプレスでは使われない筋繊維が動くんでしょうね。強く見える体にもディテールを見ると弱いパーツ(筋繊維)は必ずあって、そこがダメージを受けて痛みを感じるのでしょう。

 ただし、痛みがなくても成長はするので、「筋肉痛が出なかった」としても深く考えすぎない方がいいと思います。

 僕は狙い通りに筋肉痛が出ると、「お、また筋肉が成長しているな!」と嬉しいタイプ。No Pain No Gain!です。でも、超トップクラスのボディビルダーの中には、「次のトレーニングで上げられる重量をわずかでもアップしたいから、筋肉痛を出さずにトレーニングできる方がいい」という方もいますからね! 次回のトレーニングに工夫を取り入れ、いい刺激を与えられるようにしましょう。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。