グローサリー・アウトレットのサンフランシスコにある店舗(写真:iStock/Andrei Stanescu)

『米国会社四季報』には、読者の方々から「アメリカの有名でない会社を初めて知ることができてよかった」といった声をいただく。そこで、本記事では日本であまり知られていないニッチな会社でも、増収増益を続けるアメリカの会社を分析する。

社名はグローサリー・アウトレット。1946年創業の老舗で、日用品・食品など幅広く取り扱うスーパーマーケットだ。サンフランシスコで、軍の余剰在庫を値引き販売したのが出発点だ。西海岸を中心に約300店を運営する。そして、このご時世にEコマース(ネット通販)をやっていない。アマゾンがEコマースやデータを武器に席巻する小売業界のなかで、顧客は何を求めて「古い」スーパーに足を運ぶのだろうか。

日本のドンキのような激安スーパー

グローサリー・アウトレットの主力はアウトレット商品だ。有名なナショナルブランドを40〜70%の大幅値引きで売る。投資家向け資料の冒頭には、「ようこそ、至福のバーゲンの世界へ」という見出しのまわりを、きれいな蝶々が群れをなして羽ばたいている。


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ホームページには、顧客が年間にいくら節約したかという数字が誇らしげに表示される。つまり、武器はお手頃な値段の商品と得した気分にさせる顧客体験だ。

この点では、激安の目玉商品で集客し、あふれんばかりの商品を雑然とディスプレイし、宝探しのようなわくわく感を体験させる日本のディスカウントストア、ドン・キホーテとも共通する。

家族経営で発展してきたが、2014年にH&Fプライベートファンドが出資。2019年6月に上場した。2018年度の売上高は22億9000万ドルで純利益は1590万ドル。店舗はフランチャイズ形式で拡大してきた。


創業以来、一貫してニッチなマーケットを深耕する道を選び進んだ。背景にはアメリカならではの直接取引の商慣習がある。商品の供給者は過剰在庫を抱えることや、安売りするというブランドイメージが壊すリスクを軽減したい。そこでグローサリー・アウトレットが有名食品メーカーや日用品メーカーのサプライヤーから過剰在庫を割引価格で仕入れ、店頭で激安価格で販売する。

規模にものを言わせ仕入れを競う小売業界で、過剰在庫の需要を受け皿に成長した。同社の売上高はウォルマートの1%に満たない。衣料品小売業界にも同じモデルで成長を続けるTJXという会社がある。TJXは、アメリカ・カナダやヨーロッパで各種ブランドのディスカウント店を展開している。こうした会社は、比較的景気に左右されにくいという特徴もある。

お得な商品をサプライヤーから仕入れる強み 

グローサリー・アウトレットは差別化のポイントを「利便性の提供ではなく、お得な価格」と強調する。単に安売りして顧客を集めるわけではない。長い時間をかけて割安な価格のものを大量に安定して仕入れる関係性をサプライヤーと築いたからこそできる技だ。

アメリカには日本では有名ではないものの、投資家だけでなく日本人が勝ち残るヒントになる会社がたくさん存在する。Eコマースのアマゾンが世界のすべてを支配することはできない。一方で規模が劣る会社でも、長所を生かして伸ばすことができれば、必ず勝ち残る道がある。