【今日の天体紹介:渦巻銀河 NGC 772】


渦巻き模様のある貝殻の様なこの天体は、おひつじ座の方向約1億1000万光年先に位置する渦巻銀河「NGC 722」です。この画像はハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3「WFC3」の可視光および赤外線フィルターで撮影し、2019年11月11日に公開されたものです。


銀河の中心を拡大した画像からは、明るく輝く銀河バルジや渦状腕に沿って存在する星形成領域から誕生した青く若い星団、荒れ狂う模様を描くダストレーンなど、細かい構造を把握することができます。この様な構造は、天の川銀河と多くの点で共通しています。しかし、棒渦巻銀河である天の川銀河に対し、NGC 772は非棒渦巻銀河なうえ、特異な形状をしているなど、見た目はだいぶ異なります。


その特異な形状は、NGC 772の全体の画像を見ると目に入ってくる「引き伸ばされた渦状腕」です。これは、NGC 772が複数の伴銀河と重力で結ばれた関係にあり、伴銀河の1つであるNGC 770との潮汐作用によって引っ張られ、歪んだ構造になったと考えられています。


画像中央の上部分にあるのが伴銀河「NGC 770」(Credit: Stephen Leshin)


この様な個性がある特異銀河は、ホルトン・アープによる天体カタログ「アープ・アトラス」にまとめられており、NGC 772も「Arp 78」として掲載されています。


 


関連:合体初期の状態にある特異銀河「Arp 256」


Image: ESA/Hubble & NASA, A. Seth et al.
Source: HUBBLE