"連れて帰りたいシンスはあの人!"『ヒューマンズ』シーズン3 イヴァノ・ジェレマイア(マックス役)インタビュー

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人間に代わり家事や仕事をこなす高性能人型ロボット"シンス"が普及する世界を舞台に、自我を持ち始めたロボットと人間の攻防を描くSFサスペンス『ヒューマンズ』。Huluにてシーズン3の配信が本日5月15日(水)から開始となるが、本シリーズでシンスのマックスを演じるイヴァノ・ジェレマイアのオフィシャルインタビューが到着した。

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――マックスはどのようなキャラクターなのでしょうか?

マックスはデビッド・エルスター博士が自ら作り出した5人兄弟のシンスのうちの一人だよ。この兄弟は、各々が独自の特徴を持った特別な集団で、エルスター博士の息子の世話をするために作られたんだ。マックスの特徴は、「愛」に対するレベルが最大限に引き上げられていて、彼は世界や自然、そしてレオを愛し、やがて彼が愛する人々がいる世界に対してまで責任を持つようになる。彼のキャラクターはシーズンごとに成長を続けてきていて、シーズン1では、10歳程度の設定で純朴さが前面に押し出されていたけど、シーズン2では、20代前半ぐらいに成長し、シーズン3が始まる頃には、すっかり一人前の男性になっているよ。

――マックスは、シーズン1ではとても無邪気なキャラクターでしたが、シーズン3が始まる頃には、他のシンスを指導するまでに成長しています。彼の変化についてどのように感じていますか?

シーズン2の終わりに、マックス、フラッシュ、ミアが車両基地(レールヤード)に残ったんだ。これが、後の「レールヤード」と呼ばれる大規模なシンスたちの隔離地区の始まりだった。月日が経つにつれ、多くのシンスが亡命してマックスのコミューンにやってきた。そして、マックスはシンスの脱走者や難民のリーダーに選ばれるんだ。彼には元来リーダーの素質があったのだと思うよ。もし、現代のリーダーたちが愛によってのみ任務を遂行していたら、いま私たちの世界も随分と違ったものになっていただろうね。

――リーダーになったことで、マックス自身も変わっていったのでしょうか?

誰もが体験するように、それなりの変化があっただろう。ただ、シンスなので髪の毛が白くなるような、外見の変化はないけどね。

――シーズン1の撮影のために、「シンス・スクール」に通わなければなりませんでしたね。最初にこの役を演じた時、そして初めてスクールに通い始めた時、最大の課題は何だったでしょうか?

今から4年前(2014年)に遡り、イーストロンドンのリハーサル・スペースに戻ったなら、このドラマで私の兄弟フレッドを演じたソープ・ディリスと振付師のダン・オニールと一緒に、シンスの走り方を完成させようと試行錯誤している様子が思い起こされるね。コリン・ジャクソン(英国の元陸上競技選手)のビデオを参考にしながら、私たちは効率的かつシンプルで、姿勢が良く、無駄のない走り方を追究していたよ。

――では、シンスの走り方はコリン・ジャクソンの走りがベースなのですね?

他の走り方とも組み合わされているよ。この走り方は、走っている間はいいんだけど、停止する時が一苦労なんだ。練習の後は、何週間も足を引きずっていたよ。走り方を考案できたのはいいんだけど、ともかくその後の筋肉痛がひどかったのを覚えているよ。

――シンスを演じていて、特に体の動きに関して最も難しいと思ったことは何ですか?

私は非常に落ち着きのない一風変わった性格をしていて、おもむろに周辺を歩き回る癖があるんだ。シンスを演じるには、直立して姿勢を正し、静かでぎこちない動きを維持しなければいけない。表情については、シーンによっては、目から涙が出てしまったり、まばたきをし過ぎたりしてしまうこともあったよ。

――マックスの精神面での成長に応じて、彼の動き自体もそれに適応するように変えていったのでしょうか?

そのことがマックス役を演じる上で非常に重要だと思ったんだ。私の愛車BMW 97 Mableみたいなものだね。この車は、レンタカーなどの他の車を運転するのとは異なるテクニックが必要だ。扱い方も独特で、この車なりの年数と特徴があり、少々反応が鈍く、癖がある。同様にマックスも心に傷を抱えていて、自殺未遂を起こしたこともある人物。痛みを感じ、テーザー銃で撃たれた経験もあり、深い闇の中にずっといたんだ。彼が抱えているものは、非常に重く、それも長い時間が経過している。

――シンスには、意識のある者とない者がいますが、あなたは意識のないシンスとして、意識あるシンスを演じました。無意識のシンスに比べて、意識あるシンスを演じる方が難しいのでしょうか?

ボディ・ランゲージの他にも、感情の世界を表現したり、社会に入りたてでなじめなかったり、色んな事を学んだりしていくところなども、演じなければならない。一度に演じる要素が多くなるから、確かに意識のあるシンスを演じることは、それだけ大変だね。

――AIについて、現在議論がなされていますが、何か意見はありますか? 今回のドラマに出演することで、将来的に実際に起こるかもしれないAIの可能性について考えさせられたりしたのでしょうか?

子どもの頃から、私はAI導入の結果が明らかになる「最後の審判の日」を想像することが好きだった。AIが最大の敵となり、人間に向ってくる「ターミネーター説」でも、あるいは「拡散・発展説」でもありうると思っていたよ。もし、ロボットに最も効率的な方法で、これから永遠にペーパークリップを生産するよう設定した場合、あっという間に人間は絶滅してしまうだろう。いずれ何らかの形で、人間はこの効率的な生産の邪魔になるからね。私が、AIに関してさらに理解を深めてから思ったことは、私たちが長年にわたって起こってきた出来事に目をつむってきたこと、歴史的な大量虐殺、痛みや苦悩、自然災害について言及するなら、人間は自然知能(NI)によって、苦しめられてきたということだ。 私たちが良く知らないこの悪魔が、もっとひどいことをし、人間自身の手によるよりも早く、人間を破滅させるとは、考えられないんだ。AIには利点がある。医学の進歩などだけではなく、私たちの短い命の存在を最大限生かすために活用することもできるんだ。自分らしくいるための時間をもっと与えてくれるんだよね。責任を持ってこのテクノロジーに対応しながら、当面AIに頼ることなく、自分の家は自分で掃除しよう。

――もし、このAIの技術を利用できるなら、自分のシンスを手に入れますか?

うん。

――シンスを利用するんですね?

えぇ。ただ、列の最前列に並んでシンスを手に入れて、常時使用するということはないと思うよ。私の友人で、くだらない冗談が好きな人が、「川を渡るときは、料金はできるだけ遅く支払って、最後に渡ることだ」と言っている。だから、急いで手に入れたりはしないけれど、シンスを利用してみたいとは思ってるよ。

――シンスを手に入れたら、どのようなことに利用したいですか?

あらゆる極秘任務を任せてみたいね。

――ドラマの何人かのキャラクターのように、シンスと親しくなるのでしょうか? それとも、ロボットや機械として扱うのでしょうか?

シンスとは少し距離を置いて付き合うと思うな。もし、自分でお皿を洗ったり、何でも自分でやったりしないで済むのであれば、色んな事から解放され、自己満足に陥り、すっかり怠け者になってしまうかもね。

――マックスの人生についてですが、彼はずっと苦労をしてきたように思います。それは演じるあなたにとっても影響がありましたか? 普段の撮影では、どのようなことがあるのでしょうか?

そのことに気付いてくれてありがとう。脚本チームはここにいないけど、まさにこの点を彼らに提起したいね。いくつか大変な撮影があったけど、シーズン1でマックスが自殺を図ったシーンで、パインウッド・スタジオのウォータータンクでの撮影が、最も骨の折れる仕事だったよ。マックスが橋からテムズ川へと飛び降りるんだ。実際の水中の撮影は、スタジオで行われたんだけど、そのタンクが、50メートル四方ぐらいある巨大なタンクだったんだ。優秀なスキューバチームも配備していて、ジェームズ・ボンドの『007』シリーズなど、多くのイギリス映画やテレビの水中シーンの撮影で使用されている場所だよ。私は5枚重ね着をして、モッズコートに、毛裏のブーツ、ジーンズ、Tシャツ、手袋を着用していた。水中に潜るための重りは必要なかったけどね。テムズ川の濁った水の雰囲気を作り出そうと、青黒い液体を注いでいるエフェクト担当の人がいたんだ。空圧を均衡にするために、直立した状態で入水する必要があった。息は吐き切って肺の中の空気が無い状態にしてね。シンスは呼吸をしないから、口から泡を出さないためにね。目は開いたままで、表情は変えられなかったんだ。本当に難しい撮影だったよ!

――このようなシーンを撮影する場合、リハーサルとかはあるのでしょうか?

リハーサルはしないよ。何本か撮るだけ。かなりハードだったけど、何とか撮影することができたよ。

――ドラマが始まって4年間、キャストの俳優たちと過ごしてきた感想を聞かせてください。スムーズに仕事ができたのでしょうか?

彼らと仕事をするのは楽しいよ。シーズンの間に十分なオフがあって、読み合わせで再会する時に、みんなの様子を知ることができる。ピクシーのような若いキャストなどは、まるで豆のつるのようにぐんと背が伸びて、知的で大人っぽい雰囲気が増していたり、結婚した人がいたり、犬を飼った人や、髭を初めて伸ばした人など、いろいろと感動することがあるんだ。台本の読み合わせでは、長い夏休みが終わって、学校に戻ってきたような雰囲気が感じられる。このようなキャストと一緒に仕事ができて光栄だよ。

――テクノロジーが利用可能なら、シンスを使ってみたいと先ほどおっしゃっていましたが、もし自分のシンスを家に連れて帰るなら、キャストのメンバーのうち、誰のシンスを選びますか?

これまで、そういった話をしたことがないんだけど、もしそれが可能なら、ジェンマ・チャンを選ぶね。彼女の役柄であるミアではなく、ジェンマ自身をだよ。私は彼女の聡明さや、献身的な姿勢、社会的活動に共感している。「Time's Up」や「#MeToo」のキャンペーンのみならず、彼女は様々な人々に活力を与える活動を行っているんだ。ドラマが始まってからの4年間、彼女は積極的に自分の知識を人々と共有してきた。私自身も彼女の活動によって、この業界で成長する機会を得ることができた。彼女を尊敬し、称賛しているんだ。ジェンマと同様に、他にもニスカ役のエミリー・バーリントン、フレッド役のソープ・ディリスも素晴らしい。そうなると、すべてのキャストを家に連れていきたいと思うよ。

――一つだけシンスに仕事をさせるのなら、どのようなことを頼みますか?また、頼みたくないことは何でしょうか?

人類の悲劇や感情に対処することに、シンスを利用してみたいね。おそらく最も難しい仕事だとは思う。頼みたくないのは、私の汚れたジムウェアを洗濯することかな。長い間置きっぱなしのジムバッグを開けることはあまりにも「非人道的」だからね。

――ドラマについて、他にコメントはありますか?

サム・ヴィンセントとジョナサン・ブレイクリーは、本当に素晴らしい脚本を書いてくれた。おかげでマックスを気持ちよく演じることができたよ。ドラマの中では、状況が様々に変わっていき、マックスの状況も落ち着いたかと思っていたら、悪い方へと変化する。私自身、役者としても、そしてマックスという役柄としても、様々な変化があるシーズンだ。マックスは、役者冥利に尽きるキャラクターだよ。見かけだけではわからない、悪の部分もマックスにはあるからね。

『ヒューマンズ』シーズン3は本日よりHuluにて独占配信スタート。(海外ドラマNAVI)

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『ヒューマンズ』シーズン3
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