久保建英にしかない能力を引き出せていない、FC東京がもったいない
今再び、久保建英への注目度が高まっている。
10歳にして海を渡り、バルセロナの育成組織でプレーしていた久保は、日本でのバルサ人気も相まって、「和製メッシ」や「天才少年」の肩書とともに、以前から大きな注目を集める存在だった。18歳未満の海外移籍を禁ずるルールに抵触したことから、4年前にFC東京へ移ったときも、大きなニュースとして取り上げられた。
しかし、いかに久保がバルサのカンテラ育ちと言っても、高校生がトップチームでの出場機会を得ることは簡単ではなかった。
もちろん、久保はまだ17歳である。それを考えれば、J1で試合に出ていること自体、本来なら称えられるべきことなのだろうが、日本に戻ってきた当時を思うと、”久保フィーバー”は明らかに鎮静化していた(久保自身は、それを喜んでいたかもしれないが)。
J1の舞台で存在感を示している久保建英
ところが、FC東京に復帰した久保は、2019年シーズンがスタートすると、J1開幕戦から3戦連続で先発出場。2-0で勝利した第3節サガン鳥栖戦では、勝負を決定づける追加点をアシストするなど、誰の目にもわかりやすい結果を残していることもあり、久保の周囲では再び、”熱”が高まっている。
FC東京の長谷川健太監督が鳥栖戦後に残したコメントも、すでに久保がチームに不可欠な存在であることを裏づける。
「引かれた相手に有効打がなかったが、(鳥栖に退場者が出たあと)建英がトップ下に入り、相手の嫌がるところでボールを受けたことで(攻撃に)変化が出た。前半は相手も警戒していたので、自由を与えてもらえなかったが、後半は相手の足が落ち、(久保が右MFから)トップ下に入ったことで本来のプレーができた。すばらしいアシストだった。次はゴールという結果を期待したい」
現在のFC東京にあって、久保は代えの利かない選手だと言ってもいい。
永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラという2トップのスピードを生かし、手数をかけずに直線的に相手ゴールへ向かう速攻が武器のFC東京だが、それは反面、単調になりがちであることも意味している。
そんななか、ボールを一度収めてキープできる技術があり、ドリブルでボールを運ぶこともできる久保は、いわゆる、タメを作れる選手。攻撃のリズムを変える、貴重なアクセントになっているのだ。その役割をこなせる選手は、17歳のレフティの他に見当たらない。
だからこそ、久保の存在が一層際立ち、再び注目を集めることにもつながっているのだろう。なるほど、ドリブルしながらも周囲の選手の動きを見極め、完璧なラストパスを送った追加点のアシストはもちろん、狭いエリアでも細かいボールタッチでシュートコースを作り出し、鋭く左足を振り抜いたシーンなどを振り返っても、彼が違いを生み出せる選手であることは間違いない。
しかしながら、言い方を変えれば、より直線的な速い攻撃を得意とするFC東京にあって、久保は”異端”。一歩間違えると、まったくハマらない選手だとも言える。実際、鳥栖戦でも、前半の久保はほとんどボールに触れていない。
結果的に、鳥栖戦では相手に退場者が出たことで、試合終盤の久保は”快適な立ち位置”を見つけることができた。だが、久保の持つ能力を、というより、久保にしかない能力を、チームとして意図的に引き出すことができなければ、久保にとってはもちろん、FC東京にとっても、もったいないことだ。
ひとつ壁を乗り越え、ついにJ1で化け始めた久保がこれから先、どんなプレーを見せてくれるのか。そこでは、久保自身の出来もさることながら、チームとして久保をどう生かすか、が重要なカギになりそうだ。