川崎フロンターレがJ1史上5チーム目となる連覇を達成した【写真:Getty Images】

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苦しいシーズンを乗り切り優勝の原動力となった「負けからの学び」

 昨季王者の川崎フロンターレは11月10日、J1リーグ第32節の敵地セレッソ大阪戦に1-2で敗れたものの、同時刻にキックオフされた試合で2位サンフレッチェ広島がベガルタ仙台に0-1で敗れたため、2試合を残してリーグ優勝が決定。

 J1史上5チーム目となる連覇を達成した。

 今季の川崎は、決して順調なスタートを切ったわけではなかった。シーズン最初の試合となった富士ゼロックス・スーパーカップでセレッソ大阪に2-3で敗れると、3日後に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ第1節の上海上港戦に0-1で敗戦。さらに1週間後のACL第2節では蔚山現代にも1-2で敗れ、まさかの3連敗スタートとなった。またリーグ戦では第13節を終えた時点で4敗を記録。昨季のシーズン終了時の敗戦数に並ぶなど、苦しい戦いが続いていた。

 それでも最終的に連覇という目標に到達することができたのには、少なからず理由がある。

 一つは、「負けからの学び」を大事にしてきたことでチームとしてブレずに戦い続けてこられたこと。もちろん早い段階で4敗を喫したことで「去年の勝ち点数を踏まえても、もうこんなに負けてしまったかと多少気になるところはあった」(DF谷口彰悟)。だが、「去年は去年、今年は今年。勝ち点の取り進め方も違うし、競っている相手も違う。変に気にしすぎても仕方がない」と割り切ると意識も変化。勝ちながら進めていくことが一番ではあるが、敗れた時に「このままではダメだ、もっとやらないといけないと感じながらやってきた」ことで、自分たちから崩れる試合が減っていった。

 そういった「負けからの学び」がピッチで表現されたのが第31節の柏レイソル戦だ。天皇杯準々決勝のモンテディオ山形戦に2-3で敗れたことをきっかけに、もう一度課題に向き合って練習から3バックの相手に対する攻略法を模索。柏が3バックの奇襲をかけてきたなかでも冷静に対処し、練習から取り組んできた攻撃の崩しで大きな勝ち点3を獲得するに至っている。


リーグ最少失点の守備「迫力やスピード感が変わった」

 また32試合26失点というリーグ最少失点が示すように、「守備力の向上」も連覇の要因の一つに挙げられる。昨季に鬼木達監督が就任したことで球際の強さやハードワーク、攻守の切り替えといったサッカーの基本的な部分をより突き詰めてきた川崎は、今季も守備面の規律を徹底。奪われた瞬間の切り替えのスピードはピカイチで、相手に簡単にボールを渡さない守備は向上の一途を辿っている。またブロックを敷いた時の組織的な守備も練度が上がっており、簡単に隙を見せないチームへと進化している。

「やっぱり意識が変わっただけで、かなり迫力やスピード感が変わった。前線の選手が前から行ってくれると後ろも狙いやすい。そういうのはチーム全体として上げられているなと感じますね。選手間でも行き方、行くタイミング、もっとこうしてほしいというのは伝えているし、数字でも表れているように結果として失点がかなり減らせているのは、非常に良い傾向だと思う」

 クラブに長く在籍する谷口は、チーム全体の守備意識の変化をこう表現した。川崎の魅力はもちろん攻撃にあるが、その攻撃を支える守備を向上させることができたことは、間違いなく連覇を支える要因の一つとなった。


選手を突き動かした「もう一度、頂点に立ちたい」という思い

 そして3つ目の要因として挙げたいのが、昨季に優勝を手にしたことで純粋に「再び優勝したいという思いが強まったこと」だ。「一つタイトルを獲っただけで満足することはなかった」とはMF中村憲剛の言葉だが、昨季に経験した喜びや感動をもう一度経験したい。もう一度、多くのサポーターとあの瞬間に立ち会いたい――その思いが選手を前へと突き動かした。

「やはりいろいろなプレッシャーがありましたけど、今年に関しては常々自分たちは優勝というものを頭に入れて、本当に勝ち点が離れたなかでも、そういったことを意識しながら戦えた。それが本当に優勝につながったと思います」(鬼木監督)

 誰もがもう一度、優勝を成し遂げようと努力を続けてきたからこそ、連覇という結果を手にしたのである。

 ただ、今回の優勝に昨季のような涙はなかった。もちろん、敗れたうえで優勝が決まったこともある。だが、その事実を含めてもっと自分たちに“伸びしろ”があることを理解しているからだ。

「シーズンの苦しさというのは感じていたし、それは去年とはまた別物だった。それを跳ね除けてここまでやってきたという自分たちの力は評価していいと思う。ただ、今日みたいに負けてしまう時だってある。そこはまだまだ詰めなければいけない“伸びしろ”の部分でもあると思います」(中村)

 連覇してなお上を見据える川崎は今、さらなる高みへの一歩を踏み出した。


(林 遼平 / Ryohei Hayashi)