自動昇格はほぼ消滅。アビスパ福岡、J1復帰へのハードルは意外と高い
J1昇格候補が、あとのない崖っぷちに立たされている。
J2第40節。前節終了時点で勝ち点66の6位につけていたアビスパ福岡は、同69で3位の町田ゼルビアと敵地で対戦し、1-2の逆転負けを喫した。
福岡がJ1自動昇格となる2位以内を確保するためには、どうしても勝ちたい、いや、勝たなければならなかった町田戦。だがしかし、試合の主導権を握ったのは町田だった。
とくに後半に入ってからは、町田が攻勢を強め、福岡陣内で試合を進める時間が長くなった。福岡にとっては、耐える展開ばかりが続いていた。
圧倒的に劣勢だったチームが、ワンチャンスを生かして勝利する。サッカーという競技は、内容と結果が釣り合わない試合が少なくない。もしも福岡が得点後の10分間を無難にやり過ごし、町田の焦りを誘うことができていたら、この試合もまた、”サッカーらしい”結末に向かって進んでいったに違いない。福岡にとっては、ここが勝ち運を引き寄せる最大のチャンスだった。
しかし、試合は瞬く間に、それまでと変わらぬ流れに引き戻された。
74分に、MF平戸太貴のクロスをFW中島裕希が、80分に、平戸のFKをFWドリアン・バブンスキーが、いずれも頭で合わせ、町田が逆転。その後、福岡は前線の人数を増やして反撃を試みるも、これといったチャンスを作ることはできず、町田がそのまま逃げ切った。
福岡の井原正巳監督が、痛い敗戦を振り返る。
アビスパ福岡を指揮する井原正巳監督
「球際のところや、粘り強さ、コンタクトで町田が我々を上回っていた。チームとして、ここまでやってきたことを出されてしまった。町田のゲームだった」
ゲームキャプテンを務めたMF鈴木惇もまた、「我慢して1点を取るまではよかったが……」と振り返り、力なく言葉をつないだ。
「(先制後に)マイボールをすぐに失ったりして、自分たちの時間が作れず、町田に逆転のパワーを与えてしまった。町田のほうが焦(じ)れずに、積み上げてきたものを出していた。力の差を認めざるをえない」
この結果、福岡は順位こそ前節終了時点と同じ6位を保ったものの、J2優勝の可能性は消滅。J1自動昇格圏内、すなわち、勝ち点72で2位の大分トリニータとの勝ち点差も6まで広がった。
もちろん、今季J2は2節を残しており、数字のうえでは追いつくことも可能だ。しかし、勝ち点72で3位の町田、同70で4位の横浜FCとの勝ち点差も広がっており、現実的に考えて、自動昇格の可能性は限りなくゼロに近い。7位に大宮アルディージャが、わずか勝ち点1差で続いていることを考えれば、J1参入プレーオフへ進出できる6位以内を死守することが、当面の目標である。
鈴木が「J2優勝でJ1昇格というシーズン前の目標が達成できなくなったことには、ショックもある」と話すように、福岡に少なからず喪失感があるのは確かだろう。
福岡は、井原監督就任1年目の2015年、リーグ戦を8連勝で締めくくった勢いそのままに、J1昇格プレーオフ(今季からJ1参入プレーオフに名称変更)を勝ち上がり、J1昇格。一昨季はJ1で最下位に終わり、1年でJ2へ逆戻りとなったが、昨季J2では4位となり、再びJ1昇格プレーオフ決勝まで駒を進めている。
そんな近年の安定した成績から、今季開幕前には、福岡をJ1昇格の有力候補に推す声は多かった。実際、今季も一時は首位に立つなど、シーズンを通して上位争いに加わり続け、昇格候補の前評判に恥じない戦いを見せてきた。
にもかかわらず、2節を残して早くも優勝の夢は絶たれ、自動昇格の可能性も事実上消滅。突きつけられた現実は、受け入れ難いものに違いない。ショックがあって当然だろう。
しかし、だからといって、それを引きずってしまえば、まだ残されているチャンスもフイにしてしまいかねない。「J1昇格の可能性がなくなったわけではない。もう一回、上を向いてやるのが大事」(鈴木)だ。
幸いにして、福岡の監督や選手たちは、現状を冷静に受け止めることができているように見える。井原監督は「可能性がある限り、(自動昇格の2位以内を)目指すが」と前置きしながらも、その可能性が極めて低いことを認め、こう語る。
「少しでも(順位を)上に上げて(J1参入プレーオフを)勝ち上がり、J1(で16位のクラブ)との決定戦に臨めるように、まずは残り2試合、とにかく勝つしかない。勝つことで、(現在の順位より)下がることはない」
過去2度のプレーオフを経験し、喜びも悔しさも知るFW城後寿も、「プレーオフで(J1へ)上がれるチャンスは残っている。とにかく顔を上げてやっていきたい」と、強い覚悟を口にする。
はたして、福岡のJ1昇格はなるのだろうか。
J1参入プレーオフを含め、最大残り5試合を5連勝。シーズン前の最大目標を達成するために、福岡が越えなければならないハードルである。