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ソフトボール部に所属しているという大学生から「顧問を法的に訴えることは可能でしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の女性は、試合に負けて練習する気力が起きなくなり、1週間ほど部活を休みました。その後、部活に戻ると、顧問は草抜きを命じ練習に参加させてくれません。さらに、女性のことを「雑草ちゃん」と呼び、「男子みたいに坊主にさせるぞ」「草引き用の道具を買ってやろうか?」といった言葉を浴びせてくるそうです。

結局、夏休みの間中ずっと草抜きをさせられ、夏休みが終わったあとも続いたといいます。女性は「見せしめにされていると強く感じています。正直つらいです。何のために部活に所属しているのかわかりません」と悩んでいます。

こうした顧問からの言葉の暴力を、訴えることはできるのでしょうか。舟橋和宏弁護士に聞きました。

●顧問の発言「暴言・体罰」として違法とされたケースも

ーー相談者は、部活動の練習をまともに参加させてくれない顧問に悩んでいます。

部活の練習に参加させてくれないというのは、相談者さんにとってもつらい状態かと思います。まずは部活動に参加したい、それを実現したいという思いがあるかと思います。

しかし、部活動は、中学・高校においても教育課程外の活動です。そして、大学においても、顧問が部活動に参加させなければならないという義務規定も見受けられません。そのため、顧問が部活動の練習に参加させないということだけで、法的な責任を問うことは難しいでしょう。

ーー言葉の暴力についてはどうでしょうか。

「雑草ちゃん」という呼び方や「男子みたいに坊主にさせるぞ」などという発言は法的にも問題があると思われます。

具体的に言えば、このような顧問の発言が相談者の社会的評価を低下させる発言であれば、名誉毀損に当たる可能性があります。また、顧問の発言が、暴言・体罰などにあたるとして違法とされたケースも存在します。

過去の裁判においては。顧問の指導について、懲戒の趣旨や顧問が生徒に手を出した場合の態様などの事情からみて、暴言を違法行為と認定したケースもあります。

その他、高校の部活動において顧問から日常的に暴力や暴行を受け、PTSDなどを発症したケースにおいて、顧問が当該生徒を叱責した行為について違法性を認めた例があります。

ーー過去の裁判でも認められたケースがあるという事ですね。

はい。ただ、訴える(裁判をする)という法的措置を講じることも時には必要ですが、裁判はご自身にとっても程度の差はあれ、精神的な負担を負う可能性のある行為です。まずは弁護士などに相談の上、法的な手段を取る以外にも、部活動から離れることも含めて色々な面から考えていただきたいと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
舟橋 和宏(ふなばし・かずひろ)弁護士
学校内トラブル(いじめ、停学退学問題、学校事故など)を専門的に取り扱うほか、いじめ・非行予防授業も精力的に行っている。その他にはインターネットトラブル(SNS上のトラブル、発信者情報開示請求など)等を扱っている。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/